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土の中で始まるおはなし [おにいとぽてち]

俺が気づいた時、辺りは真っ暗だった。
どうやら土の中の様だ。
魔術をしくじったらしい。
憑依していた男に飽きたから他の人間に意識を移そうと思ったのだが、ターゲットにした大金持ちではなく…、
生まれたばかりの、か、かめに精神を移し換えてしまったようだ!
まぁいっか。
しばらくは、かめとして生きてみるのも悪くはない…、
といいが。

憑依していた男がもっと若いうちに移動すべきだったな。
たぶん魔術の途中で手が震えたんだろう。
次は違う魔術で移動した方が良さそうだ。
おっと反省してる場合じゃない。
まずは色々チェックしないとな。
う~ん生まれたばかりみたいで脳の中は単純に本能だけだな。
それにしてもこんな小さなかめの脳で俺の意識を支えきれるのか?
む? 色々チェックするつもりがもう終わってしまった…。
真っ暗だから何も見えないし。

さてどうしよう?

もう少し脳を調べ直してみるか。
ふ~ん今の温度は、かめにとってまだ地上へ出るには低いのか?
待てよ、こいつに乗り移ったのは夏だから温度は充分じゃないのか?
まさか時間や場所も大きく移動してしまったということか?
そうなるとやっかいだな。
この状態では情報が少なすぎる。
本能に逆らって地上に出るか、暖かくなるのを待つか…。
あれ? 何か眠くなってきたぞ…。
ぐ~。

~5ヵ月後~

ふわ~、良く寝たなぁ~。
? ここは? そ、そうか、かめに乗り移ったんだった。
え~っと、暖かくなっている。
そろそろ地上に出てもいい頃なんだろうな。

なんか出るの大変なんですけど…。
何で地中に生むのかな~。
まぁ安全なのと、温度変化が少ないということ、ぼくは分かってるけど、地上に出てくこっちの身にもなって欲しいよ。
あれ? 俺ってぼく?
あ~、寝てる間にかめの脳が成長して、俺の意識に影響を与えてるのか?
ぼくは大変なことになっているのかなぁ~。

とにかく地上に出よう。
まったく面倒だ、俺の意識を弱めれば本能だけで地上に出られるのだろうが、そんなことした日にゃ俺の存在がやばくなるかもしれない。
とりあえずもがきながら、脳のチェックもしてみよう。
…。
大丈夫な様だな。
本能以外は、俺の精神が完全に支配した。
おっ、ようやく地上だ。

おお、外は快晴だな、空気がおいしいぞ。
ここは…、狭い庭のようだ。
ブロック塀があって建物があって…。
それにしても、地面って間近で見ると全然違うものなんだな。
砂粒まで見えるぞ、蟻や…色々うごめいている。
人間に憑依していた頃には思いもよらなかった光景だぞ、草を下から見上げるなんて…。
かめは人間とは全く違う角度で風景を見ていたんだな。
で、この状態って危険はないのか?
やばくても、とりあえず移動してみるしかないのだろうな。

歩きにくいぞ。
この体に慣れていないから仕方ないな。
おや池がある、池というよりはみずたまりか。
おっ、かめがいる、え~と、何匹いるんだ?
ずいぶん大きいのもいるから、こいつの親もいるんだろうな。
えっ? 俺の母親か? よしてくれよ…。
お袋なんて呼ばんぞ。
だいたいどいつが親か分からないし。
う~ん、どうやら皆ひなたぼっこの最中ということらしいな。
うむ、本能のやつは水に入りたがっているみたいだ。
泥もついているから少し洗うとするか。

チャップン

おっ、泳ぐのは楽だな。
少し汚れが落ちた、さあ背中も洗うか…、
あっ、あ~、手が…届かない。
…、確かに甲羅を自分で洗うかめがいたら無気味かもしれん。
待てよ、手と思ったけどこれは前足か…。

さてと次はどうするか…。

…、水たまりに、ぽっかり浮かんでる、ちっぽけなかめが俺とは…。
何か人生って奴を考えてしまうな…。
それにしても大っきいかめ達はのんびりしてるっていうか、甲羅の上に他のかめが乗っていても気にも止めていないみたいだ。
何にも考えていないのかな?

そろそろ陸に上がるか、ああ、この岩は座り心地良さそうだ。
とりあえず、くつろぐとするか。
俺も日向ぼっこという訳だな。

しかし殺風景な狭い庭だね~。
手入れはしていなさそうだし。

おや? 家の戸に人影が、あっ戸が開く。
ここは本能に従って逃げるとこなんだろうな。
あれ? かめたち動じないぞ。
飼い主なのか?
普通人間が近づいてきたら逃げるもんだろう。

さて俺はどうする?
しまった、見つかったか。
やはり、岩に腰掛けて足を組んでては目立つか。
かなり驚いているようだな。
一応逃げるとするか。
すたこらさっさ~と。
それにしても走りにくいな。
待てよ、かめって二足歩行しないよな。
なんで俺二本足で走ってんだ。
俺の精神の影響で、このかめの体にも大きな変化が起きたってことか?
普通のかめに二足歩行は絶対無理だぞ。
おっと、人間が近づいて来る。
やばいか。
奥の手は使えるかな。
(こんにちは。)
よし驚いている、俺の思念は届くようだな。
「こ、こんにちは。」
ふむ、なかなか礼儀正しい奴のようだ。

とりあえず、こいつを利用して人間に移動したいものだな。
まずは下手に出ておくか。
(あの~、お願いがあるのですけど。)
「は、はい…、何でしょう?」
(ちょっとした手違いで、このかめに乗り移ってしまったのですが、移動する手伝いをしていただけないでしょうか、なんせこんな体なんで。)
「というと魔法使いさんなんですか?」
(まあそんなとこです。)
「かめの体が普通じゃないのですが。」
(俺の精神が入った関係で変形したみたいです。)
「そ、そうなんですか、で、何を手伝えばよろしいので?」
う~ん、先回失敗したから、今回は別の魔術にした方がいいな。
(え~と塩とコショウとにんにく、それから、たこ焼きを用意してもらえませんか。)
「たこ焼き? 何か魔法っぽくないですね。」
(重要なアイテムなんです。)
腹が減ったから食いたいだけなんだけどな。
「それだけで良いのなら用意できますよ、たこ焼きは隣のスーパーで買ってきますね。」
(よろしくお願いします。)
買いに行ったみたいだ。
何か物分りのいい奴だけど、裏はないだろうな。
ここは信じるしかないからな…。

おっ、帰ってきたようだな。
「買ってきましたよ。」
(お~ありがとう、まずはたこ焼きをお願いします。)
「はい、どうぞ。」
(もぐもぐもぐ、おいしいな。)
「たこ焼きと魔法との関係は?」
(まぁ気にするな。)
「で、どんな魔法をするんですか?」
(色々な材料を混ぜて秘薬を作る、塩、コショウ、にんにく以外はこの庭で手に入るから大丈夫。)
「その秘薬を使うと?」
(まず俺の意識の一部がこの体から離れターゲットを探す訳だ。)
「というと、お金持ちを探す訳で?」
(そう行けば良いけど、憑依し易い奴とそうでない奴が居て…、まぁ最近は憑依しやすい奴が増えているから、すぐ見つかるだろう。)
「その後は?」
(意識をそこへ飛ばし完全に憑依する。)
「なるほど、で、このかめはどうなるんです?」
(そうだな、俺はかめから完全に離れるけど、う~ん、かめは初めてだから良く分からないが、多少俺の残留思念の影響を受けて普通のかめではなくなるだろう、まぁすでに普通じゃなくなっているけどな。)
「確かに二足歩行できる形になってますからね、かめは私の物ですよね?」
(まぁそうだろうな、俺はいらんし。)
「やった~、こんな珍種、誰も持ってないぞ。」
(はは、そういうことだったか、さて、もう少し手伝ってくれるかな。)
「おっけ~。」

~材料を揃え薬を作る男とかめ~

さてと準備はできたな。
「魔法が成功したらもう会えないのですか?」
(そうだな偶然見かけたら声をかけてやるよ。)
「お願いします。」
(こちらこそ、で最後のお願いだ。)
「何でしょう?」
(俺が秘薬を飲んで、しばらくしたら合図するからコショーを鼻先で振りまいて欲しいんだ。)
「それなら簡単、まかせておいて下さいな。」
じゃぁ飲むとするか。
(ゴクゴクゴク、まずい~!)
「確かにおいしそうな代物ではありませんね。」

さて、薬を飲んだから俺の意識の一部が…、よ~し程よく体から離れた。
さ~て憑依するターゲットを探すか。
こいつに憑依してやっても良いけど、どうみても貧乏そうだからな…。
まずは近所から…。
おっ、この男にしよう金も持っていそうだし、憑依も簡単そうだ。
まぁ、大した金持ちじゃなかったら、もう一度術を使えばいいだけだからな。
さてと。
(コショーたむぞ~。)
「おっけ~、ぱっぱっぱっと…。」
(はぁはぁはぁ、はっくしょ~ん!)
「くしゃみで意識を飛ばして憑依、なんて魔法らしくないよなぁ~。」

~表向きかめに変化はない~

「さあて魔法は成功したのかな?」
(…。)
「かめ、動かなくなったな~。」
(…。)
「お~い、生きてるかぁ~!」
(あれ~? ぼくに話しかけてるの?)
「おっ成功なのかな? 口調が思いっきり変わってるぞ」
(う~ん、ぼくって頭がもやもやして何か変だよ。)
「残留思念の影響ってやつかな~、とにかく魔法使いさんはこのかめから出て行ったみたいだ。」
(あっれ~、ぼく、何か…、変な感じ…ここは…?)
「そうだろうな、色々あったんだよ、少しずつ教えてあげるから安心しな。」
(ぼくに話しかけてるんだよね、良く分かんないけど、お願いします。)

「まずは名前を付けてあげよう。」
(名前?)
「うん、そこのかめ、じゃあ味気ないだろう?」
(良く分かんないけどそんな気がしてきたよ。)
「そうだなぁ~、ぽてちでどうだい?」
(ぽてちかぁ~、良く分からないからそれでいいよ。)
「うちの庭のかめの名前は全部ぽちなんだ、君は特別に(て)を加えてぽてちさ。」
(あのぉ~何か手抜きと言う言葉が頭にうかんだんですけどぉ。)
「いやいや手抜きなんかじゃないぞ、一生懸命考えた名前だからね、(て)は抜かずに増やした訳だし…。」
(ちょっと汗かいてませんか。)
「き、気のせいだよ、で私のことは、おにいとでも呼んでくれな。」
(うんわかった、おにいだね。)

「ところで、ぽてち、おなかすいてないかい?」
(おにい、腹ペコだよ~、たこ焼き食べた~い。)
「うっ、またたこ焼きか、よ~しちょっと待ってろよ隣のスーパーで買ってくるからね。」
(うん、待ってるよ。)

~おにい、スーパーからの帰り道~

「さあ、たこ焼きも買ったし自分のつまみも買ったし、早く帰ろう。
それにしても、二本足で歩いて人とコミュニケーションがとれる、かめ、なんてどこにも居ないぞ。
しばらくは皆には秘密にしておこうかな。
そうだ専用の部屋も作ってあげよう。
外のかめたちと一緒にはできないからな。
後は…。

あれ? さっきからこの野良猫いやに懐いてくるな~。
今までは私を見るとダッシュ~で逃げてたのに。」

「さぁ家に入っちゃだめだよ。」

「ぽてち~ただいま~。」


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