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鹿丘小学校-08 [シトワイヤン-16]

撮影当日。

「少し緊張して来た、大丈夫だよな。」
「翔太、ビビってるの?」
「絵里は緊張しないのか?」
「そうね、話す内容は普段から大人相手に話してる事だし、真一が一緒だからね。」
「そこまで頼れる存在なのか、真一は。」
「少し違うかな、真一は近くにいてくれるだけで良いの、真一が見ていてくれれば何だって自信を持ってやれるわ。」
「もし、いなかったら?」
「去年、絵里がお祭りの舞台で真一を見失った時はやばかったのよ、フォローしきれないぐらいにね。」
「あれは仕方なかったのよ、真一の近くに転んで怪我して泣き出す迷子がいたそうで、そんな子を無視する様な真一じゃないでしょ。
私はそんな事情分からなかったから、真一が遠くへ行っちゃったのかと思って…。」
「かなり仲良しなのに、みんながからかったりしないのは仲良しのレベルが違うからなのか?」
「家が近いし、少し事情が有ってね。
まあ、翔太と万里の関係とは一緒に過ごして来た時間が違うのよ。」
「そうなのか…。」

おいおい、絵里ったら、翔太と万里の関係なんて軽々しく言ってくれて…。
表向きは仲良し幼馴染コンビという事になっている二人。
その少しの事情を知った三年生の私は沢山泣いた、親とも沢山話した、そしてちょっぴり成長した私は絵里達とそれまで以上に仲良くなったのだ。
そんな話をしている内に時間となる。
撮影は簡単な紹介の後、本題に。

「では鹿丘小学校の授業について教えて下さいね。
まずは、教え合う授業なのだけど、絵里さん、お願い出来ますか?」
「はい、まだ始まって三年目なのですが、他の小学校ではあまり行われていないことだと聞いています。
四年生の時に少し練習したり約束事を学び、五年生からは算数を中心に教え合って来ました。」
「教え合うと言っても、教える人と教えられる人に別れそうな気がするのと、成績の良い子の負担にならないのかしら?」
「『教える』ということを私達は算数や国語と同じ、教科の一つとして学んでいます。
教えるという作業を通して、相手のことを考え知ることになり、そこから思いやりの心が育ちます。
学力が高いだけで人を思いやれない人は問題外なのです。
大人達からは、将来どんな仕事に就いても、教える能力を持っている事はプラスになると聞いています。」
「負担にはなってないのね?」
「はい、クラスの仲間の事が前以上に知れて楽しかったですよ。
また、私が教えるより真一が教えた方が良い場合が有ることに気づいたり、万里と教え方の相談をしたりとか『教える』という教科を通して沢山考え学んでいます。」
「その時間、先生は何をしてみえるのかしら?」
「本間市長曰く、小学校の教師には雑用がやたら多いのだそうで、教室で仕事をしてみえます。」
「成果については本間市長に伺いたいのですが、よろしいですか?」
「ええ。」
「私も授業風景を何度も見て来たのですが、子ども同士の人間関係が素敵で楽しいです、学力面は総じて上がっています。
これは教師ともデータを見ているのですが、学習意欲の全くなかった子が絵里ちゃんや万里ちゃんに教えて貰うことで自分なりにやってみようという気になったのですよ。
クラスのマドンナが教えてくれるのなら、先生には反抗的な悪がきだってその気になりますよ。
俗に言う、やれば出来る子は成績が上がって自信を持つようになったと、教師から聞いています。」
「先生役の子にとっての負担がどうしても気になるのですが、万里さんは自身の進学に対して妨げになっているとか有りませんか?」
「このプログラムがスタートしてから、多くの大人達の話を聞き自分の考えをまとめて来ました。
結論として、私は有名大学への進学を目標とはしていませんし、クラスの何人かは高卒で働く事をイメージし始めています。
一流企業に就職するために一流大学を目指す、早い人は私達ぐらいの年齢から猛勉強を始めるそうですが、私は違う価値観を持っています。」
「価値観ですか…、市長、小学生の話とは思えないのですが。」
「見ての通り可愛らしい小学生ですよ、ただ彼女の能力と彼女を取り巻く環境が今の万里ちゃんを作り上げたのです。
単純に能力だけを考えたら、彼女レベルの小学六年生は全国に何人もいるでしょう。
また、彼女の価値観に私達が大きく関わっている事も事実です。
その価値観は今後変わるかも知れません、それでも、彼女が大人達とも話し合い自分の頭で受け止め反芻し自分の物にした価値観なのです。」
「そうでしたか、では、万里さんの価値観を教えて頂けますか?」
「苗川の大人達は、本間市長に刺激を受けて、内面が格好の良い大人になることを目指しています。
実際、私の周りの大人達は素敵な人ばかり、尊敬出来る人ばかりですが、皆さんは外見や能力に関係に関係なく、人として少しずつ変わっているのだそうです。
そんな大人達の変化を受けて私の姉達は『格好の良い子どもになろう』という意識改革を目的とするキャンペーンを鹿丘小学校で始めました。」
「意識改革ですか?」
「はい、本間市長が大人達の意識を変えた様に子ども達もです。
『格好の良い子どもになろう』、大切なのは、学歴などには現れない、人として尊敬に値する大人を目指すこと。
クラスの男の子に算数がとても苦手な子がいますが、彼は下級生にとても慕われています。
算数が苦手でも、自分で働いて生きて行く力を身に着けさえすれば、彼はとても素敵で格好の良い大人になると思っています。
翔太から、都会では学力重視の学校が少なくないが、人間的に魅力ある子は少ないと聞きました。
鹿丘小との比較は翔太から聞いて下さい。」

台本は有るが、自分の言葉で話せていると思う。
予定通り翔太に振った。
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