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岩崎雄太-10 ブログトップ

91-授業参観 [岩崎雄太-10]

店をオープンさせた事により村の活動はより活発になった。
その事は村人達の自信に繋がり、心の余裕も。
そんなタイミングを見計らって、里美が提案したのは、養護施設の子達が通う小中学校との係わりだ。

「姐さん、あっしらが授業参観とか行っても良いんですか?」
「安っさんだめですよ、里美お姉さまのことを姐さんなんて呼んじゃあ。」
「いや、そう言われても、何とお呼びすれば良いのか分かんねえし。」
「姐さんとお呼びしてるという事は、安、死んで来いと言われたら死ぬぐらいの覚悟は出来てるんだろうな。」
「もちろんだ、岩崎家の長女みたいなお方なんだぞ。」
「だったら、お嬢さまとかじゃないのかしら。」
「いや~、みんな頼りにしてるだろ~。」
「里美お姉さまは、よろしいのですか?」
「そうね、しばらくは好きに呼んでくれて構わないけど、安っさんから姐さんと呼ばれたら私はどう返せば良いの?」
「もちろん、安、と呼びすてて頂ければ、一生お守りさせて頂きやすから。」
「おいおい、今度結婚するんだろ、お前大丈夫か?」
「それとこれとは別なんだ。」
「良く分かんないけど、留美ちゃん、子ども達は学校でいじめとかに遭ってない?」
「小学校は今の所問題無さそうです、中学の方は少し…。」
「今後、学校行事で参観の機会が有るものすべてに村の大人を派遣しましょうか。」
「どの様な形でですか?」
「そうね、留美ちゃんの方で学校サイドと調整して欲しいけど、授業参観ならお母さんっぽい人とお父さんっぽい人が組んで…、子ども達に、誰に来て欲しいかはっきり聞いてみるのも有りかな、中学生には後輩が喜びそうな人を推薦して欲しいと話した方が良いかしら、自分の為というと照れや色々有るでしょうけど、後輩の為とすれば結構本人の希望を素直に答えてくれるかもよ。」
「ふふ、そうですね、お姉さん、お兄さんも含めて聞き出しておきます。」
「いじめが起こっていそうなら抑止力として安っさんを投下しましょう。」
「あっ、成程、授業参観だけでいじめ撲滅に繋げるのですね。」
「運動会とかは、人数が多過ぎない様に気を付けて、みんなで応援したいわ、留美ちゃんバランスは考えてね。」
「分かりました、私も小学生の頃は、施設の方が来て下さっただけでも嬉しかったですから。」
「難しい年頃の子とは真正面から向き合ってあげてね。」
「はい、お姉さま。」
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92-キャッチボール [岩崎雄太-10]

子どもが親を選ぶ事は出来ないが、村では親代わりを選ぶ事が出来る。
大人達の関わり合い方は人それぞれ、甘やかしすぎては行けないが、ある程度は甘えさせてあげようというのが大人達の取り決め。
休みの日には集団で施設へ押しかけてキャッチボール、男たちが相談して始めた。
ボールの取り方投げ方を教える者もいれば、ひたすら相手をする者も。
口下手な子を中心にみんなが夢中になったのは、大人が相手をしてくれる喜びと、希望者は自分専用のグローブを買って貰えた事によるだろう。
大人達はすぐさま雄太に野球場をおねだり。
村人が屋外で集まれる場所は必要だという事で許可を得、造成工事を始めた。

「球場が完成したらバットも買い足さないとな。」
「お前、バッティングはどうなんだ?」
「大丈夫、町ではバッティングセンターに通ってたんだ、ストレス解消にな。」
「バッティングセンターか…、すぐには無理だろうけど、店に併設出来ないかな。」
「土地は大丈夫だろうが、初期投資としてどうなんだろう、ピッチングマシーンは高そうだよな。」
「人が投げれば良いんじゃないのか?」
「はは、誰がピッチングマシーンになるんだ?」
「みんな交代でさ。」
「あっ、マジだったのか。」
「雨の日でも練習出来るだろ。」
「まあ、その辺りも含めて提案しておくよ、この辺りは娯楽施設無いからな、子ども達の為にもなるだろう。」
「子ども達は上手くなったよな、始めた頃は全然キャッチ出来なかった子が見違えるほどに。」
「そうだな、なあキャッチボールしてると子どもの気持ちが伝わって来ないか。」
「ああ、会話は少ないが…、何となく大人と子どもの組み合わせが出来たよな。」
「子どもにとって特別な大人という事らしい、俺とは淳史が優先みたいな暗黙なのかルールが有るみたいなんだ、父親代わりとまではなってやれんが。」
「特に話をしなくても、黙ってキャッチボールの相手をする大人の存在は、子どもにとって大きいと思う、俺が子どもの頃、周りにそんな大人はいなかった、だからこんな風になっちまったんだ。」
「今は改心して子ども達の為にも働ける様になったから良いじゃないか。」
「まあな、でも子ども達に遊んで貰ってるのかもしれないって思う事もあるんだ。」
「確かにそうだな、球場が出来たらみんなで思いっきり遊ぼうぜ。」
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93-拡大 [岩崎雄太-10]

雄太も養護施設の子を気にかけている。

「里美、キャッチボールに野球場の建設と野球に片寄っている感じだが、サッカーやってる子とかは不愉快に思ってないのか?」
「そうでもないです、子ども達は学校ではサッカー、村では野球との住み分けを考えている様です、村で野球をやってくれれば学校の運動場はサッカー部が優先的に使えるとか、他の競技は、やりたいという児童生徒の人数が足りなくて、陸上とかの個人種目になっている様です。」
「そうか、都会と比べると選択肢がどうしても限られてしまうのだな、娯楽も少なくて…、里美はバッティングセンターの話、どう考えている?」
「バッティングセンターを建てるなら他の娯楽施設を併設した方が良いと思っています、単独より集客力が見込め、長い目で見たら確実にプラスになると、ただ、問題は人口の少なさです、片道一時間掛かっても来たくなる様なレベルの施設でないと安定した売り上げは望めないと思います。
真剣に取り組むなら、子どもからお年寄りまでが楽しめる施設の固め打ちをするべきかと。
スーパー銭湯からミニ遊園地、ショッピングモールやゲームセンター、映画館などから選んで人が集まるスポットに出来れば、JRの駅からも近いですから収益も上げられると思います。」
「具体的な案は有るのか?」
「一気に広げず、まずはスーパー銭湯の風呂の部分だけ建設し開業、そこからホールなどを増築して内容を充実させ、幅広い客層を呼び込める様にしていくというペースなら無理なく出来そうな気がします。
完成したら従業員の寮や社宅の建設、それが完成したらバッティングセンターの建設、といった形を取れば建設作業に当たる人に安定した仕事を提供出来ます。
食堂では資金の回収が順調に進んでいます、ゆっくりなら追加投資はさほど掛かりません。」
「急がなければ従業員も問題なく集まるという事かな。」
「はい、職業安定所からの照会、養護施設から職業訓練校に関する問い合わせが増えています。
村人が増えても、それに伴って仕事が増えれば何ら問題無い訳で、全体的に拡大して行くという方向で如何でしょうか。」
「そうだな、今後の収支データを見ながら建設の速度を調整してくれるか、住みたくなる村にしていかないと意味ないからね。」
「はい、お父さま。」
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94-漁業 [岩崎雄太-10]

里美が話を続ける。

「後、お父さまに一つ相談しておきたい事が有りまして。」
「どうした、彼氏でも出来たのか?」
「違いますよ~。」
「違うのか、そろそろ娘を嫁がせる親の気分ってのを味わってみたいと思っているのだが。」
「そんなの、妹の誰かがすぐにでもって…、娘と息子が結婚という稀有な体験が待ってるじゃないですか。」
「はは、そうだったな、で、相談というのは?」
「はい、このエリアの調査過程で後継ぎがいないとか、息子は都会から帰る気がないとかの声を幾つかか耳にしまして。」
「どこの過疎地も似た様なものなんだな。」
「それで、村人たちとマッチング出来ないかと。」
「良いと思うよ、血縁が無くても、否、血縁がないからこそスムーズに行く可能性も有る。
結婚を考えてる様な大人達だけでなく、職業訓練生、条件が合えば養護施設の子も含めて、お年寄りとの生活を体験してみる機会を作ってみる事は悪くないな。」
「ですがトラブルの可能性は排除出来ません。」
「里美、親族間にだってトラブルはつきものなんだろ。」
「はい。」
「だったら、試してみる事に何の問題もない、失敗して法的な問題が発生したら顧問弁護士に任せれば良い、私に相談という事は勝算があるのだろ。」
「ええ、まずは家事の手伝いとかから始めてお互いに慣れて貰います、始めから固定的に考える必要も有りませんから、集団お見合いというか、ゆったりとゆっくり始めて、お互いが気に入ったなら、少しずつ付き合いを深めて行くという形を考えています。
ダイレクトに職業訓練生を養子にして頂くとかも有りですが、漁師さんの後を継ぐのは抵抗が大きいと思います。」
「そうだな、漁業は我々にとって未知の分野だ、それでも体験プログラムを組めばそこから…、漁業体験を観光に組み込む事も考えてみてはどうだ?」
「はい、そうですね…、いきなり大々的に始める必要もないです、まずは漁師と交流してみたい人を村で募ってみます。」
「新鮮な魚が手に入り易くなれば食堂のメニューも充実させられないかな。」
「ですね、漁師の経済状況も調べてみます、何か大変そうなイメージしかなかったので、まずは漁師さんとの交流から始めます。」
「そうだな、焦る必要はないからな。」
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95-村おこし [岩崎雄太-10]

里美は漁協の人とも相談して交流の場を設けた。
食材を持ち寄り食事を共にし互いの生活を紹介する。
初対面のことで始めはぎこちなかったが、仲立ちは子ども達がしてくれた。
漁村の子達が福祉村の事情を分かってくれているのは、福祉村の大人達が小中学校との係わりを深めた成果だ。

「子ども達のお陰で、話のきっかけを作れたな。」
「食堂のお客さんもいるんだ、話が進んで食堂のメニューに魚介類を増やす事になったよ、ここで水揚げされた物から選んで通常の出荷より高く買わせて貰う事で話がまとまった、高いと言っても今までの仕入れルートよりは安くなるだろう。」
「成程、ダイレクトなら鮮度も良いだろうな、お互いにプラスになるのなら沢山仕入れたい所だがどうなんだ?」
「これから魚の捌き方とかを、今まで練習してなかった新人連中にも覚えて貰って、野菜の直売所に魚の直売所も併設して行く、ほら若手はもうすっかりその気になって質問してるだろ。」
「厨房の新人だな、村おこしで協力という事か。」
「ああ、ここには、これまで取りたてて目立つ観光施設がなかった、これからは食堂を中心に大型ドライブインとして充実させ、外からの客も呼び込んで行こうと盛り上がってるよ、漁師さんにもそれなりの事情が有るのさ。」
「賑やかになれば村を出て行く若者も減らせるとかだろ、俺の方は草野球チームの話を進めて来た。
生活のリズムが違ったりするから、野球場の空き時間を減らせるかもしれないと思ってな。」
「そうだな、岩崎社長にお願いして整備している施設、せめて維持費ぐらいは大人チームの使用料でと考えていたけど。」
「多くはないがこのエリアにも草野球チームは有るそうなんだ、交流試合とかで使って貰って試合の後は食堂へどうぞとかすれば、店の売り上げにも貢献できる、スーパー銭湯が実現したらさらに喜んで貰えるだろうな。」
「人口が少ないから集客が難しい面も有るが、競争相手も少ない、銭湯なら村人が増えれば自然と売り上げも伸びるだろうとの事で建設が決まったよ。」
「確かに村人は増え続けそうだな、村長達がコントロールしてくれてるみたいだが。」
「ここでは誰でも受け入れるとは行かないからな、暴行とかの犯歴の有る連中は別の村を開拓してるよ。」
「あっ、そうか、他の村の話は聞いていたが。」
「俺達の村は平和な村でなくてはいけないのさ、子ども達の為にも、逃げて来た女性の為にも。」
「守る事が、俺の役目なんだな。」
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96-体験 [岩崎雄太-10]

その後も漁村との交流は続いている、魚の捌き方を教えて貰ったり、一緒に野球をしたりと。
里美は漁船での漁を村人達に体験させたいと思ってはいたが、あえて黙っていた、漁師との交流の場でも。
漁は遊びの場ではないと漁師自身が訓練生に語っていたからでも有る。
それでも、漁の大変さは言葉では伝わらないと感じた一人の漁師が三人の訓練生を誘ってくれた。
その体験を終えて。

「君達、どうだった?」
「まさに男の職場でしたよ、里美姉さん、こいつは船酔いで役立たずになってましたが、吾郎は満足そうだったよね。」
「うん。」
「また乗りたいんだろ、船長さんも吾郎は根性が有るって褒めてたぞ。」
「へへ。」
「漁業実習は初めてなんだけど、吾郎くんさえ良かったら職業訓練プログラムを見直して、しばらく漁業について学習してみる?」
「う~ん。」
「吾郎、一緒にやろうよ、俺はお前ほど役に立てなかったけど、海は気持ち良かった、船長さんには気持ちを伝えて有るんだ。」
「亮くんは随分乗り気なのね。」
「はい、正直言って漁師が自分に向いているかどうか分かりません、でもここで修行させて貰えたら自分の自信になると思いました。」
「吾郎くんはどうなの?」
「亮が一緒なら、仕事は楽しかったから。」
「ふふ、分かったわ、船長さん達とも相談してみるわね。」
「俺は役立たずだったから…。」
「あらっ、武司くんの事も船長さん褒めてみえたわよ、船酔いできつかったのに最後まで頑張ってたって。」
「ほんとですか。」
「ええ、船は慣れも有るし、港には別の仕事も有るからまた手伝って欲しいそうよ。」
「ご迷惑をお掛けしただけだったのに…。」
「また相談しましょ。」
「はい。」
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97-投資 [岩崎雄太-10]

吾郎や亮の漁業体験の後、職業訓練の一環として五人が漁船で働く様になった。

「里美、漁師見習いの連中はどうだ?」
「きつそうですが頑張っています、漁師さんに言わせると体が慣れるまでの辛抱だとか、でも若いから時間は掛からないだろうと。」
「そうか、きつい部分は機械化とか出来ないのかな。」
「出来なくはないです、実際,、昔に比べたら随分楽になったそうです、でも漁船だって安くないし、さらなる投資は耐久性とか考えると二の足を踏んでしまうとの事で。」
「塩水は機械の敵だろうな、漁業の安定化に策は無いのかな?」
「養殖という選択肢も有りますが、リスクが無い訳では有りません。」
「相手は生物だからな…、でも株式会社岩崎で漁業に取り組んでみる事はどうだ?」
「漁船を購入、養殖施設を整備する場合のシュミレーションは幾つか出来ていますが、初期投資をどれくらいで回収出来るかが読めなさ過ぎて、リスクとリターンを見極めて行くには、どんな漁法でどんな魚を狙って行くか、養殖するなら魚種に取り組むかが問題で、漁師さんの意見も聞いてはいるのですが、まだ結論は出ていません。」
「研究機関とは?」
「はい、養殖に関して協力関係を作るべく動いています、岩崎の娘で有る事は最大限に利用させて頂いていますよ。」
「よろしい、ではハイリスク覚悟で漁業に投資してみようか。」
「はい、では漁船を製造している会社と資本提携して、そこへグループ企業からの応援要請の形を取って良いですか、単なる応援でなく他への応用を意識しています。」
「ああ、佐山を通してくれれば問題ない、佐山が渋ったら私から話を通すからな。」
「養殖システムはスーパー銭湯とも絡めて、養殖中の魚を見せる事も考えています、胃袋へ直通でなく目でも楽しんで頂いたり、絶対釣れる釣り堀も検討しています、ただ…。」
「どうした?」
「試算ではちょっとお高くなってしまいそうで。」
「初期投資が嵩んでも回収できれば問題ない、十億で収まらない様なら企画書を私に見せなさい、上限は二十億ぐらいだな。」
「十億で収まります。」
「なら任せるよ。」
「はい。」
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98-肩書 [岩崎雄太-10]

数日後の港。

「あっ、里美姉さん、いらしてたのですか。」
「亮くん、こんにちは、仕事は?」
「今、上がった所です。」
「どう、少しは慣れた。」
「もう仕事も覚えましたし、海を眺める余裕も出来ました、広い海は居心地が良いです、吾郎も生き生きとしてますよ。」
「聞いたわ、前の訓練内容にはついて行けてなかったのでしょ、亮くんが誘ってくれて良かったわ。」
「彼は体力も有るし真面目なんで、それより聞きましたよ、漁業に挑戦するって。」
「ええ、あなた達にも色々教えて欲しいからよろしくね。」
「漁船を新造となるとすごくお金が掛かるのではないのですか。」
「そうね、安くはないけど、漁船と養殖場で十億までなら私の判断で投資させて貰えるから大丈夫よ、お父さまには二十億が上限と言われたけど、人の問題も有るからそこまでは必要ないの。」
「すごいですね、その…、里美姉さんに対するお父さまの信頼も。」
「そうね、ハイリスク覚悟と話して下さったから、大きな損失を出す事も覚悟の上でしょうね。
でも、この先お父さまの企業の中枢で働いて行く事を考えたら十億ぐらいは自分で責任を取れないとだめなのよ、それと私、失敗する気ないし。」
「その自信はどこから?」
「一つがだめでも他でカバーできる体制を作って行くの、担当の佐山さんを通せば色々応援も頼める、場合によっては自分でお願いに行くけど。」
「はあ~、さすが我らが姉さまだ、肩書は姉さんのままですか?」
「永遠にあなた達の姉よ、でも肩書としては、株式会社岩崎常務理事、漁業部門担当という事にして頂いたわ、対外的に動き易いように、岩崎雄太の長女という肩書も便利だけどね。」
「県内では有名人になりつつ有りますものね、すでに幾つかの中小企業の立て直しを成功させたとか、テレビのローカルニュース見ましたよ。」
「どう、美人に映ってた?」
「それはもう、なんか見ていて、こっちが照れくさくなる程。」
「よし、今度奢ってあげよう、最近は魚料理ばかりなんでしょ、たまには焼肉でもどうかしら、五人の新米漁師揃って。」
「喜んで、お供させて頂きます。」
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99-告白 [岩崎雄太-10]

ある日、亮は職業訓練校へ。

「あっ、亮くん、お久しぶりね。」
「やあ。」
「何か逞しくなったわね、海の男って感じがする。」
「はは、小百合はしばらく見ない内に一段と綺麗になったな。」
「ふふ、お口が上手な所は変わってないのね、ずっと漁村暮らしなのでしょ、向こうでの生活はどう?」
「皆さん親切にして下さるし、桜と涼子がヘルパー実習のついでに身の回りの事も手伝ってくれてる、実際、漁業実習を始めた頃は助けられたよ。」
「どう、桜と吾郎は?」
「良い感じだよ、吾郎はいつもにこにこしてるからか村の人達に気に入られているし、桜は世話女房という感じかな、休みの日は吾郎の面倒を見てるというか、吾郎に甘えているというか、吾郎で遊んでいるというか…、でも三人のご老人が二人を養子にと狙ってるよ。」
「そっか、良かったね、吾郎にはなんか幸せになって貰いたいって、あの性格だからさ。」
「だよな、しばらく見守って行くよ。」
「亮も漁師を本格的に目指すの?」
「ああ、今日はその相談に来たんだ。」
「そっか、もう少し話を聞きたいけど、私は夕食の準備が有るから。」
「手伝うよ、今日は時間が有るから。」
「相変わらず優しいのね、夕食も食べてく?」
「うん、今日は寮で泊まってくから。」
「じゃあ夜は近況報告会ね。」
「今夜のメニューは何だい?」
「前もって教えてくれてたら特別メニューにしたのに…、今日は月並みなカレーよ。」
「ならジャガイモは俺に任せろ。」

「向こうでも料理してるの?」
「最近はね、始めた頃はそんな余裕なかったけど、今は魚の捌き方も教えて貰ってるんだ。」
「こっちでも練習してるわよ、まだ仕事に出来るレベルじゃないけど。」
「難しいよな、魚によって感覚が違うし、さすがに食堂や直売所の連中は上手くなったけど、それでもまだまだ修行が足りないそうだよ。」
「ええ、こっちへもたまに来てくれて、店の話とかしてくれるわ、亮はどうしてちっとも来てくれなかったのかしら、向こうに可愛い彼女でも出来たの?」
「いや、漁船の免許の事とか、漁の時間以外も勉強しているんだ。
ねえ、小百合の方こそ彼氏は出来たのか?」
「お弁当作って、みんなの食事作って、情報収集しながら新メニューも考えなきゃいけないし、それなりに忙しいの、彼氏になってくれそうだった人は出てったきりで、ちっとも帰って来てくれないし。」
「違ってたら、めちゃ恥ずかしいが、その、ちっとも帰って来ない奴が俺の事だったら…、付き合ってくれないか。」
「えっ、何よ唐突に…。」
「ずっと考えていたんだ、でも将来の設計が全く出来てない状態では言い出せなくて漁師を目指した。
この先は船に乗って仕事をして行くか養殖の仕事をするか流動的だけど、ここに腰を落ち着けようと思っている、真面目に考えた結論なんだ。」
「やだな…、私の事なんか眼中に無いのかと思ってた…、付き合ってあげても良いけど、寂しい思いさせたら許さないから…。」
「分かった、今までごめんな。」
「この厨房での作業は、二期生がもう少し慣れたら任せて、私は食堂かフードコートへ移動する予定なの、色々経験する為にね、その時は寮も移るから。」
「うん、あ~、鍋がやばいぞ!」
「すぐ火を止めて!」
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100-思い [岩崎雄太-10]

夜。

「亮、里美姉さんが漁業に乗り出すと聞いてるがどんな感じなんだ。」
「新しい漁船の建造を始めるそうだ、コストと相談しつつではあるが、作業が楽になるシステムを導入して漁業従事者の負担を減らし、きついイメージを軽減させようと考えている。
費用対効果の検証をここの港を基地にして行っていく、釣り客や観光客向けの船も検討して行くそうだ。
もう一つは、養殖、ローリスク、ローリターンな魚種とハイリスク、ハイリターンな魚種を組み合わせてバランスを考えている。
スーパー銭湯に絡めて、高めの水温を好む魚を養殖したり、水槽で客に見せたり、釣り堀とかもイメージしているそうだ。」
「なるほど、案は色々有るんだな、でも勝算はあるのか、一からのスタートで。」
「大学や、グループ企業がバックにつくからな、我らが親父さまの長女が立ち上がるんだぞ。」
「でも、世の中の人はどう考えてるのかしら、養子という存在を。」
「微妙な所も有るとは思うけど、里美姉さまはバックを頼らない形でも実績をあげてる、私は小さくてもお姉さまを支える一人になりたいわ。」
「世間がどう思おうが関係ないだろ、俺の親父は岩崎雄太だ。」
「そうよ、就職で出てった連中も堂々と岩崎を名乗ってるってさ。」
「ちょっと申し訳ないのは実のお子さん達だよな、親父さん達、こっちに来ると平気でニ三か月滞在して下さるし、養護施設の子に配慮してか一度もお連れになられない。」
「私達にとっては可愛い弟、妹なんだけどな。」
「岩崎村で就職した奴は兄と認めて貰えたと喜んでいたよ、そういう教育をされているのだろうな。」
「養子と言っても、里美姉さんは漁業に対して十億円を自由に投資して良いと言われているそうだぞ。」
「お~、すっげ~、本当か、まだ二十二だろ、ちょっと俺らじゃ考えられないよな。」
「それだけの人なのよ、だからバックも付くのね。」
「俺達もここを盛り立てて貢献しようぜ。」
「そうだな、スーパー銭湯が完成したら客も増えるだろうし、次にオープンさせる店は観光客を意識して内容を充実させているのだろ、そうなったら土産物の売れ行きも良くなるんじゃないのか。」
「みんなはここでずっと暮らす事考えてるの?」
「俺は町に良い思い出がないからな…。」
「お父さまは土地に余裕が有るから無理して出て行く必要は無いと話して下さったわ。」
「都会暮らしを考えてた連中はもう残ってないだろ。」
「そっか、ちょっと安心したな、みんな出て行っちゃったらどうしようって思ってた。」
「出てける訳ないだろ、二期生はまだまだだし、俺達の故郷がこれからって時だぞ。」
「私は施設の子達から離れたくないわ、子ども達と過ごす時間は私にとっても大切な時間だもの。」
「ここへ来てみんな変わったよな。」
「うん、お父さまが話して下さったよね、今の日本はバランスが悪くて褒められた状態ではないけど、辛い思いをして来た養護施設の子達が、少しでも幸せになれたら、少しはましにならないかなって、施設の子が幸せに近付ける事は私達の幸せでもあると思うわ。」
「やばいな、海に出ているうちに取り残されてたのかな、俺。」
「亮は取り残されたというより、小百合を残して出て行ったという感じでしょ、仲が良いと思ってたのに相談もなく漁村へ移って行って。」
「えっ。」
「お前が出てってから、随分落ち込んでたんだぞ、次に小百合を泣かせたら村八分だからな。」
「え~、えっと…、みんなに誓うよ小百合を大切にするって…。」
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