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或る日の-04 [シトワイヤン-15]

或る日の午後、苗川市の本間市長宅で。

「本間さん、苗川にも全国チェーンの店が増えて来ましたね。」
「ああ、まだまだ出店計画は有るよ、スーパーやホームセンター、ドラッグストアとかね。」
「あまり増えると、本来地元に落ちる筈のお金が持っていかれてしまいそうです。」
「その通りだが、どうなるのかな、初期投資はこの地に落ちる、後は人件費だが。
チェーン店は従業員の給料を低めに抑える事で成り立っているだろ、ところが清香さん関連の店ではパートの時給は今までの五割増しが普通、だからか安易にオープンした店は人手不足に陥っていてね。」
「時給を上げて募集しないのですか?」
「時給を上げれば利益が減る、他の店舗とのバランスも考えないと行けないだろうね。
今は、スキルの低い高校生バイトとかで何とかしようとしてるみたいだがな。」
「マニュアル化が進んでいて誰でも即戦力なのではないのですか?」
「そんなに簡単な話では無く指導者の資質にもよるのさ、全国チェーンの看板が有るから、それなりに客は来る、忙しいのに周りの店と比べて低い時給、仕事の出来る子からやめて行く。
ブラックな状態になりつつ有る店舗へは指導をしているよ。
チーフの肩書を貰っていても隣の店の普通のホール係りより時給が低いと知って精神的に不安定になる人もいるんだ。」
「そんな状態では、撤退も有りそうですが。」
「ああ、清香さんとこの乾社長は、そこを静かに狙ってるよ。」
「ふふ、店を安く買い叩いて新規出店と話していましたが、そういう事だったのですね。
自前で建てるよりコストを抑えられると。」
「本間さん、これから出店を考えている店は、その事情を分かっているのですか?」
「どうかな、苗川の店は不足気味で、どこも繁盛している、そちらに目が行きがちだと思う。」
「それなら既存店は時給を上げても大丈夫なのでは有りませんか?」
「悩んでいると思うよ、一度上げた時給は下げにくいからね。」
「清香、給料が高くても店は問題なく回っているの?」
「日本人は給料に見合った仕事をしようとします。
自分の時給を維持するために、どれだけの売り上げが必要か、その為に何をすれば良いのか、乾社長はその辺りの社員教育を怠っていません。
普通に募集すればすぐに応募が有りますので、人手が足りなくて店員がきつい思いをする事もないです。」
「時給の水準が上がって、周りの店から恨まれてるとかは?」
「地元の店は、苗川大改造に伴う売り上げアップに合わせて給料を上げています、それを出来ない所は、自由競争の原理で淘汰されて行くでしょう。」
「愛華さん、無くてはならない店って意外と少ないのですよ、無くなると若干不便になるというのは有ってもね。
その辺りの不便解消は苗川の党員達も考えていて、大手とは違ったサービス形態のコンビニを乾社長と検討しているんだ。」
「全国展開のチェーン店がどうなろうと、苗川に本社を置く企業が伸びてくれれば良いのですね。」
「まあな、サービス業に関して時給の高いエリアが成立しつつ有る事の意味は大きいと思うんだ。
経済を考えたら、私は少しずつインフレが進むのが健全だと思っている、だがそうなって来なかった、価格破壊をする業者もいたからね。」
「はい、目先の利益を追求することで業界を疲弊させたと理解しています。」
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