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夏休み-05 [シトワイヤン-18]

裏祭りは小学校近くの広場で行われていますが、祭りと言っても大人達がお酒を飲んだり、子ども達が花火をしたりして遊ぶだけです。
僕の役目は、清水さんと中川君のお父さんをグループ長の鈴木さんに紹介して終わりですが、そのまま皆さんの話を聞かせて貰っています。

「鹿丘の森には歴史が有ると聞きましたが。」
「ええ、元々は里山で、薪にする為の木を伐り出したりして管理されていたのですが、薪を必要としなくなった頃から荒れ始めました。
でも鹿丘の森は小学生の自然観察エリアで有り、遊び場でも有るという事で、大人達は最低限の維持管理をしていたのです。
そこに、自分達の為の作業だと知って手伝う子どもが現れ、ささやかながら大人と子どもの共同作業が始まりました。
子どもが手伝う様になると、作業後、この広場で焚火しながら差し入れを食べたりすることが始まりまして。
その後青年団が加わり、夏の夜には作業関係なく飲み会が開かれる様に、それが定着し裏祭りの原型となったのです、今から四十年以上前、私が生まれた頃の話です。」
「へ~、そんな経緯が有ったのですか。」
「森は子ども達が夜、クワガタを捕りに行っても危なくない様に少しずつ整備されました。
大きな変化が有ったのは、現市長の本間さんがお祭りの実行委員会に参加される様になってからです。
お祭りの活性化に若者の力を、という彼の提案を受け入れた連中が話し合った結果、家族で参加出来る、今の裏祭りになったのですよ。」
「やはり、若者にとって出会いの場になっているのですか?」
「その要素は有りますが、主婦だけでの飲み会が開かれていたり、最近は裏祭り実行委員会が、入手した情報に基づいて気の合いそうな人達に同じ日の参加を勧めてみたりもしています。
これからは移住者の方にも馴染んで頂く活動を考えていますので、ご希望が有ればどうぞ。」
「そうですね、苗川移住を機に、一市民としての自分を見直していますので…。」
「苗川に越して来られて発見は有りましたか?」
「はい、今まで、実に大きな労力を通勤に費やしていたと改めて実感しています、体力的にも精神的にも。」
「都会の満員電車は、ちょっと、想像できませんが…。」
「通勤ルートの関係も有ったのですが、二度と満員電車での通勤はしたくないですね。
そして、苗川での発見としては人の表情です。
皆さんが、見知らぬ子で有る筈の我が子へも優しい笑顔を向けられているのを目にしまして、これが本来有るべき姿だと思いました。
娘たちは、防犯ブザーを持たされ、知らない大人を警戒する様に教育されて来たのですよ。
私も、通勤時には何を考えているのか分からない暗い表情の人に囲まれていましたので、それを疑う事は無かったのですが。」
「子は国の宝ですからね。」
「今は、子ども達を本当の意味で守れる格好良い大人になりたいと思っています、まだ、武田君との距離感さえ掴めてはいませんが…。」
「そうですね、同様に…、ここは転出する人はいても転入して来る人がほとんどいない状態でしたので、清水さんや中川さんとの距離感を掴みかねる人が普通にいると思います。
自治会の窓口はご存じですか?」
「はい、すでにお世話になっていますし、自分達は今後の移住に向けてのテストケースでも有りますので、その役目を果たさせて頂きたいとお伝えして有ります。」
「我々としては、過疎化に悩む地方都市へ、過密状態の都会から一番良い形で人を受け入れさせて頂く形ですから嬉しい限りなんです、不快に思われた事は、こじらせる前に教えて下さい。」
「はい、それが苗川大改造を成功させることに繋がりますものね、それで…。」

大人達の話は尽きませんが、僕は、花火を終えた子ども達の所へ移動します。
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