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21-音楽家 [キング-03]

三丁目の連中も次第に馴染んで来た。
馴染まざるを得ないと彼等も気付いたのだろうが、最近では結構楽しそうに働いている。
明るく開放的な環境が彼等を変えたのかもしれない。
一日二名だった制約も徐々に緩和し、今は八名全員が来ている。
そんなタイミングを見計らってか、マリアから三つ目のゲートを開くと宣告された。
転校生を迎える気分だと笑う者もいる中、全員で迎える。
二十四名が緊張の面持ちで待ってる所へ開いたゲートからは、やはり八名の男女が現れた。
ただ、彼等が今までの隣人と大きく違っていたのは、その手に楽器を持っていた事だ。
にっこり微笑むと演奏を始める。

「あっ…。」

曲を聴きながら二十四人の観客達は瞳を濡らし始める。
忘れていた感覚。
ここでは誰もが鼻歌すらなかった事に気付く。
音楽というものの存在が記憶の中に埋もれていた様だ。
曲が終わるとバイオリニストが話し始める。

「初めまして、音楽村から来ました、よろしくお願いします。」
「美しい演奏、有難う御座います、ここのリーダー、通称キングです。」
「八代です、立派なお城ですね。」
「普段も楽器演奏をされて来たのですか?」
「はい。」
「自給自足は?」
「私達は、この島で採れた食料を分けて頂いていると聞かされています。
たまにこの島の映像を見せて貰ってましたから、お邪魔させて頂く事が出来てとても嬉しいです。」
「私達とはかなり条件が違うみたいね。」
「音楽をお届けする事が私達の役目と聞かされていますから、さしずめ宮廷音楽家といった所でしょうか。」

話を聞いてみると二丁目三丁目とは随分違う生活をして来た様だ、自給自足より美しい演奏。
すでに四組のカップルが出来上がっていて、穏やかな笑みを浮かべている所を見るとこの島の住人と同様幸せに生きていると感じられる。
ゲートの条件も他とは違いフリーだという。
扱いの差がトラブルに繋がる可能性は否定出来ないが、彼等とならうまくやって行けそうだ。
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