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舞姫-10 [シトワイヤン-24]

少年院訪問の後、本間さんとも相談して苗川市内の社会福祉施設を訪ねている。
社会的弱者の方々と直に交流させて頂くことが目的だが、これが改めて舞姫としての自分を見つめ直す機会となった。

「姫さま、今日は有難う御座いました。
気難しいお年寄りもいますので、館内がこんなにも暖かい雰囲気になったのは初めてなのですよ。
一度も笑顔を見せた事の無い人が微笑んでいたって職員たちも喜んでいました。」

こう語ったのは老人福祉施設の所長。
そう言われても普段を知らないので良く分からないし、そもそも、気難しいお年寄りというのに心当たりはなく、言葉として知っているだけだ。
だが、この施設では、やたら拝まれた。
今までも高齢者から拝まれる事は有ったのだが、施設では高齢者の人数が多いので特に目立ったのかも知れない。
さすがに…、生き神様と言われても実感はないのだが。

盲学校へは少し身構えて訪問した、歌も歌っているが舞姫というのが私の通り名であり、舞は視覚情報だ。
担当者に案内され、数人の生徒が談笑している部屋へ通される。
彼等に私の訪問を事前に伝えないで貰ったのは、自分のコミュニケーション能力を鍛えるつもりだったから。

「先生、耳慣れない足音の人と一緒だけど…。」
「珍しくお客さんなのね、優しい感じ…。」
「あれっ、僕、知ってるよ、鈴の音を鳴らしたり、鼓を叩いたり、お母さんが舞姫さまって教えてくれた。」
「もしかして、舞姫さまがそこにいらっしゃるのですか、私も親がDVDを見てる時に暖かさや優しを感じているのですが、何と言えば良いのか…。」
「俺達の中で一番見える浩二としてはどうなんだ?」
「舞姫さま以外にこんな不思議な人はいないだろ、先生、早く紹介して下さいよ。」
「姫さま、よろしいですか?」
「はい、皆さん、初めまして、舞姫こと鈴木万里です。」
「とりあえず嬉し過ぎて、泣いても良いですか?」
「ふふ、どうして私だと分かったのかな?」
「舞姫さまのDVDは特別なんです、所謂五感とは違うものが…、そうですね、私の場合は暖かく包み込んでくれる波動を感じるのです、今はそれが…、心地良すぎて。」
「姫さまは自分達の為にこの感覚を届けて下さっているのでしょうか?」
「う~ん、困ったな、私はすべての人に幸有れと思っていますが、特別な感覚や感情ではないのです。
何時もと同じ様に皆さんとも親しくなれたら嬉しい、という程度です。
でも、自分は舞という視覚情報によって支持されてるのだと思っていましたので、皆さんのお話は興味深いです。」
「そっか、ご本人も気付いてなかったんだ。」
「ふふ、そうね、私はね、不思議な子と言われてたの…。」

そのまま彼らと話が弾んだのは、私自身良く分かっていない私の力のことが少し知れたから。
彼らが感じているものを教えて貰いながら、ハンディを持って生きている彼らに幸多からん事を心の底から祈っていた。
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