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市民-02 [シトワイヤン-12]

産廃の問題を含め、社会問題は党のサイトで意見交換がなされている。
その中で出ているのは、行政の限界と企業の有り方、そして市民として出来る事。
五月の連休、苗川の居酒屋で。

「いらっしゃいませ。」
「おお~、我らが党代表、苗川に来られていたのですね。」
「はは、元を付け忘れないで下さい、元代表ですよ。」
「苗川の市民にとっては…、なあみんな。」
「肩書なんて何だって良いよ、俺達のリーダーなんだから。」
「どうぞ、こちらの席に、たちの悪い酔っ払いは私が排除させて頂きますのでご安心下さい。」
「みっちゃん、自分だけ良い子になってずるいぞ。」
「ふふ、愛華さん、今日のお召し物は新作ですか?」
「ええ、新緑に合わせたデザインです。」
「あっ、イメージ出来る。」

挨拶代りのおしゃべりをし乾杯をした後は…。
「今日の話題はどんなことでしたか?」
「清香さん、今日は真面目に行政の限界についてです、これから苗川の大改造が始まりますが、限られた財源という事が有りますし、大災害の時は市の職員だけで対応しきれないという問題が有ります。」
「何か面白い意見は出たのですか?」
「市営の会社を作り、普段、社員は市の財源を潤し、災害時は復旧の応援に入るとかどうです?」
「市営でなくとも、うちの社員には防災訓練の一環で災害時の行動規範を定めています。
災害時は、企業の利益を優先することなく市民生活の応援をすることを明確にしています。」
「流石、清香お嬢さま、しっかりされているのですね。」
「だな、俺んとこは、そんな決め事全くない、社長に進言してみるかな。」
「清香お嬢さま、苗川大改造で耐震化は進むでしょうが、地震はいつ起きてもおかしくありません、行政が地震に対する建物倒壊危険度を示し備えを啓蒙しても、市民がそれを受け流していたら無意味だと思いませんか。」
「苗川は防災訓練への理解度が高いとお聞きしたのですが。」
「それでも、無頓着な奴もいるのですよ、倒れそうな家に住んでいて、まあ自己責任という事になるのでしょうが。」
「行政としては啓蒙活動をした、でも住人はそれに応えなかった、その結果、という行政の限界なんて話をしていたのですよ。」
「そんなに危険そうな家なのですか、もし倒壊して隣家に被害が及ぶ可能性が有るのなら行政指導も有りです、ただ強制力が無いのも事実です。」
「それなら消防団の団長が話した方が早いだろう、役所の、なよっとした連中が話すより効果が有りそうじゃないか。」
「団長の仕事を増やすのは悪いよ、消防団の一員という肩書が通用するのなら俺が話をしてみようか。」
「団長に話をしてからなら問題ないと思う、消防団の役目と考えて良いんじゃないのか。」
「何らかの肩書は有った方が説得し易いですものね、建て替えを勧めるのですか?」
「耐震補強です、一人暮らしの年寄りなので建て替えは勧められません。」
「家に愛着が有るのでしょうが、老人ホームなどの選択肢は有りませんか?」
「そうですね、安易に考えていました、う~ん、民生委員と相談すれば良いのかな。」
「そういう話ならうちの女房が詳しいんだ、呼ぼうか?」
「それは助かるが良いのか?」
「いや、清香お嬢さまがいらしてたと後で知られたら確実に機嫌が悪くなる、俺だけが呼ぶのは良くないとは分かっているが、すまん、俺んちの平和の為にも呼ばせてくれ。」
「他言無用で一人だけなら良いだろう、なあ、みんな。」

居酒屋には居酒屋の掟が有る。
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市民-03 [シトワイヤン-12]

「苗川には市民同士が気遣い合う人間関係が残っているのですね、私は同じマンションの住人に知り合いは全くいないのですよ。」
「愛華さんの住む都会だとそういうものなんだね、まあ、俺達は付き合いが長いから。」
「これから、転入して来る人との関係はどうなるのでしょう?」
「市長からは人付き合いの苦手な人もいると聞かされてる、自分達が市民としての義務と考えることを押し付けては駄目なのかも知れないね。」
「清香、その辺りはどうなの?」
「うちの社員達は分かっていると思いますが、オフィス移転事業に伴ってという方々には難しいことかも知れません。
東京と同じ様な生活を、満員電車から解放された自然の中で送るというのが売りになっていますので。」
「そうだよな、草刈なんてしたことのない人に来て貰う計画だからな。」
「そういった事は移住が始まってからで良いでしょう。
ただ、知り合いの社長は草刈機を手に、うちの庭で楽しそうに作業して下さいます。
仕事として取り組むと大変なことでも、たまに道具を使ってというのは気分転換になるみたいですね。
人それぞれですので、その辺りの加減に気を付けて下されば大丈夫だと思います。」
「和馬代表は心配いらないと?」
「はい、大改造が進んで行く過程では様々なトラブルが発生すると思います、それを皆で解決して行くという街づくりを楽しみませんか。
早期に越して来られる方々も、新しい街づくりに参加できると期待されている様です。
街と言うのは単に建物によって出来てる訳ではなく、そこで生活する人々によって成り立っている訳で。
大改造という大実験を楽しめなかったらつまらないですよ。」
「そうだな、俺なんか小心者だから、リスクにばかり目が行ってしまうのだが。」
「実際、住み慣れた環境を変えるということで、高齢者の方々に嫌な思いをさせてしまうのは申し訳ないと思っています。」
「代表、確かに葛藤は有るみたいですが、ダムの底に村が沈むよりは何倍も良い事ですし、寂れて行く町を見ながら老後を過ごすより、他に誇れる活気ある街の方が良いです。
大人の役目は子や孫の為に働く事、町を寂れさせたのは自分達の責任だから、喜んで協力するとうちの爺さん、話していました。」
「そういう考え方で理解して下さった方が多いという事なんですね。」
「新居はバリアフリーで楽になります、実は喜んでいるのですよ。」
「もう、そこまで話が進んでいるのですか。」
「はい、三世帯共同の家を建てます、宅地造成一期目の区画に土地を確保しました。
子どもの為のスペースを広く取りますので、四人目五人目を目指せます。」
「決断が早かったのですね。」
「本間市長の話を聞いていましたからね、ここの党員達は結構前から考えていたのですよ。
宅地造成二期目の予約も直ぐに埋まると思います。
清香お嬢さまの会社も社員用に確保と聞いていますが予約されましたか?」
「はい、ただ社員達は広さの感覚に戸惑ったそうです、実家六軒分の敷地面積を持つ区画が普通に個人の予約で埋まって行くとか、取り敢えず押さえてそこに何軒建てるのか検討するそうです。」
「家の敷地に畑を作るとか考えてないのだろうな、俺達はテレビで見る狭小住宅なんて考えられないよ。」
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市民-04 [シトワイヤン-12]

本間市長は、苗川の都市計画が前倒しになりそうだと話していたが、その理由が分かった気がする。

「皆さんの動きが早いのには何か理由が有るのですか?」
「代表、町の中心部でも道幅が狭いでしょ、そこから改善して行かなくては魅力有る街には出来ません、それには、都市計画を進めて行くしかないのです。
年数の掛かる事業だからと言ってのんびりしてはいられないのです。」
「工事が始まれば、工事関係者もそれなりに流入し、それだけでも経済効果が有ると理解しています。」
「そう言えば全国チェーンの店が幾つか見に来てたらしい、大きな投資が更なる投資を呼び込むのだろうな。」
「代表、人手不足の心配は有りませんか?」
「う~ん、清香が買収する建設会社はどう?」
「あっ、あそこの社長、決断したの、清香さん。」
「はい、後継者も無く経営状態が悪化していましたので喜んで頂けました。
別荘村中心に動いてる会社と建設会社で社員募集を始めていますが、苗川大改造に参加したいという党員からの応募が多いそうです。
順次採用し、スキルに応じて研修、まずは社員教育を兼ねて社員寮の改修を始めると聞いています。
妻帯者の方はとりあえず確保して有る空き家に住んで貰います。」
「暫くは、空き家が出来ても取り壊さず、移住者の仮住まいにするのですね。」
「はい、住居の建設が進んでから、一気に取り壊した方が効率的、その後も建設工事が続く訳ですから、多めに雇っても大丈夫です。」
「計画が思惑通りに行けば周辺へも経済効果が広がって、建設需要は当分なくならない筈だからな。」
「給料の良い仕事が有れば、東京から戻りたいという従弟がいるのですがどうです?」
「給与水準は東京に合わせています、凄く良いという訳では有りませんが、暮らし易さを考えたら魅力的ではないでしょうか。」
「資金的には大丈夫なのですか?」
「別荘村は利益率を高く見積もっていまして、担当者曰く、あの世まで持って行けないお金を沢山使って頂くのだそうです。」
「あっ、苗川を盛り上げる為に別荘購入宣言をしてくれた人の資産は想像がつかないと週刊誌に書いて有りました。」
「あちこちで眠ってる金を動かす事業なんだよな。
親父が老後の備えと言って持ってた資産なんて、どう考えても生きてる内に使い切れない額だった。
俺も余裕が有って遺産を当てにする気もなかったから、この先老化が進んだ時の事を考え介護のし易い家に引っ越してくれと説得したんだ。」
「大改造が始まらなかったら、二十年後に遺産相続とか?」
「長生きしそうだから、もっと先かも、その間じっとしてたかも知れないお金を動かせただけでも、事業に貢献しているよ。」
「清香お嬢さま、お父上がこの周辺の土地を買うというのは本当ですか?」
「本当かどうかは分かりませんが、荒れた山も買って下さいとおねだりして有ります。」
「おねだりか…。」
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市民-05 [シトワイヤン-12]

「今回の事業で、清香お嬢さまはお父上に沢山おねだりしたのですか?」
「実質的には、有能な社員を一人、私の会社の社長に頂いたぐらいです。」
「その一人の力が大きいのですね。」
「ええ、あちこちからバランス良く社員を引き抜いてチームを作って下さいました。
自分達も苗川でゆとり有る生活を送るのが目標だそうです。」
「田舎暮らしに馴染んで貰えれば良いが…。」
「元々野外活動が好きな人達なので心配はいらないと思います。」
「それなら、猟友会に誘えるのかな。」
「興味の有る人はいます、森のバランスを考えていますので。
別荘エリアは完全に柵で囲い人の他、鹿や猪の侵入は許しませんが、柵の中で住人が野生動物を目にすることは出来るでしょうか?」
「リスとか小動物なら多分、餌付けには賛否が有るのですが別荘村でリスを対象になら問題ないでしょう。
厄介なのは猿ですね、柵なんて関係なく侵入して来ますよ。」
「猿との共存は難しいのですか?」
「餌付けして…、でも、群れが大きくなると、別荘村が猿村になりかねません。
追い払いながら間引くのが理想ですので、是非、社員の方には何人か猟友会に入って欲しいです。
うちの支部はフレンドリーなんですよ、初心者への指導は丁寧にがモットーで。」
「分かりました、元からの住人と新しい住人との接点にもなりますね。」
「清香、社員達は落ち着いたら祭りにも参加してくれるのだろ、一度皆さんに紹介しておいた方が良くないか?」
「そうですね、店長、この店を社員に教えても宜しいですか?」
「勿論構いません、地元民しか来ない店は有る意味敷居が高かったかも知れませんね。」
「電話してみます。」
清香が席を外す。

「和馬代表、苗川大改造の規模を考えたら市の役割はそれ程大きくないのだね。」
「ええ、市は秩序を守る立場、再開発のメインは民間です、でも苗川では一般市民の協力がとても大きくて驚いています。」
「事業推進派が強かったからな、逆だったら話は全く進まなかったろう。
本間市長とは随分前から市民の役割について語り合って来たのだが、市長は大都市に住む人と田舎に住む人では自分が生活する土地に対しての関わりあい方が大きく違うと話していたよ。」
「はい、都会では住まいを基本とした人間関係が薄れていて、税金を納め行政サービスを受けるぐらいの感覚になっています、なあ、愛華は自分の住むエリアの行政に興味が無かったのだろ。」
「ええ、何度か引っ越したことも有って、支部長、私と地域社会を繋げるものは何もないのですよ。」
「近くの店へ行く事は有るのだろ?」
「それもないです、大学と仕事の関係が有りまして。」
「そうか、人間関係が地域に根付いてなく…、運命を共にした、かつての村落共同体とは真逆なのか。
これから転入者が増えると、感覚の違いから人間関係の問題が発生しそうだな。」
「ほとんどの人が市民政党若葉の党員です、良い形でバランスの取れた人間関係を築いて行きたいですね、支部長。」
「はは、トラブル解決は党支部で引き受けるしかないのだな。」
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市民-06 [シトワイヤン-12]

清香が電話してから、乾社長が二人の部下を連れて現れるまで大した時間は掛からなかった。
彼らの仮住まいは店から近く、三人で家飲みを始めようかというタイミングだったそうだ。

「初めまして、清香お嬢さまの僕、乾とその仲間たちです。」
「乾さん、その、僕というのはやめて下さらないでしょうか。」
「良いじゃないですか、人は平等だ、なんて寝言言ってる餓鬼もいますが、人はそれぞれの立場でその役割を務めています、お嬢さまは柚木家の一員として我々に大きな仕事を与えて下さったのですから。」
「清香の僕は多いですよね、乾社長、こちらが党の支部長で…。」

暫く紹介に時間を費やした後、乾社長の部下は猟友会の話を聞き始めた。
乾社長は支部長と。

「私達も、苗川支部に移籍しないと行けませんね。」
「事業を進めてこられてお忙しかったのでしょう、焦らなくて良いですよ。」
「はは、忘れていただけで移籍は簡単です、これから一気に社員を増やしますのでよろしくお願いします。」
「乾さん、事業として目途は立っているのですか?」
「ええ、すでに三人の顧客と契約を結んでいまして、銀行からの借り入れは清香お嬢さまにお許しを頂いている額の二割ほどで済みそうです。」
「三人の富豪が顧客という事ですか…。」
「はい、お三方とも苗川の再開発を応援したいと話しておられます。」
「単に別荘が欲しいという感覚ではないのですね。」
「セキュリティの整った別荘は考えておられたそうです。
お三方は知り合いなので、互いに行き来出来るのはメリット、現役を退かれたら本宅にされるかもしれないと聞いています。」
「別荘は、かなり高額だそうですが、よく三件も契約にこぎつけましたね。」
「始めに声を掛けさせて頂いた方が二人を紹介して下さったのですよ。
他の住人も紹介するから、知らない人にセールスしない様、言われていまして、おかげで営業要員を増やす必要がなくなりました。
音楽スタジオや画家のアトリエ、ゲストハウス、ドッグランと言ったリクエストも有りまして建設には時間が掛かります、四軒目の契約を急ぐ必要は有りません。」
「改めて貧富の差を感じます。」
「溜め込むのではなく使って下さるのですから、有難いですよ。
田舎と言っても市の中心部まで車で二十分程度、そこに大きな雇用の場が出来るのですから。」
「従業員が住む村も作るのとなると、別荘村とその関連施設だけでかなりの規模になるのですね。」
「はい、かつての集落五つ分になります。」
「完成までには時間が掛かりそうですが、何時から着工ですか?」
「すでに間伐作業を進めています。
間伐材を利用して散歩道やジョギングコースの整備も始めます。」
「従業員がいくらいても足りなさそうですが、社員は集まっているのですか?」
「ええ、党のサイトに募集広告を出したところ各地から応募が来ています。
出来上がる村は、人間関係学的に面白くなるかも知れません。
殆どが市民政党若葉の党員で、苗川の再開発に興味の有る人ばかりになりそうです。
個人的には祭りを通して、苗川の市民となって欲しいと思っています。」
「単に、苗川に住んでいるというのではなく、苗川市民として、ということですね。」
「はい、スムーズにはいかないかも知れませんが、よろしくお願いします。」
「いえ、こちらこそ。」
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市民-07 [シトワイヤン-12]

「乾社長は、苗川大改造をどう捉えているのです?」
「そうですね、市民政党若葉が大きく関わって動き始めたビッグプロジェクト、大都市圏に色々吸い取られ疲弊していた地方都市を蘇えらせる。
地方の活性化を目に見える形で示せなかった既存政党との違いをはっきり見せつける事になると思います。
苗川は普通に住みたい土地、それでも今まではその環境が整っていませんでした。
人口三万の地方都市に、今まで誰も考えたことのない規模の投資をし人を集め生活環境を整えこのエリアの中核に、田舎だから農業、みたいな発想からも抜け出して、満員電車の乗客を嘲笑える近代的な都市に出来たら、日本をもう少しバランスのとれた国にする切っ掛けになるでしょう。
和馬くんを旗印に、市民政党が始めた市民による改革と言っても良いですね。」
「市民革命ではなく市民改革なのですね、今のお話は党支部メンバーにも伝えたいです。」
「はい、支部長、明日にでも苗川支部のメンバーとなり自己紹介と合わせ公開させて頂きます。」
「お願いします。
和馬代表も市民改革と考えていたのですか?」
「本間市長と相談していた頃は、ここまで市民の方が動いて下さるとは思っていませんでした。
ここまで来たら、市民革命と言っても良いのでは有りませんか、これを日本の各地に広げて行きたいですね。」
「情報共有は出来てるのだから他の支部も動き出すかもしれないな。」
「簡単なことではないですが、まずは苗川が成功する姿を全国に知らせて行きます。
乾さん、あちこちで眠ってる資産を上手く叩き起す事は出来ませんか?」
「大きな金額を直ぐにというのは難しいが、儲かる商売はして行きますよ、清香お嬢さまは会社を広げても良いとおっしゃられていますので、利益率の高い夜の店も始めます。」
「多角経営ですね、あっ、夜の店は直ぐ需要が高まるということですね。
まともな給料を受けとる社員に、使う場を提供して資金を回収ですか?」
「ああ、女の子は短期契約で都会から呼ぶ事が出来る、ホストクラブを作って女の子からお金を回収したりとかも考えているんだ。
他には観光客向けの飲食店もね、足りなくなりそうだろ。」
「観光で立ち寄る人が増えて、昼時は満員の店ばかりだそうです。」
「和馬代表のおかげですよ、苗川を全国に紹介してくれたおかげで売り上げが伸び、大改造に協力的な店が増えました、東京で働いていた子ども達を呼び戻す動きも有るのです。
変わろうとしている苗川は若者にとっても魅力的だと思います。
本間さんが現れなかったら、静かに廃れて行ったであろう田舎の町が変わる意味は大きいですよ。
問題が有るとすれば犯罪者が増加する可能性でしょうか。」
「そこは支部長にも協力して頂きたいのですが、うちの従業員は基本的に市民政党若葉の党員で回して行くつもりです。
勿論、市民政党の党員だからと言って犯罪を犯さないとは言えませんが、健全な夜の店を展開して、組関係が安易に稼げない環境を作りつつ、麻薬や覚せい剤取引の情報を押さえて行きます。
党員同士の情報交換で減らせる犯罪は有ると思うのです。」
「市を守って行くのも単に警察任せではなく市民の力が必要という事ですね。」
「はい、ただ鍵を掛ける習慣の無い方には申し訳ない気もします、これからは鍵を掛けて頂かないといけませんので。」

乾社長は様々なお金儲けの案を話して下さった。
資金面は清香が乾社長に提示している借入金上限の半分ぐらいで回して行けそうだとも。
ちなみに銀行からの借り入れは、清香名義の株式を担保にするそうで、彼曰く、正しい投資の仕方だそうだ。
そして、清香とはどんな形で有れずっと親しい間柄でいることを勧めて下さった。
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市民-08 [シトワイヤン-12]

その後、乾社長の部下とも。

「猟友会の話は如何でしたか?」
「はい、別荘を柵で囲った後、中にイノシシやシカがいたら駆除させて頂くことになりますので参考になりました。
面接を済ませた人の中に興味が有る人がいましたので、猟友会へ送り込めると思います。」
「猟友会を通して町の皆さんと馴染んで頂けると良いですね。
ところで、鈴木さんがこのチームへの参加を決めた理由は何ですか?」
「働き方改革です、総合職でも都会に住む必要がないなんて良いじゃないですか。
満員電車から解放されただけで、すでに気持ちが楽になりました。
痴漢がいたり、運悪く痴漢の犯人にさせられてしまう人もいる空間、他人との距離が近すぎ、通勤だけで疲れていたんです。
自分が選んだ企業で何とか仕事を頑張って来ましたが、市民政党若葉の党員になって考えていたのは、もっと人間的な生活環境が田舎には有るんじゃないかということで。
清香お嬢さまをオーナーとする会社が苗川に立ち上がると知った時にすぐ応募しました。」
「成程、今、応募して来られている方も同じ様な感じですか?」
「似た様な人は少なくないです、苗川は市民政党若葉の聖地ですし、党発起人の皆さんは、すでに伝説ですから…。」
「建設部門の方もですか?」
「はい、別荘地の開発も苗川の再開発もやりがいの有る仕事だと受け止められています、私が面接をした人は、休日に自分達の家を建てるから、その補助を会社にお願い出来ないだろうかと。
自分達の家を建てたいという話は一人や二人ではなくて、キャンプ場のバンガローを建てて、自分達の村が完成するまでの仮住まい、その後キャンプ場としてオープンという案を出して下さる方も見えました。」
「皆さん、住居の事情をご存じな訳ですね。」
「はい、スムーズに住宅を確保出来れば、社員を増やし易いと言う事情を公表しています。
周辺自治体も含め空き家の調査は進めていますが、現場まで遠くなると残念ですので。
まあ、買収した会社の寮を補修すれば独身者はかなり住めるみたいですが。」
「それも見越しての買収だったのですね。」
「はい、ぼろい代わりに家賃は格安に、リフォームは建物の強度を落とさない限り自由にします。」
「自分の住まいは自分でという人が多いのですね。」
「そうなんです、趣味が住まいに関する事で、都会に執着心が無いのかも知れません。
和馬さんのログハウス村は進んでいますか?」
「ええ、基礎工事は四軒目に取り掛かっています。
ログハウスを建てたい、が、村を作りたいという欲求に代わって来ているそうで。
無理しないを合言葉に作業して下さっています。」
「自分達で費用を出して自分達で建ててるのですよね。」
「ええ、人数が多いので一人辺りの負担は、当初の予想より費用も労力も少な目だそうです。
暖かくなってから常駐する人が増えてるそうで毎日がキャンプ、すでに一つのコミュニティが形成されたと言えます。」
「土地購入以外の費用はどれぐらいでしたか?」
「初期投資は百万ぐらいだと思います、直ぐにお金を持った人が集まって来ましたので。
社員は作業のサポートをしつつ、見学者に色々売りつけて稼いでいますよ。」
「番組でも進行状況を紹介していますものね。」
「ログハウス村が出来上がって行く様を見に来てグッズやおやつを買って帰る、その前後に苗川の中心部で食事したり、苗川大改造計画に触れたりして下さる方が多くて、何時まで続くか分かりませんが経済活動の活性化に繋がっているみたいです。
見学者の中にはログハウス村の人達と、お茶を飲みながら党員同士という事で話し込んで行かれる方も見えるそうですよ。」
「党員同士ということが人間関係の切っ掛けにもなるのですね。
市民政党若葉の党員という括りを利用して、更に人間関係を深めて行くことは意識して行きたいと思います。
党員で有る事以外全く接点がなくても、一つ有れば大きいのかも知れません。」
「はい、全国の党員は我々の仲間ですから。」
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市民-09 [シトワイヤン-12]

「鈴木さん、今の所問題は無いのですか?」
「そうですね、気になっているのはこれから増えるゴミです、徹底したリサイクルが実現出来れば良いのですが、清掃工場が老朽化していまして。」
「徹底したリサイクルに市民の協力が得られるかどうかなのですね。」
「はい、市の事業ですが移住者の意識が分かりません。
地域によってルールが大きく異なりますので、転居して来て面倒になったというのは避けたいじゃないですか。」
「大きく異なるのには何か理由が有るのですか?」
「ええ、プラスチックや白色トレイなどを燃えるごみとして扱っている所は、焼却設備が最新式なのです。
高温処理が出来ますから、有害なガスが発生しません、焼却時の熱をエネルギーとして発電に利用しますのでプラスチックは燃料として燃やしたいのかも知れません。
焼却設備の処理能力が低いところでは有害なガスの元になってしまうということです。
他もリサイクルの仕方などで大きな差が出ます。」
「そういう事でしたか、ゴミの減量とリサイクル、自分も調べてみます。」
「それでしたら、まずは生ゴミを焼却処分しないで堆肥にする、生ゴミ処理機を調べて下さい、ログハウス村でも使えると思いますよ。」
「有難う御座います、あそこでゴミをどうしてるのかも、一度聞いてみます。」

鈴木さんとの話中、隣のテーブルの奥さんが話したそうにしていたので声を掛ける。
「お姉さん、ゴミの分別は大変ですか?」
「そういう物だと思っていれば大した手間では無いわ、そちらのお兄さんが話してた生ゴミ処理機は苗川支部で、どの機種が良いのか比べているのよ。
燃やすゴミを減らし自然に還す取り組み、移住して来る人にも使って欲し良いわ。」
「畑を持たない人だと、堆肥を持て余したりしませんか?」
「花壇や公園で使えば良いし、党の婦人部会がお手伝いする事も可能よ。」
「それは是非お願いしたいですね、移住者との接点は沢山有った方が良いと考えています、そこでトラブっても党支部が間に入って問題解決してくれると信じています。」
「ええ、都会では隣に住んでる人の事をほとんど知らないのが普通なんでしょ、流石にそれは嫌だわ。」
「苗川の住人同士の絆と、隣人の事さえ知らない生活をして来た人達との中間的な結びつきを考えてみて下さいませんか。」
「あらそうよね、越して来ていきなり親密には慣れないわよね。」
「姉さん、不倫はお勧めしませんよ。」
「もう和馬ったら、分かってるわよ、でも妄想ぐらいは良いでしょ、旦那に大きな不満が有る訳じゃないの。
でもさ、ドラマの不倫物とかって都会の話が多いでしょ、田舎を舞台にしたラブロマンスとかもっと作ってくれないのかしら。」
「う~ん、ドラマ見ないから…、そうですね、苗川を舞台とした作品を知り合いに提案して行きます。
でも、ホテルに余裕がないと難しいかも知れません。」
「そっか、まあ、和馬が局の人を説得して苗川でロケ、というのを妄想して楽しむわ。」
「はは、妄想で満足ですか?」
「主演男優は自分で決められるでしょっ、って、もう決まっているのだけど。」
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市民-10 [シトワイヤン-12]

その後、他の奥さんも加わり話は盛り上がったが、少し酔った愛華が甘えて来た所で切り上げる。
まだ酒の席に慣れていないので、自分なりに決めたタイミング。
人前でいちゃつくのは避けたいし、区切りを付けないとエンドレスになりかねない。
挨拶を済ませ、店を出て。

「居酒屋へ来ると本当に色々な人がいると感じさせられます。」
「清香の場合は特にそうだろうな、市民政党を立ち上げていなかったら、地方都市の住人とは会う事すらなかったと思わないか?」
「はい、でも面白いです、父の会社には不満げに二百万しか稼げなかったという人が居ますが、ここにはパチンコで二万稼いだと大喜びの人が、二万の方が価値が高いと錯覚してしまいそうです。」
「まさしく価値観の相違だな、細やかな幸せを自慢し喜べる、あの店に来る人は苗川でも生活にゆとりの有る人達だからか、幸福度の高さを感じさせられるね。」
「私は和馬とこうして居られる時間が最高に幸せです。」
「そうよね、私達の幸福度は高いわ。
今日は実在する悪役のお話を聞かせて頂いたのだけど…、悪人は悪人なりに幸せなのかも、でも、周りの幸福度を下げるのよね。
お金が絡むと醜くなる人がいるとかで、お金は大切だけど、お金に汚い人間にはなりたくないと思ったわ。
お金を沢山持っていても幸福度の低い人は大勢いそうでしょ。」
「幸福度と言えば、本間市長のオフイス移転計画が大きく前倒しになったのは、東京から環境を変えて幸福度を上げられると考えた人が多かったからとも言えるね。」
「当初は職場も住まいも全部新築でスタートする予定が、全部中古でのスタートになったのよね。
綺麗な建物でなくて良いから、早く転居して田舎のオフィスを試したいという声が多かったのでしょ。」
「ああ、廃校なった小学校の校舎をオフイスに改築という話が出たら、建物のレトロな感じに好感が持たれ、一気に話が進んだ、ある意味魅力的な社屋なのかもな。」
「都会に憧れる人が多いので過密が進んでいます、でも都会から逃げ出したい人も相当数いるのではないでしょうか。」
「だろうな、当初、本間さんとは東京と変わらない環境を苗川に作り出すことをイメージしてたのだけど、東京とは違った生活環境でも、幸福度を下げるどころか大きく上げてるみたいなんだ。
不便だから社員同士が助け合って仲間の絆が深まり、深まりすぎて結婚を考えてる人達もいるそうだよ。」
「地方都市にオフイスを移転と言う発想が無かったら、殆どの人はそのまま東京で生活していたのでしょうね、田舎暮らしに憧れの有る人でも。」
「なあ清香、転勤で地方都市へという事は普通に有るのだろ?」
「職種によります、今回のオフイス移転計画は本来転勤の必要が無い方の移動、特殊だと思います。
余り転勤のない工場勤務でもインドに工場を作るから三年ぐらい行ってきて下さいという話は普通に有ります。」
「それは大変そうだな。」
「そうかしら、転勤先にもよるけど海外生活を楽しめるかもよ。」
「本人の望まないアフリカ奥地の勤務の場合でもか?」
「和馬、ライオンが襲って来たら守って下さいね。」
「それは無理だろう、仲良くライオンの餌だな。」
「清香はともかく和馬はまずそうだわ、では転勤先が、灼熱のリビア、酷寒のアイスランドの二択だったらどっちを選ぶ?」
「勿論、アイスランド、暖房の効いた部屋だな、冷房より暖房の方が体に良いと思わないか?」
「そうね、暖房器具にもよると思うけど…、言われてみれば暖房は昔から有って自然だけど、冷房は調節が難しいし電気が無ければ…、砂漠のど真ん中では使えそうにないわね。」
「ログハウス村は薪ストーブで暖房、冷房より木陰のそよ風や綺麗な川で水遊び…。」

おばかな話が弾むのはお酒の影響も有るが、今日も俺の幸福度はとても高い。
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拡大-01 [シトワイヤン-13]

翌日は本間市長と昼食を共に。

「本間さん、統一地方選挙で落選したのが三名のみというのは大成功ですよね。」
「ああ、落選した所は定数の多い選挙区に複数の候補を立てたところで、作戦ミスだったな。
苗川は、党のアンケート結果から事前に調整して全員当選、最下位当選者の得票数が予想以上に少なかったから、もう一人立てても良かったぐらいさ。」
「さすが、苗川支部に抜かりは有りませんね。」
「支部長は良くやってくれてるよ。
今回の統一地方選挙で党所属の地方議員は一気に増えた、この勢いで参議院選挙でも議席を確保したい所だな。」
「この県の改選は一議席でしたね。」
「ああ、候補者はほぼ固まっていて、地方選の結果を考えると勝てる可能性は高いよ。
ただ、全国でとなると何人の候補者を立てられて、何人当選出来るかは予測できないね。」
「はい、現職の壁が厚い気がします、それでも市民政党若葉は、政府に対して、批判ではなく提案、という姿勢を取ってることが国民に好感を持たれていると聞いています。」
「みたいだな、他党から鞍替えした人達は、政府批判するしか能のない野党に愛想が尽きての決断だったのだろう。」
「全選挙区に候補者を立てたいという党員が多いですが、本間さんはどう思われます?」
「そうだな、多目に候補者を擁立したい、選挙に自分達の党の候補がいないのは寂しいだろ。
まあ、有る程度の得票を得ての落選なら次に繋がると思うんだ、参院選で名を売っておいて、衆議院を目指すのも有りだろ、得票数が少なかったら議員には向かない人だと判断して、次からは他の人を立てるとか判断材料に…、いや、そんな人は立候補させちゃだめだな。」
「参院選で得票数が多ければ、落選しても衆議院や知事、市長への足掛かりになるという事ですね。」
「統一地方選挙の結果は、市民政党があちこちで与党の組織票にダメージを与えている事の証明、勿論、大差での落選はイメージが悪く次に繋がらない、少なくとも善戦出来そうな候補でないとな。
でもまあ、参院選対策本部にお任せで良いだろう。」
「そうですね、これまでの選挙では無党派層だけでなく、与党支持者を取り込むことにも成功。
党員は選挙の度に増えていますので、初の国政選挙で旋風を巻き起こせると信じています。」
「ああ、党員票だけでかなりの得票が見込めるのは、対立候補にとってプレッシャーだろ。
そこで、くじけてくれれば楽勝だが、逆にプレッシャーをばねに頑張る人もいるのかな。」
「与党の組織票はどうでしょうか?」
「利害関係がはっきりしている組織は崩れないだろうが、苗川のビッグプロジェクト見て心が揺らぐ人はいるだろう。
選挙の時、地方の活性化を謳う候補はいても、当選した後、何の結果も見せられない人ばかりさ。」
「具体性に欠ける漠然とした主張をしていても当選してしまうのですね。」
「与党の公認候補というだけで票が入るからな、不祥事を起こす様な人でも当選だ。
まあ、具体的なマニュフェストを掲げて政権を握り、それを殆ど達成出来ず日本を停滞させた政党も有ったんだ、漠然としておけば、やれなくても嘘にはならないと考えてるのかも知れないね。」
「我が党の公約に嘘はないですよね。」
「公約作成に携わっている人は多く質も高い、党のシステム有ってのことだがな。
細部では具体的な案を提示、それぞれに作成担当責任者を明らかにしている。
政権を取れたら、そのまま事業を進められるレベル、勿論政府が案を採用してくれて構わない。」
「あっ、衆議院選挙は何時頃になるのでしょう?」
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