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市民-06 [シトワイヤン-12]

清香が電話してから、乾社長が二人の部下を連れて現れるまで大した時間は掛からなかった。
彼らの仮住まいは店から近く、三人で家飲みを始めようかというタイミングだったそうだ。

「初めまして、清香お嬢さまの僕、乾とその仲間たちです。」
「乾さん、その、僕というのはやめて下さらないでしょうか。」
「良いじゃないですか、人は平等だ、なんて寝言言ってる餓鬼もいますが、人はそれぞれの立場でその役割を務めています、お嬢さまは柚木家の一員として我々に大きな仕事を与えて下さったのですから。」
「清香の僕は多いですよね、乾社長、こちらが党の支部長で…。」

暫く紹介に時間を費やした後、乾社長の部下は猟友会の話を聞き始めた。
乾社長は支部長と。

「私達も、苗川支部に移籍しないと行けませんね。」
「事業を進めてこられてお忙しかったのでしょう、焦らなくて良いですよ。」
「はは、忘れていただけで移籍は簡単です、これから一気に社員を増やしますのでよろしくお願いします。」
「乾さん、事業として目途は立っているのですか?」
「ええ、すでに三人の顧客と契約を結んでいまして、銀行からの借り入れは清香お嬢さまにお許しを頂いている額の二割ほどで済みそうです。」
「三人の富豪が顧客という事ですか…。」
「はい、お三方とも苗川の再開発を応援したいと話しておられます。」
「単に別荘が欲しいという感覚ではないのですね。」
「セキュリティの整った別荘は考えておられたそうです。
お三方は知り合いなので、互いに行き来出来るのはメリット、現役を退かれたら本宅にされるかもしれないと聞いています。」
「別荘は、かなり高額だそうですが、よく三件も契約にこぎつけましたね。」
「始めに声を掛けさせて頂いた方が二人を紹介して下さったのですよ。
他の住人も紹介するから、知らない人にセールスしない様、言われていまして、おかげで営業要員を増やす必要がなくなりました。
音楽スタジオや画家のアトリエ、ゲストハウス、ドッグランと言ったリクエストも有りまして建設には時間が掛かります、四軒目の契約を急ぐ必要は有りません。」
「改めて貧富の差を感じます。」
「溜め込むのではなく使って下さるのですから、有難いですよ。
田舎と言っても市の中心部まで車で二十分程度、そこに大きな雇用の場が出来るのですから。」
「従業員が住む村も作るのとなると、別荘村とその関連施設だけでかなりの規模になるのですね。」
「はい、かつての集落五つ分になります。」
「完成までには時間が掛かりそうですが、何時から着工ですか?」
「すでに間伐作業を進めています。
間伐材を利用して散歩道やジョギングコースの整備も始めます。」
「従業員がいくらいても足りなさそうですが、社員は集まっているのですか?」
「ええ、党のサイトに募集広告を出したところ各地から応募が来ています。
出来上がる村は、人間関係学的に面白くなるかも知れません。
殆どが市民政党若葉の党員で、苗川の再開発に興味の有る人ばかりになりそうです。
個人的には祭りを通して、苗川の市民となって欲しいと思っています。」
「単に、苗川に住んでいるというのではなく、苗川市民として、ということですね。」
「はい、スムーズにはいかないかも知れませんが、よろしくお願いします。」
「いえ、こちらこそ。」
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