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猫田小夜-21 [化け猫亭-03]

「高川さん、老人介護に関連して高齢者医療の問題も考えてみませんか?」
「あ、ああ。」
「今の日本では、ほとんど死んでいる老人に多額の費用を掛けて生きてるかの様に見せかけてる実態が有りますよね。」
「えっ、命は大切だし、お年寄りには長生きして貰いたいだろ?」
「不幸な状況で若くして介護が必要になってしまった様な、まだ脳の若い人ならいざ知らず、自力で何も出来ず意識も怪しい人を無理やり延命するぐらいなら、その費用は次世代を担う子ども達の為に使うべきでは有りませんか?」
「そうは言っても…。」
「無意味な延命は、本当に人を大切にしてると言えるのでしょうか。
私の祖父や祖母は、それを完全に否定しています。
機械の力で呼吸を続けさせられたり、寝たきりになって思考能力が無くなっても薬の投与が続けられるなんて死んでも嫌だと。
そんな金が有ったらひ孫の為に使って欲しいと話していますよ。」
「そう言われても、ご家族は延命を考えるのではないのかね?」
「うちは世間体を気にしません、生きるという事、死ぬという事と真面目に向かい合っています。
今は趣味が忙しくて充実した日々を送っている祖父母ですが、もし亡くなったら、その体は医学部生の解剖実習に使われます。」
「あっ、献体か…。」
「はい、愛知用水の生みの親が中心になって作られた組織の一員です。
最近は入会者の意識が、純粋なボランティア精神から少し変わってしまったそうですが、それでも家族全員で生と死を考える材料になっています。」
「そうか…、でも、さすがに小夜ちゃんは自分の体を献体とか考えられないだろ?」
「若くして入会してしまうと、長期間に渡って事務費が掛かってしまいますし、今は特に不足して無いそうですので、臓器提供意思登録をしているだけです。」
「どちらにしても死後に自分の体が切り刻まれると考えたら、抵抗が有るな…。」
「死んですぐに焼き尽くされる事に抵抗は無いのですか?」
「う~ん。」
「これは祖父に聞いた話ですが、医学の発展の為に献体登録している人達は無駄な延命を好まない人が多いそうですよ。」
「そういうものなのかな。」
「生きてる間は精一杯楽しんで、次の世代に負担を掛けずに人生を終えるのが理想だそうです。
高川さんは殺されても死なず、醜く生き続けそうですが。」
「え~、何か今日の小夜ちゃんは何時も以上に辛口だね。」
「高川さんの会社、少しブラックな噂が流れていますよ、噂が本当かどうか分かりませんが、本当にクリーンな企業なら、そんな噂が流れる確率は低いです。」
「えっ、そうなのか?」
「相談に乗りましょうか、今ならお安くしておきますよ。」
「そう来たか…、うん、分かった、文書にまとめて請求書と一緒にメールしてくれるか。」
「あっ、高川さんって思ってたより頼もしい方なのですね、それでは早急にメールを送りますが、会社を見学させて頂けませんか?」
「勿論構わないが、何か意図するところが有るのか?」
「ええ、実際の会社がどんな雰囲気なのか味わってみたいですし、ブラックな噂がどうして流れたか知りたいです。」
「社としても早急に手を打つべきだろうか?」
「そうですね…、明日の夕方までには報告書を送りますので、それからで如何でしょうか。」
「見学は何時が良い?」
「早ければ早いほど。」
「大学の講義と調整しないとな。」
「大丈夫です、多少休んでも卒業には影響しませんので。」
「分かった、宜しく頼むよ。」
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