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37-研究 [キング-04]

スコットランドとの交流は大きなトラブルもなく進んでいる。
初めて彼の地を訪れた日の夜。

「改めてキングのずうずうしさに乾杯したくなったな。」
「セブン、それは褒め言葉なのか?」
「もちろんさ、ジョージは土地を広げるお願いをする時におよその面積を指定したそうだが、キングは?」
「もちろん可能な範囲で最大と言い続けてきた。」
「この無駄に広い城は?」
「キングと名乗るからにはでかい城に住んでやろうと。」
「マリアさまは呆れてなかったの?」
「特にはね、あの頃は他にする事もなかったし。」
「二か国合計百二十八人の中で、そう考えたのはキングだけだったのよね。」
「マリアさまは研究と話していたそうだけど、ここまでする必要はなかったよな、スコットランドの規模でも充分暮らして行ける訳だから。」
「研究か…。」
「精神状態まで管理されてるから微妙だね、昔の俺はこんなに良い奴じゃなかった。」
「いや、ロック、そうでもないらしいぞ、記憶が少しずつではなく一気に戻った事をマリアに尋ねたところ、我々が英語を理解出来るという事が見落とされていたそうだ、珍しく謝ってくれたよ。
英語が鍵になって記憶が解放されてしまったということだ。
で、その時に我々を落ち着かせてくれたのか、と問うたら、そういった事は一人暮らしの時に少ししただけだと、私の記憶に残る自分と今の自分とでは性格すら違うと話したら、環境の変化によるものではないかと。」
「そう言われると、昔はこんなに幸福ではなかった、愛する妻と子ども、そして仲間達、性格が変わっても不思議ではないか。」
「老化が進んで死亡した者の事も答えてくれた。」
「なんて?」
「彼等の役割が終わったからだと。」
「役割か、二人ともこの国にはあまり貢献してくれなかったよな。」
「二人は居なくなったけど、その遺伝子は残ったわ。」
「そうか、元々、本人がこのコミュニティに必要だった訳ではなくその遺伝子が研究上必要だったのかもしれないな。」
「実際の所は分からないが可能性は否定出来ないね。」
「自分がマリアさまの立場だったら当たり前の様に、同じことをしていたかもだな。」
「小さな村を作ってあげました、あなた方はどんな村にして行きますか、但し大人しい人ばかりでなく変数としての遺伝子が入っています。」
「大人しい人ばかりなら弱くなるだろうな、人格にバリエーションが有ってこそ強いコミュニティーになると思う。」
「それを狙っての事なのか、というより、そんな遺伝子を持った人物をきちんと管理できる体制に出来るかどうかを試されてる一面も有るよな。」
「遺伝的要因より環境的要因の方が大きくないかしら。」
「だな、子ども達の環境には最大限の配慮をして行こう。」
「一つの村レベルから、ふふ、二か国に増えたとは言え規模はたかが村二つよね、でも国家という発想でシュミレーションして、マリアさまの意図に関わらず外交交渉して行く事になったのよね。」
「自分達の記憶に残る国家形態、社会経済、その他諸々を見直してみろという状態だよな。」
「私達はマリアさまの研究材料、実験動物かもしれないけど、より理想的な社会環境ってのを人類のDNAで実現出来るかって、私も研究者として実験に参加してる気分だわ。」
「とにもかくにも子ども達に良い環境を…、だがこの問題って難しいと思わないか、理想的に平和な世の中で、さらなる進歩が望めるかどうか、否、進歩する事が良い事なのかどうかも分からないだろ。」
「物質的進歩ではなく、精神的な進化の道という考え方もあるな。」
「普通の生物はただ生存して子孫を残す、本能のまま生きていれば良いが、我々はそれだけでは満足しきれない。」
「人が人として生きる根源的な命題、答えは出そうにないわね。」
「だな、でもまずは集団の形成、言語も習慣も異なる人達と良好な関係を築き上げるという課題が目の前に有る。」
「そうね、まずはそこから考えますか。」

我々に与えられた特殊な環境はマリア達の研究の為に形成されたものだろう。
だが、この場は私達にとっても実験研究の場だと言える。
そう思わせるのは城の住人達の冷静な考察による所だ。
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