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パリ-01 [シトワイヤン-25]

我らが舞姫の謎、その一端が盲学校の生徒によって明らかになった。
と言っても、彼女の力が科学的に解明された訳ではない。
舞の効果は…、万里があえて盲学校の生徒を前に舞ってみた結果、彼らの感じる力は高まったという。
私達はDVDにより舞姫の人気が広まっているという事実から、舞を視覚的に捉えた効果が人々に安らぎを与えていると、実際には盲学校の生徒と同じ様に感じていても、それは舞姿の美しさに起因すると無意識に判断していたのだと思う。
視覚による効果、その大前提が崩れ、舞姫の謎は我々の科学力では解き明かせないのだと思う。
神の領域。

「本間さんは、舞姫さまの能力、どう思います?」
「どうと言われてもな、和馬、私は彼女から人ならざる神聖なものを感じていたんだ。
そして、言葉は悪いがそれを利用させて頂いて来た。
苗川の今が有るのは万里ちゃんによるところが大きいと思わないか?」
「いえ、やはり本間市長のお力だと思いますよ。」
「私の功績は万里ちゃんと仲良くなったことだよ。
普通、市民教育を進めようとしても、私利私欲の人達に妨害され、ここまでは広がらないと思うんだ。
世の中を軽く眺めただけで性善説なんて簡単に吹き飛ぶだろ。
だが、苗川は違う。
あちこちに舞姫さまの写真が飾られる様になり、誰もが内面の格好良い人間を目指している。
社会が良くなるには社会の構成員が良くなる必要が有る訳だが、それを推し進めたのは他ならぬ舞姫さまだよ。
市民政党若葉、そのスタートの段階で苗川市民のレベルが高かったのは、万里ちゃんがいて智里がいたからなんだ。」
「そう言われてみると、自分達が苗川に住みたいと思ったのも間接的には万里ちゃんの影響を受けていたのかも知れませんね。
それで、今後については何かお考えが有るのですか?」
「まあ、ご本人にお任せだが、キャッシーが進めているパリでのイベントは大規模なものになるのだろ?」
「ええ、会場自体は然程広くないのですが、地球市民党関連で世界中の放送局がイベントの模様を放送する事になっています。
万里ちゃんがイベントの主役として歌と舞を披露してくれたら、一気に地球市民党を大きく出来るだろうと目論んでいるみたいですね。」
「彼女が過労にならないように気をつけて欲しいが。」
「ですね、我々の宝だということは皆さん理解されてるとは思うのですが。
彼女はヨーロッパ旅行について、何か話していましたか?」
「ああ、楽しみにしてるみたいだよ。」
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パリ-02 [シトワイヤン-25]

本間市長は、本間塾塾長として万里の環境を整える様に指示を出している。
中学を卒業してから彼女が正式に所属しているのは本間塾だけで、彼女自身も本間塾塾生という肩書を気に入ってる様だ。
勿論、本間塾長が付きっ切りで指導する訳ではないのだが…。

「我らが舞姫さまからはフランス語とドイツ語の先生をという話が出たので、そのまま旅行に同行させることの出来るフランス人とドイツ人を探させて苗川に呼び寄せたよ、二人ともメロディ言語も使える人でね。」
「英語だけでも旅行に支障は有りませんよね。」
「言語に対する興味は前から有って、この機会にヨーロッパの言語を研究するおつもりなんだ。
ただ、旅行後に使う機会が無いと面白くないそうで、フランス語やドイツ語の歌に挑戦してみようかな、なんて話してたよ。」
「自由に学習してるという感じですか?」
「ああ、いい形になってると思う。
講師陣は高給でレベルの高い人を揃えた、舞姫さまの稼ぎなら安いものだからな。
語学講師たちとは言葉だけでなく国による文化の違いや、フランス人が市民革命をどう受け止めているといった話もしているよ。
他の講師たちも舞姫さまが上手に使いこなしている感じかな。」
「時間的に窮屈とはなってないのですよね?」
「学校ではないからな、姫さまの気分に合わせれば良い訳で、盲学校への道中が語学学習の時間だったりするのさ。」
「場所も選ばない訳ですね、盲学校へは良く行ってるのですか?」
「ああ、生徒に手伝って貰って、自身の能力について研究してるそうだ。
それがね、大きな声では言えない事なのだが…。」
「何か問題でも?」
「まだ、数回通っただけなのだが、視力に改善の兆しが出てる生徒が複数いるそうだ。
舞姫さまの姿を見ようと頑張ってるからという説が有るそうだが、一応眼科医と連絡を取りながら、箝口令を敷く方向で関係者に話を通して貰ってる。」
「もし、姫さまに医学的能力が有ったら、という事ですか…。」
「そうなら奇跡だが、有り得ない話ではないだろ、舞姫さまのDVDを見てると足腰の痛みが和らぐといった話は多いからな、でも、それは単に気分的な問題だと思っていた。
ホントに治療効果が有るとしたら。
今まで彼女の周囲に病人がいなかったら気付かなかったのか、彼女が近くにいるから病気にならなかったのか。
小中学校在籍時のデータなども検証する必要が有ると思わないか?」
「確認だけはしておきたいですが、万里ちゃんはそのことについては何か?」
「うん、盲学校での話を聞かせて貰った時、それに対して人がどういう反応をするのか、可能性を説明したら、箝口令の話は納得してくれた。
病人は数えきれない程いるからな。」
「科学的に分析したいという学者が現れそうですが。」
「前に日米のチームで調べた時は何も分からなかったのだろ。」
「はい、ただ、あの時は舞を視覚情報として捉えていましたので、アプローチを変えれば違って来るかと。
でも、彼女を疲れさせるだけになる様な気がします。」
「そうだな、病は気から、舞姫さまの存在が気分を変え、たまたま痛みなどの症状が軽くなった、視力に影響を与えたと、落としどころはこの辺りにしたいものだ。」
「舞姫さまが嫌な思いをされ、お疲れになられたら、そのパワーが弱まってしまう、という事にでもしておきましょうか。」
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パリ-03 [シトワイヤン-25]

万里は会う度に綺麗になったと思わせてくれる。
今回は少し間が開いたので尚更だ、それでも普通の十代…。

「舞姫さま、お久しぶりです。」
「あ~、随分日焼けして、和馬さん、遊び回ってるんだ。」
「はは、遊びを兼ねた海外取材ですよ、はい、お土産。」
お土産はシルクのスカーフ。
「へ~、これは舞の時に小道具として使えるわね、清香さんが選んで下さったんだ。」
「えっ、分かるの?」
「分かりますよ、ほら香りがするでしょ、和馬さんじゃこれを選べないし。」
「えっ、そうかな…。」
「和馬さんは大切な人の香りも嗅ぎ分けられないの?」
「生憎、イヌ科イヌ属の生まれではないのでね。」
「はい、お手。」
「わん。」
「よろしい、ご褒美の飲み物は彼女に注文して下さいね。」

コーヒーを飲みながら。
「姫さまは今も盲学校に訪問されているのですか?」
「ええ、始めは視線を感じない環境が面白かったのだけど、発見が多くて楽しいのです。」
「どんな発見を?」
「歌ってる時と舞ってる時では私のパワーが全然違うと言われましてね。
舞っている時の感覚を入れて歌ってみたら喜んで貰えたのだけど、調子に乗って歌ってたら疲れてしまって、今はその辺りのバランスを研究中なんです。」
「舞も疲れすぎ無い様、コントロール出来ると良いね。」
「それは駄目、舞で手抜きは出来ません、長時間でなくても真剣に舞えば満足して頂けるのですよ。
でも、頑張って歌っても盲学校の生徒は見えない舞の方が沢山の力を感じると言うの、私って音痴なのかな。」
「それはないだろう、DVDの売れ行きは異常だがCDもしっかり売れてる、お小遣いの使い道に困っているのだろ?」
「困ってないですよ、会社を買収して再建するのに投資してますので。
後継者を見つけられないが従業員の為にも会社を存続させたい、といった社長からの問い合わせも結構ありましてね。」
「目指せ大企業なのか?」
「軸足を地方に置いた、中小企業を束ねる持ち株会社です。
思い切った設備投資をすれば、その見返りが大きかったのに踏み込めなかった、そんな企業が中心になります。」
「成程、舞姫さまの会社なら安心だな。」
「ふふ、自分がかなりインチキな存在だという自覚は有るのですよ。」
「インチキ?」
「株の取引でも何となく買った銘柄が大きく伸びたり、データ上は問題が無いのに手放したくなって全部売却したらすぐに不祥事発覚みたいな感じで、私に憑り付く神さまはお金が好きみたいね。」
「そうか、憑りつかれてたのか、自覚は有るの?」
「全然有りません。」
「では自分が神だという自覚は?」
「そんな自覚有る訳ないです、そもそも神なんて人間がでっち上げた存在ですよね。」
「う~ん…。」
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パリ-04 [シトワイヤン-25]

「ご本人がどう思おうと、君は我が麗しの女神さまだよ。
足が遅くて球技が苦手という以外に弱点はないのだろ?」
「色々有りますよ、和馬さんには教えて上げませんが。」
「どうして?」
「あっという間に広まりそうじゃないですか。」
「はは、それなら、こっそり見つけてみせるよ。
ところで、ヨーロッパ旅行の概要は見てくれたかな。」
「はい、メインはパリになるのですね。」
「舞姫さまの舞はパリでの二十分のみで押し通すけど、歌はどうする?」
「誰も喜ばなくて良いならフランス語やドイツ語で歌う用意はしています。」
「歌やトークの時間が長くなっても大丈夫?」
「何語でですか?」
「運営サイドからは、通訳を入れて、フランス語、英語、ドイツ語のパートに分けてという案が来ている、ドイツ人スタッフが頑張っていてね、舞姫さまにドイツ語教師が着いたという情報が流れてから舞い上がり気味でスポンサーとかにも色々手を回しているらしい。」
「では、期待に応えねばなりませんね、トークタイムでは市民政党若葉や地球市民党の理念を語るのですよね?」
「そんな話も出来れば良いが、軽い感じで舞姫さまの魅力が世界中の人に伝われば良いんだよ。」
「ふふ、難しい話でなければ練習中の気品に満ちたフランス語を披露したいです。」
「気品?」
「ええ、フランス語の教師は共和国に気品溢れるフランス語で語る真の姫を降臨させると話してます。」
「市民革命の国なのに?」
「王家に対して憧れる人もいるそうで、その辺りは人それぞれという事ですよ、彼女からはすでにフランスの姫という称号を頂いてましてね。」
「まあ、それぐらいの自由は認められても良いだろうが。」
「彼女曰く、まだどの国の王家にも属していないのだから早い者勝ちなんだそうで。」
「はは、姫さまの所属か…、そんな発想は地球市民党的にNGだよな。」
「単なる妄想でしょうでしょうから許して上げて下さい。」
「彼女からは色々教わってるのかな?」
「ええ、日本に来て感じたフランスとの違いとか、日本のアニメの素晴らしさとか。」
「政治とかの話はしないの?」
「してます、イベント内容を考えたら政治経済関連の単語も知っておきたいですので。
地球市民党が初めてヨーロッパで開くイベントを成功させたいです。」
「キャッシーはDVDの売り込みを考えて企画したのに、準備を始めた頃から普通に売れ始めて、彼女は地球市民党を利用するつもりだったのが、逆になりそうだろ、来月、旅立つ頃にどうなってるのか楽しみでしかないね。」
「どんな楽しみです?」
「ヨーロッパが舞姫さまをどう歓迎するかだよ。」
「う~ん、歓迎され過ぎるのもどうかな…。
そうなったら、こっそりホテルを抜け出して…、でもイタリア語には手をつけてないからな。」
「だ、駄目だよ、奴らは手が早いから、美女を目掛けて群がって来るぞ。」
「問題は身長が低いから子ども扱いされそうってことだけど。」
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パリ-05 [シトワイヤン-25]

ヨーロッパ旅行の日が近づくにつれ、アメリカの運営スタッフサイドから頻繁に連絡が入って来る。
重要な情報は私のスタッフにも入れて貰っているのだが、とにかく舞姫さまを一目で良いから見たいという声が多いそうだ。
ヨーロッパでもDVDが売れ続けていている。
最新作は癒しの効果が口コミで広がり、そこに鎮痛効果が有るなどの情報が流れ、試した結果の報告が売れ行きを加速させた。
その舞姫さまの訪問とあってネット上の盛り上がりも半端なく、警備上の問題が浮上して来た。
キャッシーは運営スタッフを増員して事に当たらせていたのだが…。

「万里ちゃんは普通の観光、出来そうにないわね。」
「だな、各地のテレビ局で奇跡の舞姫として紹介され、ポスターもかなりの売れ行き、もうかなり顔を知られているそうだ、気軽に歩けないだろう。
愛華の方は準備、大丈夫なのか?」
「当初、場面ごとに着替えて貰ってCitoyenブランドの宣伝、と簡単に考えてたスタッフが、警備の人員も巻き込んで姫さまの演出を企んでいて、そこの調整が間に合うかどうかってとこね。」
「間に合わない可能性も?」
「間に合わないと言うか、舞姫騎士団向けにデザインしてたものから実用性を重視して準備を始めたら、警備体制に変更、さすがに民間ではない警察官の制服を舞姫の衣装に合わせてくれとは言えないでしょ。
でも、それなりの正装で任に当たって下さるとの情報が入って、その正装に合わせた舞姫の衣装とか考えてるデザイナーもいてね。」
「時間的に大丈夫なのか?」
「間に合わなかったら開き直って当初の計画に戻すよう、指示を出してあるわ。
どうなっても、終わった後の休暇は存分に楽しみなさいともね。」
「みんな舞姫さまが大好きなんだろ。」
「ふふ、私達の周りに大好きでない人いたかしら?」
「そこが逆に心配なんだ、自称ファンによって傷つけられたりとか、日本ではファンのマナーが最高に良いから油断してないかな。」
「そうね、同行する人達全員に対して…、智里さんから話して貰いましょう。」
「まあ、適任だな、アメリカ旅行の頃とは状況が違って来ている…。」
「ファンの人数をどうカウントすれば良いのか分からないけど、世界の人口、その一%は確実に越してると思うわ。」
「ほとんどが舞のDVDだけの力だからな、やはり姫さまは人間を超えた存在だよ。」
「それを感じてる人達が一目みようと集まりそうなのよね、心配なのは過激な宗教活動家、ネット上では舞を見たことも無い様な人達が動き始めてるでしょ、テロとかないわよね。」
「警備計画の変更は各国のお偉いさん達がDVDを見て指示を出し始めたのだろ、それで外国の要人を迎えるレベルまで警備が強化されてるという、それを信じるしかないな。
警護メンバーは命に代えても舞姫さまをお守りすると話しているし。
昔のお姫さまも、そんな感じで守られていたのかな…。」
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パリ-06 [シトワイヤン-25]

ヨーロッパ旅行、最初の訪問国はイタリア。
チャーター機を降りた後は一般客と顔を合わせることなく休息の後、車へ。
万里は智里と、私達はすぐ後ろの車で移動。
警備車両に守られた我々の車列は沿道に集まった観衆に配慮してスピードは上げないが、信号機で止まる事はない、本当のVIP扱いだ。
私から見える沿道の人達は様々だが、思いっ切りの笑顔で手を振る人と胸の前で十字を切り祈る人が多い。
彼らは、僅かな時間ながらも舞姫さまを見られて満足してる、というのが私達の得た印象。
一旦ホテルに落ち着いて。

「まるでパレードみたいでしたね。」
「あの人達の前を猛スピードで走り抜けたら暴動になり兼ねませんよ。」
「姫さまは如何でした?」
「ゆっくり走って下さったので、沿道の皆さんが喜んで下さってるのが伝わって来て楽しかったです。」
「疲れてない?」
「大丈夫ですよ、大勢の力に少し戸惑っただけです。」
「今夜の宴会も問題なさそうか?」
「和馬さん、訳はせめて晩餐会ぐらいにして下さいよ、偉い方もお見えになるそうですから。」
「こういう時に特権を利用する訳だな、ゆっくりだったとはいえ、車で通り過ぎる僅かな時間で満足せねばならない一般庶民を尻目に…、あっ、愛華、どうかしたのか?」
「沿道で取材してたチームから報告が入ったの…。」
「早いね、急がなくても良いのに、それで?」
「舞姫さまが奇跡を起こされたとか。」
「キャッシーはカトリック総本山の足元で多くの人を集める、それが奇跡の第一歩だと話していましたましが、その通りになりましたね。」
「いえ、そんな話ではなくて…、速報みたいなものだから詳細は分からないのだけど、車椅子で見学してた子が急に元気になったとか、どんな病状だったのかはこれから調べると。
ただ、似たような話が複数耳に入り、想定外のことで取材しきれそうにないと指示を仰いで来たそうなの。」
「う~ん、もし本当の事なら地元のメディアが調べるだろう、直接追わなくても、それを確認すれば良いかな。」
「そうね、その様に連絡しておいて貰うわ。」
「奇跡について、万里に心当たりは有る?」
「元気のない人って、あまり見たことがなくて新鮮だったから、元気になってねって目で伝えてみたの、その中に車椅子の子もいたわね。」
「意識的に?」
「にこにこしてるのが役目で暇だったからね、凄く大勢から頂いたプラスのパワーを数人に送ってみたって感じかな。」
「そんなパワーの話、今まで万里から聞いたことがないのだけど。」
「お姉ちゃん、今回程の人数は初めてでしょ、しかも皆さんは私を見る為に集まって下さった方々、エントロピーを無駄にしないというイメージが浮かんで試してみたの。」
「姫さまの力には、熱力学が関係してるということですか?」
「いえ、イメージ的なもので、熱力学に置き換えて考えると思考を整理し易いかも、というレベルです。」
「試してみたら奇跡が起きたという事なのかな?」
「バチカンでは奇跡…、そもそも奇跡の定義って曖昧だと思いませんか?」
「確かにそうだが、本当に、病弱な子が舞姫さまと目を合わせただけで元気になったとしたら、間違いなく奇跡だと思うぞ。」
「和馬、それを宗教関係者達が簡単に認めると思う?
彼らは権威の象徴みたいなものでしょ。」
「ふふ、単なる偶然ですよ、私は勝手にイメージしていただけで、たまたま私と目が合ったら気持ちが高ぶってとか、そんなことでしょう、私って罪な女ですね。」
「その可能性は否定出来ないな、取り敢えず何か聞かれたら、罪な女説を我々の公式としておこう。
着いて早々、大量の信者を作り、宗教関係者を敵にするのは極力避けるべきだろう。」
「でも、結果は見えてますね、DVDだけで今日の人数が集まったという事実だけでも、キャッシーが予定してたという奇跡です。
車椅子の方の話は、確実に尾ひれがついて広まるでしょう。」
「清香もそう思うのね、それに対して私達は冷静な対応を心掛けるくらいしか出来ることはないわ。
まずは今夜の晩餐会がどうなるか、万里ちゃん、舞姫さま罪な女説で通すなら私達もそれに合わせるけど。」
「お願いします、それなら、舞姫お子ちゃま説は出て来ないでしょう。」
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パリ-07 [シトワイヤン-25]

晩餐会は主賓、舞姫さまの入場で始まった。
智里と愛華を伴っているので、より小柄に見えるが、何時になくそのオーラを強く感じさせているのは、彼女が、お姫さまらしく見える様に少しだけ舞の要素を取り入れたと話していた、その歩き方によるのだろう。
興奮気味に立ち上がり迎え入れた来場者たちは静かになり跪いて行く、スタンディングオベーションとは逆の光景を始めて目にすることに。
改めての紹介の後、舞姫さまはイタリア語でスピーチ、最後に少し笑いを取って締めくくる。
それからは司会者の進行に沿って二人のイタリア人が話をしたが、通訳が訳す必要を感じない内容らしかった。
食事が始まり、主役の舞姫さまは智里と…。

「お姉ちゃんイタリア語っぽく聞こえてた?」
「充分、ぽかったわよ、あの笑いは何と言ってとったの?」
「今日のスピーチは丸暗記で、イタリア語が話せる訳ではない、紳士淑女の皆さんは私にイタリア語で話しかけるなんて意地悪なことをしないで、という内容なんだけど、文を作ってくれた人から少し茶目っ気のある表現にしたから最後は可愛らしくと言われてね。」
「う~ん、皆さんの表情からは変な表現ではなかったと感じたけど、知らない言語で不安はなかったの?」
「一通り調べておいたからね、でも、笑って頂いたところは良く分からなくて微妙だったのよ。
それより皆さんが緊張気味だと感じているのは私だけかしら?」
「そうね、あっ、何か始まるみたいよ。」

イタリア語で歌い出した女性は美しいアルト、おそらくプロだろう。
その歌に対して万里は英語、智里は日本語で歌って返す。
メロディ言語だ、スピーチの締めくくりを受け、イタリア語の歌で話しかけれたことについてのやり取りの後、女性歌手は会場の人の為にイタリア語へ通訳をしながら二人に対してインタビューを。
晩餐会だからこそ許されるゆったりとした対話は、三人の歌声の美しさを堪能させてくれた。
表現出来るセンテンスは決して多くないので、込み入った質問、そう、舞姫さまの奇跡に関する話は後程お願いしますと振って彼女は歌での質問を終える。
奇跡。
晩餐会の前までに我々が把握出来た情報では病状に奇跡を思わせる改善が見られた人は数名だが、足腰の痛みなどが改善したという人は多数いるそうだ。
会場の人達も当然その情報を得ている筈で、奇跡を起こした少女を前に緊張を隠せないでいる。
食事やおしゃべりより、舞姫さまを見ていたいという気持ちが勝ってる為…。

「こんなに見られていると食べにくいわね。」
「代わりに食べて上げようか、おいしいのよ。」
「お姉ちゃんは何時まで成長期なのかな~?
私は終わってからゆっくり頂くことにするから良いわよ。」
「と言われても、こんなに見られている所で妹の食事に手を付ける訳にも行かないわね。」
「食べさせてあげようか…。」

姫さまはリラックスしているようだ。
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パリ-08 [シトワイヤン-25]

始めの内、奇跡の人を前に緊張していた人達も、万里のオーラに暖められたのか和やかな雰囲気になって行く。
通訳によれば、舞姫さまと同じ場にいるだけで、こんなにも幸せな気分になれるとは思ってもみなかったと話す人がいたり、体がこんなに軽いのは何時以来だろうと語る人がいたそうだ。
舞姫さまと直接話したのは選ばれた人達で、主に英語でのやり取り。
皆さんが跪いているのは身長的な問題も有るだろうが、それだけではないと思う。

質疑応答の時間は終盤に、今日起きた奇跡について急遽依頼され、智里が英語で答えた。
智里は、妹の奇跡的な美しさに痛みすら忘れる人がいたそうでと、事前の打ち合わせ通りに。
この『奇跡的な美しさ』というワードは翌日の新聞見出しとなり、旅行中、事あるごとに、つまり奇跡の様な出来事が起こる度に使われた。
特に奇跡の謎について追及されなかったのは会場の雰囲気によると思う。
誰しもが暖かいオーラを体感していて、今更説明されなくとも目の前にいる不思議な少女が人を超越した存在で有ると理解、会場には俗世と違う空気が流れていた。

翌日以降のスケジュールから観光の部分を削らざるを得なくなったのは安全上の問題だ。
人が集まり過ぎて事故が起きてしまう可能性が有る。
地元当局者は安全に、だがより多くの人が舞姫さまを目にする事の出来る形という事で、空港からの移動時同様、車列を組んでのパレードを提案して来た。
それを断れなかったのは、話し合いの最中もホテルが多くの人に静かに取り囲まれていたからだ。

「和馬さん、今日は苗川の総人口を遥かに超える人達が私に強く注目して下さっていたのですね。」
「やはり何か違ったのか?」
「科学的な根拠は有りませんが、力有るものが弱者を守り救う、地球市民党の理念を体現している気分です。」
「どんな感じなの?」
「力強く私を歓迎して下さった方々のエネルギーが、病弱な方々の力となっています。
皆さんが奇跡と話されてる事は、皆さんの力なのですよ。」
「だとしても、舞姫さまがいらっしゃらなかったら、その現象は起きなかったのだろ。」
「私がいても皆さんが私を歓迎して下さらなかったら同じだと思います。
今もホテルの周りに集まってる方々のエネルギーを感じますし、それはそのまま救いを求めて来られた方の力になっていると。」
「その辺りの事は公表して行くのか?」
「科学的根拠の有る話では無いですが、パリのイベントで地球市民党の理念を確認する時に紹介させて頂きましょう。
力有るものが力なき者を守る、苗川で出来たことが各地に広がったら素敵じゃないですか。」

そう語る、舞姫さまは神々しく、普段通りの自分を装うのが難しかった。
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パリ-09 [シトワイヤン-25]

オーストリアからドイツと回る旅はイタリアでの出来事を各国の関係者が参考にしてより円滑になった。
それは舞姫さまの力がこちらに来てから強まったことにもよる。
とてつもなく多くの人の注目を集めた事により、不思議な女の子はその存在を神の領域に。
そう、そこにいるだけで、少し離れていても舞姫さまのパワーを感じられる。
もう宗教関係者に気を使うことは無意味だ、宗教家が何時間も語った所で、舞姫さまの暖かい癒しのパワーを感じた人には届かないだろう。

「舞姫さまは?」
「お風呂よ。」
「それにしても、日々オーラが強まっていないか?」
「そうね、私達は神がその力を開放していく過程に立ち会っているのかしら。
スタッフによれば、ホテルから数キロ離れた所でも舞姫さまの祝福を感じられるそうよ。
巡礼の人は整然とホテルを目指し、舞姫さまの祝福を体で感じると満足して帰って行く、病弱な人は若干時間が長いけど、居座る人はいないみたい。
イタリアの時よりパワーが強まっているし、情報がしっかり届いているみたいね。
あっ、智里、何か?」
「皆さん、断念していた観光ですが、ここまでの状況から当局者が手配して下さるそうです。
舞姫さまに街を見て頂きたいと。」
「集まって来る人達が落ち着いているから、大丈夫だと判断したのだな。
気楽にとは行かないだろうが舞姫さまの気分転換になると良いね。」
「そうですね、疲れてないとは話しておられますが、舞姫さまにとっては楽しい旅なのか微妙になってしまいました。
私達はどうすれば良いのでしょう。」
「清香さん達だけでも観光へどうぞと話してたのを、気を使って一緒にいて下さる、それで充分ですよ。
万里は万里なりに、多くの人からのパワーをコントロール出来るか、試しているみたいです。
自分が何となく人間離れした存在であることは理解していたのだけど、集団のパワーによる自分の変化に少し戸惑ったそうです。
でも、今は医学に興味を持ち、医学関係の講師を探して欲しいと話していました。」
「分かった、取り合えず医学関連の質問に答えられる人を探させよう、直ぐに見つかると思うよ。」

舞姫さまに興味を抱かない医者は少ないと考え、スタッフに指示を出した結果、近くの病院が直ぐに勤務医を派遣してくれた。
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パリ-10 [シトワイヤン-25]

医師との話はドイツ語の講師を交えゆっくりと。
その医師自身、近くの病院で舞姫さまの力を感じながら、患者たちの症状が落ち着いて行く現場にいた。
舞姫さまの効果について、科学的根拠はないと言いつつ、鎮痛効果の他、体の新陳代謝を促進し、自然治癒力を著しく高めているのではないかと、症状が改善した患者の具体例を紹介しながら説明してくれた。
だが、最大の効果は患者たちの心が落ち着いたことだと話す。
病人に限らず、不安を抱えている人は少なくない。

「姫さま、ドイツ語は得意でなくて、医師は信仰心の話もしていたのですか?」
「はい、私の様な存在は初めてで、今までの信仰とどう摺り寄せれば良いのか分からない。
でも、自分にとっても特別な舞姫に心を寄せて行きたいと話して下さいました。
信仰心の強い人ほど戸惑いを感じているのかも知れません。」
「初詣は神社で願い事するだけ、クリスマスには信仰も関係なく大騒ぎ、という日本人とは違うのでしょうね。
姫さまとしては、姫さまに対する信仰心と、これからどう向き合って行かれるのです?」
「やはり、今まで話し合って来た通り、宗教とは一線を画して行きたいです。
そうする事によって既存の宗教とも共存出来ますし、葬儀などの作法は作りたくは有りません。」
「ですね、姫さまのDVDを異教徒のものとして禁止されても面白くないです。」
「それでも宗教的な位置づけをする人は少なからず出て来るだろう。
今後も舞と歌のパフォーマーという位置づけでアピールして行くが。」
「今回の旅行で世界人口の三%ぐらいの人が信者的存在になりそうなのよね。
DVDや写真、ポスター、かなり強気で用意してたのに品切れ続出、当然収入も半端ないのだけど、姫さま、どうされます?」
「そうね、世界のアンバランスを修正することに使えたら良いのだけど。
取り敢えず、行くかどうかは別として、世界の紛争地帯に別荘を建ててみようかしら。
無事に完成して、安全が確認出来たら遊びに行くみたいな。」
「良く分からない宗教を有難がる人達でも、身を持って舞姫さまの威光に触れれば、そこが聖地となるのだろうな。」
「でも、争いは無くなるのかしら。」
「そうだな、人が人として成長しきれていない所では、絶対争いは無くならないと思っていた。
国家間の揉め事なんて、妥協した方が外交的に負けみたいな感じだからな。
対立している連中は相手の意見に聞く耳を持たず自国の一方的な主張ばかり、ひどい国だと嘘や誇張を平気でしているだろ。
でも、舞姫さまの存在がそれすら変える可能性、それは否定出来ないと思うのだが。
姫さまご自身はどの様にお考えで?」
「地球市民党と共に世界の問題解決に役立てたらと考えています、格好の悪い大人にはなりたくないですし。」
「ここまでの旅行、お疲れでは有りません?」
「色々有って、考える事も多いですが、知的好奇心が刺激されていて楽しいです。
一番の謎は自分が何者なのか、不思議な子と呼ばれて、以前から考えて来た答えの出ないテーマも有りますが。」
「そんなの、私の大事な妹に決まってるじゃない。」
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