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23-暦 [キング-03]

音楽村との出会いから間隔を空けて四つ目のゲートが開き八人の隣人が増えた。
特に問題もなく彼等が馴染んだ頃、一花が出産した、元気な男の子だ。

「ほんとに可愛いな、俺達の希望の星だ。」
「そうね、一花、皆で手伝うから、ゆっくりしててね。」
「有難う。」
「セブン、名前はどうするんだ?」
「なあ三郎、苗字の概念は記憶に残っているか。」
「ああ、ここでは必要なかったから気にしてなかったが。」
「俺達は本名という奴を苗字付きで考え始めてるんだ、セブンはニックネームという事にしてね。
この子の名前と一緒に俺の名も、一花という名前は気に入ってるからそのままだけど。」
「あ、良いわね、ねえキング、私達もどうかしら。」
「苗字か、そうだな…、どうせなら私達四組何かしら関連する、例えば東西南北を苗字に入れてとかどうだろう。」
「うん、面白いね。」
「そうね、でも簡単には思い浮かばないわ。」
「どうだろう、これを機に戸籍も作らないか。」
「良いけど私達の年齢は不詳だし今が何年なのかも分からないわね。」
「太陽も月も、記憶の片隅に残る物とは随分違うしな。」
「となると、どこかを基準にして自分達の暦を作る事になるが。」
「私達がこの島で八人揃ってから、今日で五百二十三日目だけど。」
「三之助は記録してたのか?」
「ええ、日記を付けてるから、その流れでね。」
「へ~、じゃあこの島に八人が揃った日を基準にするとして、週や月は? 一週間は七日か?」
「一週間は七日、一月は四週間、一年は十二か月でどうだ。」
「そうすると一年は三百三十六日になるけど。」
「俺達の寿命は分からないけど、形の上では記憶に残る暦より長生き出来るという事だな。」
「はは、まあ良いんじゃないか、分かり易くて、将来子ども達から、どうして二月だけ短いのと聞かれたら返答に困るだろ。」
「じゃあ、日記を元にそこから計算して今までの事、何時ゲートが開いたとか表にしてみるね。
カレンダーも作れば、作業予定表をもう少し分かり易く出来ると思うわ。」
「あっ、どうして今まで気付かなかったのだろう、カレンダーなんて言葉聞いても何の違和感もないのに今まで意識してなかった、これまでだって有れば便利だった筈なのに思い浮かばなかった。」
「そうよね、私達の記憶って不思議だわ、何かのきっかけで蘇る、私もずっと、ここへ来てから何日目だって記録してたのに暦の話題が出るまでカレンダーの事忘れてた。」
「俺達は少しづつ記憶の隙間から、なくした物を取り戻しているという事なのかな。」
「すべての記憶を取り戻すのは怖い気もするけど。」

生活が安定して来ている今、改めて亡くしている記憶が私たちにとっての大きな問題となっている。
私達はいったいどこから来た何者なのか。
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