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演奏旅行-3 [Lento 11,演奏旅行]

ウイーンに到着した日は観光の一日となった。
演奏旅行の活動拠点にもなる地だから、幾つかのグループに分かれて散策、夜に情報交換となる。
和音と真子は行きかう人達から手を振られたり、サインを求められることも度々あった。
テレビ番組やCMの効果もあってすでに現地でも有名人となっていたのだ。

翌日の交響楽団との初顔合わせにはマスコミ関係者が多数取材に来た。
Team Harmonieの仕事の成果だ。
とりあえずは合わせてみましょう、ということで演奏が始まる
チャイコフスキー、ピアノ協奏曲第一番。
和音はあこがれていた交響楽団との演奏に全く臆することなく、雄大で壮大な演奏を和音らしい温かみも加えた形で奏でていく。
迫力ある和音の演奏はマスコミ関係者達を圧倒している。

演奏が終わると観客全員がスタンディングオーベーションとなる。
観客だけではない交響楽団のメンバーも全員立ち上がっている。
楽団員達の拍手はマスコミ関係者のそれ以上に熱のこもったものだ。
それには裏がある。
日本に送られたコンチェルトのカラオケは少し古いもので、今日の指揮者とは違う指揮者のタクトで録音された物、今日はあえて、それとはかなり違う演奏をしたのだった。
しかし、その演奏に和音はしっかり合わせていただけでなく、一部では指揮者をリードする様な演奏をしたのだ。
本物の感性を持った天才ピアニスト、とにかく彼らは認めた、和音の力を。
少し古いカラオケと違う演奏というのは和音を試す意味があった。
彼等はそれを恥、後で和音に謝罪した者も何人かいる。
が、当の本人はあのアレンジも素敵でした、と全く意に介してない。
実際今日の演奏を一番楽しんだのは和音だったのだろう。

しばらくの休憩を挟んで記者達の質問に祥子が答え始めた。
和音はピアノに向かってBGMのように静かに演奏している。
『オーケストラとの共演は初めてと聞きましたが本当なんですか?』
『はい初めてです、ただこの楽団のチャイコフスキーは和音のお気に入りでよく聴きながら演奏していたそうです。』
『それにしてもこれだけの才能が有りながら最近テレビで紹介されたりする前まで、全く無名だったなんて信じられません。』
『そうですね、なぜかコンクールが苦手だったんです。』
『信じられません。』
『実際、昨年初夏の日本のコンクールで金賞を取ったのが唯一の賞で、それまでも幾つかコンクールに挑戦していたのですけどね。』
『ということは、苦手を克服したということですか?』
『そうです。』

「すいません、和音さんにも質問したいのですが…。」
流暢な日本語で声を上げたのは、日本駐在経験のある新聞記者。
和音は視線を向けにっこり微笑む。
祥子は、どうぞ、と答えながら同時通訳を務め始める。
「まずはウイーンの感想とかお願いできますか?」
にっこり微笑んでピアノのトーンを上げる和音。
到着までの期待、町を楽しく散策する様子、重々しく伝統あるウイーンへの敬意…。
ピアノが語っていく。
当然日本語で答えを聞くと思っていた記者たちは驚きを隠せない。
曲がチャイコフスキーになりトーンを落とすと祥子が。
『ということだそうです。』
「今の曲は?」
『和音の即興です。』
和音はにこにこしながらBGMを弾いている。


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