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89-店 [岩崎雄太-09]

村では訓練生の実習を兼ねての店を開くべく準備を進めている。
場所は村から一時間ほどの国道沿い。
飲食店、土産物屋、村で採れた野菜の即売所でスタートだが、近くの漁港に水揚げされた魚介類などの販売も視野に広げて行く予定だ。
今は職業訓練校の二期生も開業の準備を手伝っている。

「先輩、村の人達がこんなに仲良くしてるとは思っていませんでした。」
「そうだね、自分がここへ来た頃とは随分変わったよ、まあお互い何かしらのハンディを背負っているからかな、でも、店への取り組みは大きかったと思う。
みんなで意見を出し合い、力を出し合い、時にはぶつかりつつも…、はは、里美姉さんには誰も逆らえないから話は早かったけどね。」
「そんな怖そうな人には見えませんでしが。」
「怖くはないよ、でも理詰めで説明してくれるから、みんな気持ち良く納得してしまうのさ。」
「へ~、もっと話したかったけど、今は大学の方に戻っておられるのですよね。」
「大学四年生だから色々有るのさ、でも少なくとも卒業までは俺達の村をメインに活動して下さるそうだ、来週末辺りには帰って来てくれると思うよ、店の開店に合わせて。」
「それまでにしっかり準備を終えていないと怒られそうです。」
「はは、君がそんな心配をする必要はないよ、準備は順調に進んでいるから。」
「お客さんは来て下さるのでしょうか?」
「人口が少ないから微妙ではあるけど、店も少ないからね、観光地の中間に位置しているから休憩には程よい立地と考えている、でも店に魅力が無ければだめだな、君もメインは裏方の実習だけど、時には接客をする可能性も有るから覚悟しといてな。」
「はい、接客研修も受けています、後は通販の出荷作業も、併設の倉庫は将来的に物流センターになるそうで。」
「いや、規模は小さいがすぐ物流センターになるんだ、それで人手が必要だから自分はここに残る事にしたんだ、他の選択肢も有ったけど、残ってここを盛り立てる者、他の地で自身の足場を築き外から支援を試みる者に分かれる事になってね、そりゃあ出て行く連中は心変わりするかもしれないが、それでも構わない、ここが俺たちの故郷だって心に残していてくれれば、心の拠り所としてくれれば良いと親父さんも話してくれている、店はその一つのシンボルかな。」
「形の上だけでも家族と故郷が欲しかったらって…、始めは良く分かりませんでしたが、変に押し付けようという事ではなく緩やかに、村の仲間として受け入れて貰ってる感じは悪くないです。」
「だろ、町の養護施設にいた頃は感謝を強要された事なかったか、ここではそんな事は一切ないんだ。
だから余計に感謝の気持ちが湧いてくるのかな。」
「その気持ちが店を成功させようという気持ちを強くしているという事ですか?」
「ああ、そうかもな。」
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