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74-訓練校 [岩崎雄太-08]

福祉村は徐々に規模を拡大している。
住居も増え、居酒屋も出来た。
株式会社岩崎の社員となった者達は、さらなる自立を目指して働いている。
児童養護施設では三十名程の子ども達を受け入れ中。

職業訓練校の一期生は五十名、各地の施設から希望して集まった。
彼等にとって最大の魅力は、生活費が掛からないだけでなくアルバイトをすれば収入も得られる事と、終了後の職が保証されているだけでなく、就職先に馴染めなかったら村に戻ってやり直せば良いと言われている事。
一期生入校から半年ほどの食堂。

「おい、岩崎社長が来週見学に来られるそうだぞ。」
「本当なの、うわ~素敵なのよね、あんな人が私のお父さんだったらって、ずっと思ってたのよ。」
「実際、この環境を作って下さった方だから、俺達にとっては保護者同然だな。」
「だよな~、俺はやりたかった情報処理の学習を、始めに聞いた時はどうして、こんなど田舎でするのかって思ったけど、ここでも出来るという事を証明して貰いたくてって、メッセージを頂いてしまったからな。
実際、先生は長野の岩崎村に住んでみえるが何ら問題ないんだ。
この前の実習は合格点を貰えただけでなくアルバイト料まで頂いてしまった。
色々教えて貰いながらで先方に手間を掛けさせてばかりだったのにな。」
「お前は頭良いから、でも俺だって竹細工の仕事気に入ってるんだ、師匠との微妙な距離感も良いし。」
「微妙なのね…、ねえ、今日のカレーどうだった?」
「普通においしかったよ。」
「普通か~、そうなのよね制約もあるから…、でも何時か普通じゃなく、すごく美味しいと言わせられる様になるわよ。」
「大変そうだな。」
「まあね、でもここで基本をしっかり身に付けて、応用は岩崎村の高級レストランで修行するの、岩崎社長にも美味しいって言って頂ける様な料理を…、ハードルは高いけど。」
「そんな事無いって、調理科の料理美味しいよ、明日は何を御馳走してくれるんだい。」
「ハンバーグ、だけどさ…、私等、高級な物なんて食べた事ないじゃん、美味しいものをずっと食べてた人に満足して頂けると思う?」
「ネガテイブ発言禁止! 高級レストランで上手く行かなかったら、庶民が喜ぶメニューを考えれば良いのでしょ。」
「あっ、御免、そうだった…、高級レストランでの修業は私の我儘を聞いて貰えた、というレベルなのに。」
「我儘言って良いんだぞって、村の人に随分言われたな、皆さん辛い過去をお持ちの様で。」
「そう言ってる拓也だって…。」
「まあ、程度の差は有ってもみんな…。」
「それは過去の話よ、これからは…、ねえみんなの就職予定先はどんな感じなの。」
「俺は君と同じ岩崎村になる、でも仕事に慣れたらこの村で働くのも有りなんだ。」
「職種的に都会で働くという選択肢も有るんじゃないのか?」
「都会で働くメリットって有るのか? いじめられた記憶が蘇るばかりだよ、俺にとっての都会は。」
「私もそうだわ、確かにここの環境は精神的に楽過ぎて自分の成長を考えたらマイナスかもしれない、でもさ…、ここで暮らしたいの。」
「高校卒業後の進路にここを選んだ時点で、俺達は都会から逃げ出したかったのかもな。」
「おいおい、俺は過疎の村を再生する事を考えてるんだぜ、逃げ出したんじゃなく過疎の村で挑戦してる、村の人達はそんな人ばかりだ、だいたい、村を馬鹿にし過ぎてるよ。」
「そうよね、私も苦しかった時には、妄想レベルでお洒落な生活に憧れもしたけど、この村の現実は夢みたいに楽しいわ。
子ども達と遊んだり村人達と歌ったり、何と言っても…、素敵な仲間がいるでしょ。」
「似た様な境遇で育った人が五十人いるからな、しかも、こんな田舎での生活を選んだ奴ばかりだからか、みんな真面目だし過疎の村という事が適度なフィルターになったのかもな。」
「お前らの話、ちょっと恰好着け過ぎだぞ。」
「はは、それより岩崎社長にはどうやって感謝の気持ちを伝えるんだ。」
「俺は自作の竹細工を贈ろうかな。」
「あ~、何かずるい私にはまだ…。」
「まだ時間が有るのよね、まずは情報収集して、それから作戦を立てるわよ、みんな良い。」
「へい、姉御。」
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