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舞姫-06 [シトワイヤン-24]

少年院への訪問が決まるまでに時間は掛からなかった。
和馬さんは、高校生部会がサイトに掲載した『舞姫、高校生と語らう』に目を通した時から、取材も含めて考えていたのかも知れない。
慰問先は女子の為の施設。
疲れない程度の時間、舞を披露し歌を歌わさせて頂いた。
入所者と施設内ではゆっくり話せないので、取材スタッフが探して来た、最近までそこで暮らしていた方々から別の場でお話を伺ってきた。

「万里ちゃん、慰問とかどうだった?」
「施設の中だからかも知れませんが、極、普通の人達でした。
職員の方や最近出所された方々から色々な話を聞かせて頂きましたが、犯罪への道は環境に因る所が大きいのですね。」
「だろうな、何時も万里ちゃんといたら悪い事をしようとは思えないのだがね。」
「そうなのですか?」
「ああ、君の慰問先で取材を続けてるスタッフから報告が入ってね。
舞姫の姿に涙していた連中は、その後、落ち着いて更生プログラムに取り組んでるそうだよ、職員が驚く程にね。
作文では、万里ちゃんをどう表現したら良いのか戸惑ったみたいで、初めて女神様を目にしたと表現し、心が洗われましたと書いた人もいるそうだ。
私達が日頃感じている万里ちゃんのオーラを彼女達も感じたのだろう。
所長さんからは額縁に入れて飾る写真の注文が入ったそうだが、それだけでも異例の事らしい。」
「皆さんは写真撮影そのものが出来ない環境みたいでしたね。」
「万里ちゃん的には普段通りだったの?」
「はい、特別な人達では有りませんので。」
「ねえ、この前、学校の成績は悪くても進路の事は考えてる子の話が出てたよね、彼女たちはどうだと思う?」
「将来の事を考えるのも更生プログラムの一環みたいですので、沢山考えていると思います。
ただ、就職の選択肢は若干狭くなるみたいです。」
「まあ、やむを得ないのだろうね。
ただ、女の子は更生出来る子が少なくないみたいだから周りが気を付けていれば大丈夫なのかな。」
「みたいですね、でも薬物中毒とか、親の虐待からおかしくなる人もいるそうで、中毒から抜け出せなかったり、心の傷が癒されないまま不幸から抜け出せない人もいるそうで。
うんと遠くて現実にそんな事が起きてるのか信じられなかった事の当事者から直接話を聞かせて頂いて、考えさせられました。
ただ、私に話して下さる皆さんは、どこにでもいる穏やかな感じの人達でしたよ。」
「まあ、普段はそうだろうし、万里ちゃんの前なら尚更だろう。
君だって自分に対して悪意を向けられた経験は有るだろ、そんな時の反応が違うんじゃないのかな。」
「えっ? 悪意って?」
「誰かから泣かされたとか。」
「えっと…、喧嘩してる子達は見た事有りますが、一つのレクリエーションですよね。」
「姉妹喧嘩とかはしないの?」
「え~、すると思います?」
「仲が良くてもするものなのだが。」
「そういうレクリエーション、うちでは…、姉はご存じの通り裏表の無い人で、妹ととも…。」
「誰かと喧嘩した事はないの?」
「自分では有りません、姉が男の子たちとやり合うのは見てましたが、じゃれ合ってる様なもので。」
「う~ん、やっぱり君は不思議な子だよ。」
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