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123-開演前 [岩崎雄太-13]

島根、鳥取、岡山、兵庫と旅は続いている。
岡山、兵庫辺りからはスポンサー企業関連の従業員やその家族を対象としたステージの割合が増えている。
当初、工場の食堂を予定していたコンサートの多くは、市民ホールなどへ切り替えての開催。

「平日だと千人規模のホールでも空きが多いそうで、助かったわね。」
「ああ、食堂でやるより準備も簡単に済む、会場費はスポンサーが負担してくれるしな、今日は午後、明日は夜間の連続公演だけど、どちらも満席で協力して下さったスポンサー企業の方々からは立ち見も出そうと聞いてるよ、テレビ出演の効果だろうな。」
「先回のホールでは、譲治のトークでグッズが売れまくってたわね、今回も行けるのかな。」
「昼間の公演後は販売時間に余裕があるから一気に黒字幅を広げたいな、頑張ろうぜ。」
「今日も入場開始から、舞台上は事務室の設定なの?」
「ああ。」

ホールの扉が開けられ観客の入場が始まる頃、舞台上には机と椅子が用意され譲治達の小芝居が始まっていた。

「葵さん、正平のメイク済んだのですか?」
「もちろんよ、ま、お肌も若いから簡単に済んじゃうのよね。」
「だからって、譲治兄さまに色目を使いに来ないで下さいよ~。」
「何、僻んでるの、周りがお子ちゃまばかりじゃ譲治が可哀そうじゃない、そうでしょ、譲治。」
「葵姉さん、もう直ぐ始まるんだから、少しは緊張感を持って下さいよ。」
「う~ん、譲治はもう少しクールな感じを強調した方が良いかもね、ちょっと待ってて。」
譲治の髪を整え直し、少しメイクを施す葵。
「どう? 美沙。」
「そうね、悪くないわ。」
葵と美沙は譲治に両側からすり寄る。
「お前ら俺を玩具にしてないか?」
譲治は会場に目をやり。
「そろそろ、お客様も入り始めてるぞ、美沙、準備の確認を。」
「はい、お兄さま。」
美沙は携帯で連絡を取る、実は演技でなく実際に担当者に確認を取っていた。
「お兄さま、今日は立ち見の方が多くなりそうだとの事です、それとグッズの販売は一旦終了するそうです。」
「そうか、この会場だと…、誘導担当に立ち見の方の身長差を考慮して誘導する様に指示を出してくれるか。」
「はい。」
「グッズ販売は終了後に充分な時間が有る、大丈夫だろう。」
「譲治、コーヒー入れたわ。」
「有難う姉さん、あっ、正平は、どうでした?」
「何時も通り、馬鹿か天才か分からない感じだったわ、でも、ちょっと史枝が甘やかし過ぎてる気が…。」
「いや、皆さんのお陰で演奏会の規模が大きくなり、回数も増えている、はは、史枝は里美姉さんにしごかれてるから、正平の面倒を見る事でストレスを発散してるのですよ。」
「あの二人は良く分かんないのよね、実際。」
そこへ。
「開演十分前です、正平を連れて来ました。」
「ああ、紗友里有難うな。
正平、今日は三つの企業の方々が我々の為に尽力して下さった演奏会なんだ、もちろん俺達のお父さまもお世話になっている、何時も通りの演奏頼むな。」
正平は笑顔で頷く。
「紗友里、今日のバックは?」
「ギタリストとピアニストが一人ずつ、準備も済んでいます。」
「そうか…。」
譲治は、立ち上がり舞台中央へ、そして客席に向かって。
「本日はお忙しい中、岩崎正平のステージへお越し頂き誠に有難う御座います、総合演出担当の岩崎譲治です、宜しくお願いします。
まだまだ、経験も浅く不慣れな我々ですが、正平中心に実験的なステージにも挑戦させて頂いております。
こんな実験的な事が出来るのも、私どもの父を通して繋がりの有る皆さまだからこそです。
会の途中には会場の皆さんと共に歌うという企画も有ります。
限られた時間では有りますが、しばし岩崎ファミリーの一員となって最後まで楽しんで頂けましたら幸いです。
では、開演時間となりましたので…。」
譲治は椅子に座り。
「紗友里、伴奏ギタリストのオーデションを始めるか?」
「はい。」
ギタリストが演奏しながら入場、しばらく演奏した所で、正平が歌い出す。
シンプル故に心に滲みる二人の演奏を、舞台上の面々も聴き惚れる。
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