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鹿丘小学校-03 [シトワイヤン-16]

公園に着いて自己紹介、上手く話せない子のフォローは絵里がしてくれた。
それから分かれてお話やゲーム。
私は五六年生の転校生四人と。

「さっき話した『格好の良い子どもになろう』なんだけど、翔太君は何となく解るでしょ。」
「人をいじめる様な恰好の悪い奴にはなるなよってことかな?」
「ええ、そんなに難しい話ではないのよ、ただ鹿丘小学校に裏の校則が出来るまでの事は知っておいて欲しくてね、みんなは本間市長のこと知ってる?」
「親の会社の元社長というくらいかな、この四人ともそうなんだ。」
「そっか、お父さんとかが苗川オフィスで働いてみえるのね。
その本間市長が市長になられる随分前、いきなり大きな家を建てて苗川に越して見えた頃ね、お祭りに参加したいと申し出て下さったの。
父さん達は、大きな会社の社長さんだって知って戸惑ったそうよ。
でもね、苗川みたいな田舎の若者は高校を卒業すると都会へ出てしまい、伝統的なお祭りを続けるのが大変になっていてね、だからお願いすることにしたの。
本間市長とのお付き合いはそれからのことなんだけど、頼れるし優しい人で、お祭りのことはみんなで教えたけど、それ以上に色々なことを教えて頂いたそうよ。」
「うちの親父も尊敬しているんだ、色々整理して苗川への移住を決断したのは本間社長が市長になったからだと話してくれた。」
「そっか、やっぱし田舎への移住は気軽なことではないのね。
で、それから本間市長はあっと言う間にリーダー的存在になられて、苗川が変わり始めたの。」
「市長になる前に?」
「ええ、うんと前、市民政党若葉が立ち上がる前、お祭りの実行委員会を中心にね。」
「へー、でも変わると言っても工事が始まったのは、そこまで前ではないのでしょ?」
「変わり始めたのは大人達、町の問題に文句を言うだけだった人達が、市長になるうんと前の本間さんを中心に、えっと市民組織の改革を行ったの。」
「難しそうな話だね。」
「まず役所だけに頼らずに自分達の町を自分達の手で良くして行こうと考え始めた、それには役割分担が大切だし、それぞれリーダーが必要。
キーワードは意識改革なんだけど。」
「意識改革?」
「考え方を変えて行く、って感じかな、それまでは市役所にお任せだったり誰かがやるだろう、町の事でも自分には関係ない、と思っていた人達が、本間市長中心に、自分達の町をこのまま寂しくして行くのではなく活気有る町にして行こうってね。」
「そうか、町を変える、苗川大改造は、そう思う人が大勢いたから始まったと思っていたけど、もっと前から始まっていたんだね。」
「そういうこと、お祭りを若者中心に変えたら、それを切っ掛けに都会暮らしをやめて帰って来る人がいたりね。
『格好悪い大人を卒業しよう』というのが大人達の標語になったのはその頃、私は小さかったから実感なかったけど、お姉ちゃんは大人達が変わろうとしている、苗川を良くしようとしてるって感じたそうよ。」
「町中の人が?」
「始めはお祭りの実行委員会を中心に、そこから広がったのは、容姿も学歴も関係なく恰好良い大人になれるって皆が気付いたから。
そして苗川は日本で一番素敵な町を目指し始めたの。」
「うん、東京の大人とは全然違う、俺達は知らない大人には気を付けなさいと教えられて来たけど、知らないおじさんから『転校生だね、困ったことが有ったら手助けするよ。』って言われたし、なんだろ、表情が違うのかな、皆さん笑顔で。」
「ふふ、私には当たり前のことだから分からないけど、格好の良い大人達が、苗川を日本で一番素敵な町にしようとしているのだから、子どもが『格好の良い子どもになろう』は当たり前でしょ。
大人に言われて始めたのではなく、お姉ちゃん達が小学生の頃に始めたこと、そのまま中学校でも裏の校則に、ちなみに中学生の学力が、この裏校則が出来てからじわじわ上がってるのだって。
勉強しなさいという親が減ってるのにね。」
「そうか、勉強しなさいというだけの親は恰好悪いもんな、前のクラスの奴らがぼやいていた。」
「翔太君のご両親はそういう人では無いの?」
「まあ、そういう人では無かったから移住を決意したのさ。
俺が苗川でどんな人と出会い、どう成長するか楽しみなんだって、素敵な大人に成れればそれで良いって、親父は苗川の人達が格好良い大人を目指してる事を知ってたんだな。」
「翔太君のお父さんは、どんなお父さんなの?」
「もちろん、男として格好良いよ、だから母さんが惚れたんだ。」
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