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51-村人 [岩崎雄太-06]

岩崎村の住人達には自分達で新しい村を作って行くという意識が強く、特に初期段階では多くの話し合いの場を持った。
その一つには、村と言うと人間関係が難しいと考える人が多いかもしれないが、そのイメージを払拭したいという思いが有った。
とは言え、移住してすぐに仲間だと言うのには無理が有る。
昔ながらの村とはまた違った人間関係の難しさが存在していた訳だ。
そこで、まずは二三人でも良いからグループを作ろうとなった。
初期メンバーは趣味もバラバラだったから、飲み仲間から始まる。
少なかった女性は大鹿の奥さんから色々教えて貰いながら互いの距離を縮めて行った。
人数が増えて来ると同じ趣味を持つ仲間も現れ、結びつきの強まる人達も。
逆に孤立しそうな人が加わる事も有ったが、そこは皆で支えた。

会社の拡大に伴って、少しずつサークルが出来始める。
古くて新しい伝統芸能の様なものに取り組む連中、バンドを組んだりアカペラボーカルグループを結成する者達、釣り同好会、スキー愛好会等が、仕事を終えてからや休日に活動。
それは村の発展と共に盛んになって行った。
モトクロスを始める者やクロスカントリーの大会に挑戦し好成績を収める人も。
美しい自然に囲まれた村で仕事をきっちりこなし余暇も充実した暮らし、それが岩崎村の生活として知れ渡る様になる。

村人の結びつきを強めている事に、お祭りやイベントも有る。
担当しているのは村の青年団、古臭いネーミングだという人もいるがレトロ感を気に入ってる団員も多い。
独身社員は全員メンバーになっているが実際の活動を強制される事はない。

「優は秋祭り実行委員会、参加するの?」
「微妙なのよね~、委員長の木下さんは素敵なんだけど、何となく長谷川さんと良い感じになってると思わない?」
「ふふ、婚約近しという情報も有るわね。」
「え~、やっぱそうなんだ、なら中田さんの学園祭応援委員会にしようかな。」
「あれっ? 中田さんはタイプじゃないって言ってなかった?」
「あの委員会にはね…、でもこれ以上は内緒。」
「上田さんなら彼女いるわよ。」
「え~、そうなの知らなかった~、麗子は私のこともお見通しか…。」
「限られた情報から多くの事実を掘り起こす事が私の仕事なの、普段からつい癖で、う~ん、優は佐竹さん知ってる?」
「温室の管理してる人? 話した事ないわ。」
「彼は秋祭り実行委員会のメンバーなの、委員会の仕事を通して、どんな人か知れば…、優とは合いそうな気がするのよ。」
「麗子有難う、麗子のお告げで何組ものカップルが成立してるのでしょ、うん、秋祭り実行員会に参加するわ。」
「ふふ、お告げなんて大袈裟よ、絶対成立する訳でもないし。」
「でも確率は高いし、成立しなかったのは麗子も知らない遠距離の相手がいたとか。」
「すべての情報を手にしてる訳ではないからね。」
「麗子自身はどうなの?」
「多分近い内に告白されると思うわ。」
「どんな人?」
「あまり話したことないから、よく分からないけど、しばらく健全なお付き合いしてみようかな。」
「告白して来るって、そんな雰囲気を醸し出しているのね。」
「優だったら気付かないレベルよ。」
「麗子は不思議な力を持ったお人だから…。」
「いいえ、ただの観察者よ、落ち着いて見てれば色々分かるの。」
「はぁ~、スーパーエリートって、凡人の私とは次元が違うって事なのね。」
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52-学生村 [岩崎雄太-06]

愛知県の山間部に雄太が第二の拠点と位置付けた村が有る。
株式会社岩崎指導の下、学生達が設計に取り組んだ。
目指したのは林業チームの拠点と学生が継続的に山暮らしを体験出来る場。

設計と並行してまず学生達が始めたのは国道から一番遠い集落跡の整備。
そこが学生達の拠点となる、時間は掛かっても重機は極力使わず、残っている空き家に耐震補強を施して使うと決めた、将来的には一から学生の手で家を建てる事も。
都市部に有る大学から日帰りでも作業に来られるが、テントを持って来て土日の作業が中心。
もちろん夏休みは連泊して共同作業を楽しんだ。
学生達は住環境をゆっくり整えて行こうと考えている、それは後輩達にも、自分の手で村を作る体験をして貰おうと考えての事。
ゆったりとした計画に沿って環境を整えている。

一方、林業チームの拠点作りは岩崎村標準を目指し計画的に進めた。
電線も地中の共同溝に、道幅も広く建物は岩崎村と違ったデザインをベースにしているが木材をふんだんに使う。
施工はプロの業者に任せたが、土木科の学生は共同溝工事の見学会を開くと共に工事記録を残した。
建築科の学生も同様に動いたが、施工の手伝いをさせて貰う者もいる。
彼等は就職後、設計や現場監督といった仕事をする者がほとんどだが、実際の施工に携わる事は良い経験になる。
業者も、将来君の下で働く日が来るかもしれないと話しながら、真剣に教えてくれた。

こうして作られた村に林業機械が運び込まれるのと前後して、岩崎村の林業チームを二つに分け独身者のみで構成された二つ目の林業チームが越して来た。
寮は余裕を持って建てられていて、独身者が一人で使うスペースは、結婚して同居、子どもが出来ても問題のない広さだ。
子どもが大きくなる頃までに、まだ手付かずの集落跡を開発する計画も有るが、他の計画との兼ね合いで進んではいない。
寮に余裕を持たせたのは学生の為でも有る、学生が寮に泊まって社員とも交流してくれれば良いと。
この村はこのエリアの中心となっている町まで車で十分も有れば行ける、日々の買い物には困らない。
そこには公立の小中学校も有るので岩崎村とは条件が随分異なる。
林業チームは、オペレーターとサポーターによって構成。
オペレーターには女性もいるがほとんどが男性、それを女性中心のサポーターが支える。
炊事洗濯掃除はサポーターがしてくれる、そんな生活に憧れて林業チーム入りしたオペレーターも居るくらいだ。
そこに学生を加えて村を形作った。
若者ばかりの特殊な村だ。
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53-仲間 [岩崎雄太-06]

学生村に建物が増えた頃、遠方で就職した設立初期のメンバーが訪ねて来た。

「今日は。」
「おお、いらっしゃい、ほんとに久しぶりだね、仕事はうまく行ってる?」
「はい、生まれ故郷の株式会社岩崎と同じグループ企業で働いています、遠く離れていても先輩と仲間のままですよ。」
「そうか、君が来ていた頃のメンバーの多くは結婚して三つ目の林業チーム設立に合わせて岐阜県へ移動したんだ、君が来てくれた事は伝えておくよ。」
「大丈夫です、向こうの先輩にもメール入れて有りますから、この後、株式会社岩崎関連の土地を回る予定なんです、時間に余裕が有りますから向こうの現場まででも押しかけるつもりなんです。」
「それなら君の兄貴分達も喜ぶだろう。」
「はい、向こうは向こうでまた違った展開をしているのですね。」
「まあそうだけど、林業チームのする事はどこでも変わらないさ、もっともここは新人教育と婚活という役目も担ってるけどな。」
「河合さんは結婚の方どうなんです?」
「はは、ようやく婚約までこぎつけたよ、村長になると頼もしく思われるのか、すぐに相手が見つかるというのが学生村のジンクスになって来てね、俺がジンクスを破ってしまったらどうしようと考えていたのだがなんとかなった。」
「それはおめでとう御座います、結婚後はどうされるのですか?」
「村長を独身最年長者に引き継いで、岩崎村へ戻るか四つ目の林業チーム設立に係わるかといった所さ。
安定の岩崎村か挑戦の新チームか、まだ若いつもりだから挑戦したい気持ちは有るけどね。」
「開拓者魂を失っていないのですね、さすが河合さんです。」
「はは、当たり前だろ、君達が開拓した学生集落も随分変わったぞ。」
「ええ、進行状況はネットで見てきました、実際にログハウスがどんな形になってるか楽しみです、畑も。」
「君の後輩達も頑張ってるよ、学生の中には周辺調査の拠点として滞在する人もいてね、休日は宿泊スペースに合わせて調整をしてるけど、平日でも常に何人か来ている、はは、村って言うと年寄りのイメージが有ったけど、この村には独身の若者しかいない、しばらくは結婚したら移動という形が続いて来たからね。」
「この先もその状態が続くのですか?」
「いや、一つの集落跡を家族向け住宅にすべく開発中だよ、そこには社員だけでなく近くの研究施設の職員や大学関係者も住む方向で調整を進めている、ここの農地は大学の農学部に貸してるからな。」
「おお、まさに学生村ですね。
僕らが初めて来た時は廃村で誰も住んでなかったのが、こんなに綺麗になって、周りの森もすっきりして見違えました、嬉しいです。」
「逆に、廃村になるまでここで暮らしてた人達は悲しい思いをしたのだろうな。」
「そうでしょうね…、おっと、お忙しい所、長話をしてしまってすいません、村を一通り見学させて頂いてよろしいですか?」
「ああ、これが今の案内図だよ、何なら案内を付けようか?」
「大丈夫です、ゆっくり、じっくり村を味わって来ます。」
「はは、暗くなるまでには戻って来いよ。」
「はい。」
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54-経営 [岩崎雄太-06]

学生村が愛知県内の大学に支えられて成長する一方、岐阜県の地方都市に設立された岩崎学園大学はその都市の活性化に着実に貢献して来ている。

大学は経営学部と経済学部でスタート。
テレビ番組の影響も有って当初から優秀な学生が集まった。
大学側は、すぐに実習協力企業を市内で募集。
学生達はそれに応えた企業の経営状況を分析すると共に経営改善を模索した。
良い物を客に提供していてもマーケティング能力がないと伸びない事も。
学生達はチームを組んで実習協力企業の調査をする。
調査結果を元に改善策を話し合い、企業に提案する。
話し合いの場には教授が参加する事もあるが、学生達が喜んだのは学園の理事でも有る雄太の参加も有ったという事だ。
幾つかの企業は、実際にその提案を受け入れて、少しづつ経営状況が改善された。
その中で特に力を発揮したしたのは谷川淳一、四年生になる頃にはアドバイスの的確さが商工会議所でも話題になる程までに成長していた。
その彼が。

「なあみんな、今まで企業や店を個別に再生と考えて来たけど、これからは町全体の再生を意識して行かないか。」
「谷川、どんな形なんだ?」
「今でも商工会議所が有るが大した事はやれて来なかっただろ。
もっと踏み込んだ形で、企業同士が競争ばかり考えるのではなく協力し合っても良いと思うんだ。
もちろん価格カルテルとかはだめだけどな。
例えば土産物屋を二軒再生してるけど、その二軒は競争相手だ。
だが、二つのパーツを組み合わせて始めて完成するというお土産を、一つずつ販売したらどうだ。
片方の店で片割れを見つけて興味を持った客がもう一つの店も訪れる、品揃えの中心を変えて置けば両方の売り上げが伸びる事に繋がらないかな。
その土産物も、市内の企業から仕入れる率を上げて貰う。
今まで取り組んで来た企業や商店をもう一度見直し、繋げる事の出来る部分は繋げて行く。
資本的な関係はなくても共同体として盛り立てて行けば、バラバラで動くより効果的だと思うんだ。」
「良いと思うわ、これまで取り組んできた所は、継続的に調査も続けて居るから、三四年生で再検討しましょう。
グループ分けと担当先は…、谷川さん、一度全員が全部をざっと目を通してからの方が良いかしら。」
「そうだね、ポイントは無関係に見える二つの企業でも協力関係を作れる可能性があるかどうかだからな。」
「谷川リーダーからの指示という事で、三四年生全員に連絡しておくよ、文章は作るから後で文面を確認してくれな。」
「ああ、頼むよ、それとコンサルタント会社を新規に立ち上げる事が決定した、手伝ってくれる人を募集する、大学側も実習として認めてくれるからね。
資金は岩崎理事が全額出して下さる。
今まで大学が行っていた、実習協力企業との調整も新会社が受け持つ。」
「谷川社長、社員の募集は何時からですか?」
「はは、社長は早いよ、社員の募集も近い内に始めるけど、今の所広くは募集しない。」
「谷川社長、私を雇って下さいませんか。」
「あれっ、君は就職決まってなかった?」
「それが…、私の手で再生しようと考えていたのが間に合わなかったのです。」
「なるほど、詳しい話は後でね。」
「谷川社長、規模はどれぐらいを想定しておられるのですか?」
「始めは小規模だけど、将来的には日本中の地方都市に支社を作って日本の活性化に役立てる規模だな。」
「え~、そこまでですか。」
「ああ、俺のバックには岩崎理事がついて下さるからな、それぐらいの気概が無かったら失礼だろう、すでに俺達は実習の形で幾つかの地方とも繋がり始めている、それを発展させないと。」
「そうね、私達で日本を再生しましょう。」
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55-谷川淳一 [岩崎雄太-06]

谷川達が試み始めた、企業間の繋がりを強化という事は当初大きな手間と時間が掛かった。
企業間の繋がりを作ろうと考えた時、安易に相手企業の情報を流す事は出来ない。
守秘義務が有るので当然の事だ。
学生達は細心の注意を払って、少しずつ了解を得ながら話を進めて行った。
だが、それが突然大きく進み始めるという事も有る。
大都会ではない、交渉相手に知り合いがいると言う事も少なくなかったからだ。
極端な例も有る。

「谷川くん、山田の会社が土地を探していたとは知らなかったよ、うちの中途半端な遊休地をどう生かすか苦慮していたし、この先事業規模を拡大するなら郊外で広い土地を確保するしかないと考えていたからね。」
「私はお二人が一緒にゴルフに行かれる様な仲と知って、それでも私どもには守秘義務が有りますので随分気を使ったのですよ。」
「その姿勢を見せてくれた事は嬉しかったよ、でも君の言う通りもっと市内の企業や商店が協力し合うべきだと痛感したね、山田の会社が土地を探している事も、うちの遊休地の事も秘密でも何でもない事だったのに君がいなかったら繋がらなかった。
社長同士が友人なのに力を合わせるチャンスを見逃していたのだから、今度、商工会議所でも話題にしようと思っている。
それでも、やはり君の言う通り、商工会議所とは別の企業組織を作った方が早いし、面白いと思うよ。」
「他の企業や店舗の間でも協力体制を模索していますが、私達では立場上動きにくい所が有ります、小栗さんがまとめ役になって下されば、かなりペースを上げる事が出来ると思っています。」
「ああ、君達がプランを出してくれるのなら安心してして動ける。
コンサルタント契約の方は基本契約プラス成功報酬という形でどうだろう、君の会社も大きくなって欲しいからね。」
「有難う御座います、ここで成功させ、それを全国の地方都市へと考えています、よろしくお願いします。」

小栗と谷川が推し進めた組織は、すぐに広がり始めた、それは谷川の実績が知れ渡っていた事にもよる。
合言葉は町ごと活性化。
一つの会社では大きな投資が出来なくても、数社が協力すれば可能になる。
共同出資して株式会社を立ち上げ、人の流れ、車の流れなどを考慮して新たな店舗を、例えば歴史的建造物を模した形で建てたりといった人目に付き話題になる形で展開した。
廃業を考えてる老夫婦の店も、借りたり買い取ったりしながら再建して行く。
岩崎学園大学も少しずつ規模を拡大しているので学生向けの店も展開した。
そこは地元の若者にとっても魅力的な場となる。

谷川が狙ったのは、大きく三つ。
観光客にとってより魅力ある町にし、より散財したくなるサービスの展開。
規模はともかく内容は大都市と同等のサービスを展開する事により、周辺市町村の住民がこの地方都市へ足を向ける様にする、もちろん市民にとっても魅力ある町にする。
それらによって若者の地元志向を喚起する、その為に地元企業の活性化を計り給与水準を上げる。

簡単な事では無かったが、コンサルタント会社設立から数年後には目に見える成果が出始めてた。
人口の増加だ。
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56-政治 [岩崎雄太-06]

谷川達の活動を支えたのは…。

地域の活性化を目指している廃村復活サポートチームは、廃村再生をメインに始まったテレビ番組の関連で組織されたものだ。
岐阜チームはリーダー役を引き受けた地元出身若手俳優の真面目な人柄も有ってか、呼びかけに応じたボランティアは真剣に廃村再生を考える人達が多い。
その中でも核となったメインスタッフ達は地元に対する思いが特に強かった。
村にイベント広場が完成し店の売り上げが伸び始めた頃には、周辺の植林地も株式会社岩崎、三つ目の林業チームの力で綺麗になっている。
美しく蘇りつつある村で、イベント収入と店の売り上げを生かし更なる展開を考えていた頃、メインスタッフの一人が。

「この勢いを町にも広げたいわね。」
「そうだな、観光客は少なくないが他の産業が弱いからな。」
「岩崎学園大学の話は聞いたか?」
「実習として企業の経営を見直しているのよね、熱心に取り組んでいるそうだし、頭の良い人が多いと聞いてるわ。」
「岩崎さんは学生が中心になって地方都市一つ再生出来たらと考えています、なんて番組で話してなかった?」
「手ごたえを感じておられるのだろうな。」
「だとしたら俺達は、廃村復活をきっかけに面積ばかり広いこの市をもっと住みたくなる町にと動いて来た訳だが…、う~ん、サポートメンバーも随分増えた今、もっと何か出来ないかな。」
「経済を学生が考えてくれるなら、私達は政治という事になるのかしら。」
「市政の問題は、今までも話題に挙がって…、問題点を仲間内で指摘して来たが、それだけでは何も変わらないわな。」
「でも、私達が政治活動を考えるとなると、メンバーからの反発も有るでしょうね。」
「別で政治団体を作って、そこを応援する形にすれば良いと思う、チームリーダーが応援してくれるだけの人物が居れば、市長だって仲間内から出せる、いっそリーダーには俳優を辞めて貰って市長にとか。」
「彼は多才だからな、でも俳優業を続けて欲しいよ、彼のお陰で観光客が増えてる訳だから。」
「政治団体のトップ、市長候補が思い浮かばないのが問題ね。」
「下地だけでも作れないかしら、市長は難しくても市会議員からスタートなら、加藤さんを当選させるくらいは出来ると思うわ。」
「えっ、市政の分析はして来たけど、俺はそんな器じゃないぞ。」
「加藤一人に背負わせるのではなく、どうかな、俺達全員で一議席を確保して、一人分の仕事を分担してこなす、正式な議員は俺達の顔として、知的美人、秋山さんにお願いするのも有りじゃないか、ファンも増えてるそうだし。」
「う~ん、そう来たか…、私はあくまでも表向きの議員、実態は協力してくれる人の集合体が一人の議員の役割を担うという事なのね。」
「それなら、そのまま市長だって狙えないかな、秋山さんには政治経験がない、俺達だって似た様なものだ、でもみんなで分担して協力出来たら、自分の仕事やサポートチームの仕事をしながらでは余裕がないかもだけど、頑張れば何とかならないかな。」
「サポートチームの方は若手に引き継ぐべき時じゃないか、何時迄も俺達が頑張っていては次が育たないだろ、サブで動いて貰ってる連中にもっと任せた方が良いと思う。」
「そうだな、来週岩崎さんがみえた時に相談してみるよ、大学で政治関係の講座とか開いて貰えれば、違った仲間も作れるかもしれないだろ。」
「ただ、法的な問題も有るから、しばらくはみんなで学習だな、公職選挙法を把握しきれずに退場した人もいるから。」
「私達の町が良くなるのなら、私は頑張るわよ。」
「やるしかない、というより挑戦してみたいな、みんなでやるのなら私利私欲の政治家に勝てると思う。」
「じゃあ俺の方で具体的なスケジュールを立ててみるよ。」
「私は、市政の問題点を整理してみるわ。」
「俺は、現役市会議員が親の知り合いにいるからコンタクトをとってみる、もちろん俺達の考えは内緒にしてだがね。」
「各自が動いてみて、次回持ち寄るという事で良いのかな。」
「途中経過を加藤に報告で良いか?」
「ああ、問題が有ったらメールで全員に知らせるから、早めに報告して欲しい、今までの活動とは違うから、小さい事でも頼むな。」
「そうね、始める前に変な誤解を受ける可能性も否定できないわ、加藤さん、私も気を付けるわね。」
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57-政治団体 [岩崎雄太-06]

地元を良くしたいという思いで集っている連中の事、今までも市政について語り合う事が何度もあった。
彼等が政治団体設立へ向けて動いたのは自然な成り行きだったと言える。
まずは廃村復活サポートチームの運営を若手に引き継いだ。

政治団体の設立までには時間が掛かった、いや時間を掛けたと言った方が正確だ。
それは国政の場でブームに乗って議席を伸ばした党の議員が、その能力の低さを露呈したり違法行為をした例を幾つも目にして来たから安易に考えていない。
各自自分の生活の為の仕事も有る、限られた時間の中、減る睡眠時間といった事情も有った。
それでも頑張れたのは調べて行く過程で市政の問題点に色々気付けた事と仲間の存在だろう。
一方、岩崎学園大学も雄太の指示の下、彼等をどう援助して行くか検討を重ねていた。
結果、大学付属の政治研究所を設立する事に。
相談の結果、中心となって動いていた八名を研究所の所員として採用。
大学側は政治経済学部の新設に向けて準備も始める。
このタイミングで雄太は谷川淳一を彼等に紹介した。

「経営学部三年の谷川です、よろしくお願いします。」
「こちらこそ。」
「岩崎理事からお話を頂きまして市政を自分なりに調べてみました、国や県との兼ね合いが分かりくいですが、普通の会社だったら有り得ない事をしてますね。
費用対効果を考えたら、すべきではない事を平気でしている気がして、皆さんが立ち上がろうと思う気持ちが分かりました。」
「岩崎さんからは経営学部にも手伝って貰えばとアドバイスを頂いたのですが。」
「市を、会社に置き換えて再生したいと思います。
面白い案件なので、チームを組んで調査から始めます。
皆さんの事は伏せて、研究所設立が公になる前に実習として市の調査を行います。
僕たちは行政に関して素人なので、一度情報交換の場を持ちたいと思いますが如何でしょう。」
「そうか、市役所に乗り込むんだね、今は自由に使える時間が出来たから会議は問題ないが…、私達が感じてる問題を伝えると、学生達に先入観を持たせはしないだろうか。」
「ですね、初回は問題点を伏せて調査ポイントだけの指示をお願いします。
調査結果を踏まえて色々検討して行きましょう、ところで選挙は何時頃になりますか?」
「市長選は辞任とかなければ来年の九月、市議会は十一月になるかと。」
「それでは学生達に住民票を移しておくようにお願いだけはしておきます。」
「うっ、そこまで言ってくれると身が引き締まるよ。」
「僕らはここの企業や商店を伸ばす活動をしています、その過程で市政に対する不満も聞いています。
この地は僕らの実習の場ですが、実習と言えども結果を出す事を目標にしています。
この先、後輩達の事も考えた時、行政との関係は大切だと思います。
地方の再生に限った事では有りませんが産学官が手を結ばないと効率が悪くありませんか。」
「ああ、その通りだ、はは、今までの産学官の発想とは随分違うとは思うがね、経営学部や政治経済学部との連携がうまく行けば、それだけでも注目を集める事になる。
観光がメインの町だからプラスになるね。」
「はい、但し観光で得た資金を他の産業へ投資してバランスの取れた形を模索しています。」
「あっ、そうか、あ~、そこまで頭が回ってなかった、谷川君、これからも色々教えてね。」
「は、はい。」
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58-みどりの風 [岩崎雄太-06]

政治団体みどりの風がスタート準備に入ったのは谷川と小栗が企業や商店のグループ作りを始めた頃だ。

「谷川君、政治団体みどりの風と、もっと連携を強めなくて良いのかな。」
「我々が協力して行こうと呼びかけている企業の人達がみどりの風を受け入れて下さるかどうか掴み切れていません。
ここまでの準備段階では廃村復活サポートチームが頑張ってくれているのですが、反応は予想以上に悪いみたいです、小栗さんは秋山さん達と話されて如何でしたか?」
「私は、秋山史枝と七人の侍を応援するよ、何といっても廃村復活サポートチームの若者が応援してしている事が大きい。
八人で市長一人分の仕事をすると話していたが、顔の役目と言いながら、秋山女史はすべての分野のポイントを押さえていると感じた、もちろん加藤さん達の支え合っての事だろうが今の市長より何倍も良い、お綺麗だしな。
確かに、有権者には、まだサポート役の株式会社岩崎や岩崎学園大学がこの地で展開している事の意味を理解出来てない人も少なくないだろうし、よそ者と感じている奴もいるだろう。
だが、それは乗り越えられると思う、いや乗り越えさせるよ。」
「分かりました、それでは一気に動きましょう。
来週開かれる、みどりの風設立会見の模様はテレビニュースでも取り上げて貰う手筈になっています。
地元を舞台にした映画やドラマに出演した俳優が応援に来てくれますし、岩崎理事も。
その後は土日中心に市内各所で集会を企画しています、廃村復活サポートチームのメンバーはお祭り好きが多いですしイベントは手慣れたものだそうで。
そこに、作り始めた企業商店連合からも参加して貰う方向で話を進めてみます。
支持政党の有る方々から大きな反発が予想されますが、この町を活気有るものにして行こうと話して、地域の行政は地域の力でと訴えてみます、反論が有るなら集会でという呼びかけも良いですよね。」
「分かった、私もその方向で動くよ、しかし面積だけは広いこの市で過疎地までは伝わらない、票数としては少なくても無視はしたくないと思うが。」
「そこはスーパーの移動販売部門が動いてくれます、利益率が低いのに住民の為に続けている事ですから、岩崎理事に感謝している人も多いと聞いています。
それと他の市長候補と違って八人で分担すれば、市内全域を回る事もさほど大変ではないでしょう。
もっとも秋山さんと他の七人では住民の反応は大きく違いそうですが。」
「今は政治団体を立ち上げました、よろしくお願いします、という形なんだよな。」
「ええ、公職選挙法は色々ややこしいので、選挙までに、やってはいけない事とやっても良い事の一覧を分かり易くまとめます。
この機会に、政治団体みどりの風、廃村復活サポートチーム、まだ名もない企業商店連合、そして岩崎学園大学の学生が一つにまとまれる組織を考えたいですね、もちろん有志の集まりですが。」
「そうだな今なら作れるかもしれない、目標は明確に有る、具体的な構想は?」
「各方面から代表を出して決めて貰いましょう、選挙までには形にしたいです、発案者は小栗さんという事でお願い出来ますか。」
「はは、名を貸すよ、私の名では軽いが、それぐらいが調度良いかもしれない。」
「お願いします。」
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59-明日檜 [岩崎雄太-06]

市民の結集に向けて、まず廃村復活サポートチームのメンバーが中心になり、市民団体明日檜を結成、
政治団体みどりの風設立の手伝いをしていた者だけでなく、幅広い年齢層から多くの参加が有った。
結成総会の日。

「あっ、お久しぶりね、田中さんも参加するの?」
「おお、同窓会以来だね、うちの甥が廃村復活サポートチームのメンバーで色々聞いていたんだ。
みどりの風設立会見の様子もネットで全部見た、甥によると秋山史枝代表は美人なだけでなく、かなり頭の切れる人だそうだよ。」
「ほんと美人よね、まだ三十前なのに落ち着いてるし、彼女達ならこの町を良くしてくれると思うわ、バックには岩崎家もついてるし。」
「そうなんだよな、俺の会社は岩崎学園大学の実習を引き受けたけど、学生代表の谷川くんが来て色々提案をしてくれたんだ。
それを実行に移したら、売り上げは伸びるわ、工場の効率は上がるわという感じでね。
明日檜は市内の企業や個人商店を、彼等とも協力して盛り上げていこうという事だから楽しみだよ。
観光だけの町から脱却しないとだめだろ。」
「そうよね、町全体を盛り上げたいわね、生徒会やってた頃を思い出して頑張るの、生徒会長?」
「はは、昔の話だよ…、君は復活した村へは行った事有る?」
「まだないの、でも番組は欠かさず見てるわ、毎週末は盛り上がってるみたいね。」
「この前、甥に誘われて行って来たんだけど、まさに学園祭という感じで賑わっていてね、周辺の市町村から来てる子も多いそうだ、ああいった施設が有ると若者も地元で就職という気持ちになるんじゃないのかな。
店も若者向けの商品を豊富に取り揃えていて繁盛してた、その賑わいを町中に広げようというのが、市民団体明日檜なんだってさ。」
「盛り上がれば税収も増えて、さらに良くなる、今までは悪循環が続いて人口も減る一方だったから…、ここで流れを変えて、住みたくなる町にしたいわね。」
「政治はみどりの風、経済は明日檜…、まあ経済だけに拘る必要はないな、みどりの風への支援は寄付という事になるのかな。」
「安く済ませると言っても供託金とかも必要よね、市長選の後は市会議員選挙が有るし、県議会や県知事、国会とかも視野に入れて欲しいわ。」
「そうだよな、岩崎さんが何とかしてくれそうだけど、彼ばかりに頼ってちゃだめだな。」
「ねえ、グッズ販売ってどうかな?」
「グッズ?」
「まずは美人市長候補をあしらったタオルとかシャツとか、ただで配ると問題だけど売るのなら大丈夫じゃないかしら。」
「市長候補とうたうとまずくないのかな、公職選挙法って難しいよな、でも秋山史枝と七人の侍だけの表示なら問題ないだろう、良い絵が出来るかな。」
「何にしても後でスタッフの人と相談ね。」
「そうだな、製造を市内の会社に委託、販売は町中の店が協力…、観光客が買いたくなるレベルに出来れば、明日檜の目的とぴったり合うけどな。」
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60-市長 [岩崎雄太-06]

市長選を市民団体明日檜はお祭りの様に盛り上げた。
市長選を通して自分達の住む市を変えようと訴え、住民に対して改革の始まりを宣言。
廃村復活という場が無かったら、若者の結集は有り得ないことだったろう。
一つの取り組みが次の取り組みへと繋がり大きく動いた。
小さな政治団体みどりの風に注目が集まる中、秋山の人柄が市民の心を引き付けた。
その結果、大差をつけて秋山史枝が市長に当選。
当選後すぐさま打ち出した行政改革案が市民に支持され、市会議員選挙もみどりの風が圧勝。
秋山史枝と七人の侍による改革のスタートは広く話題となった。
それによって、市外からもみどりの風や明日檜への入会を希望する者が増え始める。
そんな頃、雄太は秋山達との時間をとった。

「秋山市長、当初の予定より早く進んでいませんか?」
「はい、岩崎さんの御助力のおかげです。」
「いえ、私より、谷川や明日檜メンバーの頑張りでしょう、ところで次世代の養成の方は如何です。」
「みどりの風ではボランティア中心に七人の侍をバックアップするチームを構結成、それ以外に県政の分析研究をしているチームが一つ、三つのチームが手分けして周辺市町村の状況分析をしています。
隣の市に住む有能なメンバーには、二つの市で連携すべく次の市長選への立候補をお願いしています、もちろん支える体制を整えてですが。」
「みどりの風、拡大への目途が立って来たという事ですね。」
「ええ、市長業務を一人で抱え込まないという私達の体制は悪くないと思っています。
法的には私が市長で、何か問題が有ったら私が責任を負います。
でも七人の侍達は行政改革を、市長一人の力だけだったら到底踏み込めないレベルまで踏み込んで進めています、責任を持って。
市長に対して助言するという立場ではなく、担当している分野に関しては実質市長と同等の権利を有していますから、気合も違います。
また市長業務を分担している事で私も勝手に動けません、市長独断型の市政にならない体制は凡人レベルの私達に調度良いかと。
本当は、もっと力の有る方にリーダーとして引っ張って頂くのが理想なのかもしれません。
でも、日本中で政治に係わっている人は大勢いますが、彼等の能力に疑問を感じませんか。
能力の有る無しを選挙の時に有権者が判断する事は難しいです。
政治の事を何も知らない人が有名人という事だけで当選という事例も有る訳ですから。
私は八人がかりで取り組むという事を前提に市長を引き受けました。
一人の力で、市が担ってる業務全般に対して正しい判断を下す事は、私の能力では無理です。
大きな問題は八人で話し合って結論を出しています、どうしても一つにまとまらない時の最終判断は私がしていますが、それはどちらでも良い様な事だったりします。
この形をまずこの地で成功させ、次は隣の市へと、みどりの風代表として進めて行くつもりです。」
「分かりました、株式会社岩崎、林業チームの営業もその地域を次の重点エリアとして動いて貰います。
大学の方は政治経済学部と法学部を立ち上げる方向で進めていますから、協力お願いしますね。」
「はい、学生が増えるのは嬉しい事です、政治について学生達とも語り合いたいです。」
「県政の方はどうですか?」
「国政との兼ね合いも有りますから簡単ではないです、でも県全体が元気のない状態になっているのは事実、何とかしたいです。」
「そろそろ、番組でも政治を取り上げて貰いましょうか、市長が変わってからの実績も出始めていますし、何といってもみどりの風誕生のきっかけはあのテレビ番組だった訳ですから。
冬坂さんにゴーサインを出しても良いですよね。」
「お願いします、事有る毎に撮影に来て下さってますから、映像のストックはすでにかなりな量だと思います。」
「次の知事選までは時間が有ります、狙いますか秋山さん。」
「はい、新たな七人の侍に優秀な人材を集める事が出来れば県知事は私でも行けそうです。
ここの市会議員は定数削減を実現させ半減させます、そこで浮いて来る人材を県政へという話も進めています。
国政に向けては大きな器の有る人が見つかれば、みどりの風として担ぎ上げたいですが。」
「将来を見据えて、谷川には挑戦しないかと勧めているのですが、経営コンサルタント会社を大きくして行く事で社会に貢献したいとの事で。」
「岩崎さんは、さすがに社長業や大学の運営などでお忙しいですものね。」
「大学を高いレベルでスタートさせる事に成功しました、これから優秀な人達がさらに集まる環境を整えて行きたいと考えています、その過程で明日の日本を託せるリーダーと出会えないかと思っています、育てて行く事になるかもしれませんが。」
「先を見据えてという事ですね、私にも出来る限りのお手伝いをさせて下さい。」
「お願いします。」
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