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岩崎雄太-03 ブログトップ

21-拡大 [岩崎雄太-03]

社員が六十名に達した頃、テレビでプロジェクトの立ち上げからの軌跡を紹介するドキュメンタリー番組が放映された、都会を離れたくなった人達のドラマは視聴者の心へも届いた様だ。
その結果。

「社長、林業機械見学をメインとしたイベントへの申し込みが定員に近づきつつ有ります。
社員体験も問い合わせが結構有りまして、予定数を越えるかもしれません。」
「なるべく多く受け入れたいが、予定数を越えた後は次回の募集に応募して頂くしかないね。」
「予定通り社員は百人規模にするのですか?」
「ああ、今後の展開を考えると人手が足りなくなるからね。」
「収支のバランスは良くないですが。」
「基礎固めの段階で投資を躊躇すると結果までの時間が掛かり過ぎる、結果投資が無駄になる事も。
お金の事なら、お爺さまが自分名義の資産をここにつぎ込むおつもりだから心配いらない、簡単に言えば百人ぐらいなら何の問題もないって事さ。
そんな訳だから入社希望の人は積極的に採用して行こう、特に女性はね。」
「その辺りは、ドキュメンタリー番組での人選に気を配った成果か、社員体験は女性からの問い合わせが予想以上に来ています。」
「ネット環境も整ったからね。」
「スーパーマーケットの立ち上げは大丈夫なんですか?」
「一号店は岩崎村から一時間半ぐらいの駅近、村で採れた物を販売し、村の店で販売する物も一括仕入れ、村と都会の中継的な役割を担いつつ、百貨店の機能も持たせる。」
「百貨店の機能ですか?」
「通販に慣れている老人ばかりでもないだろう、そこがメインターゲットになる。
人口が多い訳でもないから店舗規模は大きくしない、食料品や日用品が中心だが、カタログショッピングで電化製品から衣類その他、何でも購入できるビジネスモデルを構築する、ネット通販を補佐する形で利益を上げるという感じと思ってくれれば良い。
長期間売り上げを伸ばすとはならないだろうから次の手も考えなくてはならないがね。」
「ご老人がターゲットという事ですか。」
「ああ、移動販売の基地とも考えている、俺達の村には店を作るが、店まで遠い集落だっていくらでも有る、そこを回る販売網を構築するんだ。」
「利益率はどうですか?」
「直接的な利益は少ない、マイナスになるかもしれないが、この先株式会社岩崎を伸ばすには必要なんだ、林業関係の請負に繋がったり、土地家屋を手放す時の相談に乗ったりとかの可能性も有るだろ。」
「林業は伸ばせるとお考えなのですね。」
「もちろんさ、手に入れた植林地が宝の山になる様、親父も動いていてくれる。
使い勝手や火災の問題、輸入材との価格格差が有って国内産木材の消費は伸び悩んでいたが、この所持ち直して来ているんだ、ここでさらなる需要の掘り起こしが出来れば、日本人は木と共に歩んで来た民族、何とかなるさ。」
「そうですね。」
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22-お見合い [岩崎雄太-03]

林業チームは経験値の上昇と共に作業効率を上げ、社有地に有る森を随分綺麗にした。
それでも手付かずの植林地が残っているのは、社有地が増えている事と請負作業を始めた事による。

「なあ、このまま作業が進んだら現場までの距離はどんどん遠くなるんだよな。」
「まだ随分先の話だがな、でもそうなったら拠点となる集落を確保して行くそうだぞ、社長は強気なんだ。」
「野郎ばかりで合宿生活か?」
「いや、食事洗濯掃除をしてくれるサポートチームの同行も考えて下さっているよ。
まずは作業エリアに住宅確保、そこを拠点に俺達が森で作業、並行して農業などの可能性を探る、森での作業が一段落ついた所で、俺達は次なる拠点へ、空いた住居へは農業チームとかが入って次なる再生ってとこかな。」
「一つの拠点で何年という単位だよな。」
「ああ、この周辺だけで社有地は半端なく増えているからな。」
「まさに大地主、社員体験で来てた人も驚いてたよ、社有地の広さに。」
「どうだ、体験から入社って人はいるのか?」
「入社に前向きな人は多いそうだよ、ドキュメンタリーでマイナス部分も知っての応募だから、それなりに覚悟があると思うな。」
「うちへの増員も有りなのか?」
「ああ、でも製材チーム、木工チーム、農業チーム、ネット通販から…、ほら新しく出来るスーパーマーケットの新システム開発でも人材は必要だからな。」
「あれっ、スーパーは別会社じゃないのか?」
「システム開発をその会社から請け負うという形にするそうだ、ここの住人を増やす為にね。」
「そんな職種の人がここに来るのかな。」
「岩崎村の綺麗な街並みと豊かな自然、ずっと別荘地で暮らしてる感覚だって、佐々木村長は話してたぞ。」
「そうか、独身寮の完成が待ち遠しいな。」
「俺はここが気に入ってるし、竹田さんから養子にならないかとお誘いを受けている、都会で暮らす娘さんが、ここの変化を知って帰って来るかもしれないそうだ、今度、お見合いってのをする事になってる。」
「おお~、そんな進展が有るのか、相手が良い人で上手く行くと良いな。」
「そうだな、町で暮らしてた頃は自分がお見合いをするなんて考えてもなかった、結婚するなら家は立派のを建てて下るそうだ。」
「竹田さんの所は田畑の管理や森の間伐をうちで請け負う事になったんだよな、俺達の会社が出来た事で元からの住人にも変化が起きている訳だな。」
「ああ。」
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23-猿 [岩崎雄太-03]

岩崎村の農場は農機具を使い易くする事を考え、一区画を広目にとった。
土壌改良を行い、数種類の作物からスタート。
リスク分散とスーパーでの販売を視野に入れて単一作物にはしなかった。

「社長、農作物は今の所順調です、大鹿さんの指導の下研修して来た成果が出ています。」
「とは言っても、これから手作業での収穫が始まると大変なのでしょ。」
「作物によりますが、手作業による収穫は林業チームを除いた社員総出で行います、短時間でサクッと終わらせて、後は各自の作業という事なら個人の負担が少ないとなりまして。」
「それなら安心かな、どうしても機械化出来ない作業が社員の負担にならないか心配だったが。
販路は何とかなる、残る問題は…、猿か。」
「ええ、岩崎村ではまだ被害が出てませんが、結構やっかいです。」
「森は間伐をしっかりやって見通しを良くした、村も街灯を多目にし森との境界エリアは住宅地、だがその程度では。」
「猪や鹿は食材として捕獲の予定ですが、さすがに猿は…。」
「あまり景観を損ねる様な対策は取りたくないのだが。」
「ですよね。」
「一度飼ってみるか、観光も視野に入れて、餌は形の悪い作物とかで良い。
森に巨大な檻を作って、いや、動物園でも檻ではなく堀で囲まれて出られなくしていた、そうだな入ったら出られない巨大な罠という形で鹿や猪も捕まえて、そのまま飼育ってどうだろう、増え過ぎたら食材にしたり。」
「やはり猿がネックになると思いますが一度調べてみます、場所と規模はどうしますか?」
「造成が始まった集落の近くに雑木林が有る、あそこを丸ごと、地形的にも人間が見下ろせる形に出来ると思う、餌場を観察出来る所の近くにすれば良いと思うな。」
「分かりました、専門家の意見も聞いてみます。」
「猿対策も継続して調べてくれな。」
「はい。」
「ほんとは猿とも共存出来れば良いのだが。」
「離れた所で餌付けというのはどうでしょう?」
「そうだな、村に来なければ良い、それも検討して…、来週から来るインターンシップの学生にも情報を流してみよう、何か返って来るかもしれない。」
「はい、その方向で動きます。」
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24-学生 [岩崎雄太-03]

学生のインターンシップは、定員十名で始めたがすぐに申し込みが殺到した。
定住となるとハードルが高いが一か月程度暮らすなら観光気分かもしれない。
旅費は自分持ちだが、住居を用意し三食無料の上作業実習の時間はアルバイト料が都会の仕事と同程度の時給で支払われる。
書類審査は厳しく行われた。
目的が明確でない者はすぐ不合格だ。
百名程度に絞り込んだ後は、上位の者から合格者としてスケジュール調整を行い半年先まで決まった。

「雄太、学生は卒業後、社員になってくれそうなの? 新卒枠を十名にしたって聞いてるけど。」
「いや、それは前提としていない、でも良い経験が出来れば色々な形で協力してくれるだろう。
今来ている子の中には卒論のテーマに考えていて、就職は親父の会社を希望してる子もいる、真面目で社員の受けも良いから、人事に話を通して内定を出しても良いと話してたら喜んでいたよ。」
「給料体系を変更してからさらに人気企業になったものね。」
「給料だけでなく労働環境の改善も図っているからな。」
「どう、学生からは何か面白い提案有った?」
「猿による被害の話をしたら、群れの調査とかを関連する学部の学生と連絡を取り合って実行出来ないか相談してくれる事になった。
他は、人が近づくとライトが照らすセンサーライトが使えないかとか、猿の嫌う周波数がないか探してみてはとかね。」
「こういう問題は学生の方が良い提案が出て来るみたいね。」
「そうだな、実際に効果が有るかどうかは分からなくても案が出て来ないとな。」
「他は?」
「お祭りの提案が有った、小規模でも良いからイベントが有ると、インターンシップに参加した学生が遊びに来るきっかけになる、この先ここでの生活を経験した人が増えれば、村を支える一つの力になるのではという事だ。」
「祐樹が第二の故郷を学生にって考えて、早めに始めたインターンシップだけど正解みたいね。」
「ああ、イベントが有れば社員の生活にも変化を付けられる、毎月やっても良いな、始めは身内だけのささやかな物でも。
さらにサークルの合宿所を隣村に確保出来ないかという提案も有った。
宿泊して農業体験や過疎地の問題を研究したり、真面目なサークルも少ないながら存在しているそうだ。
インターンシップではハードルの高い学生でも自費で宿泊費も食費も払ってでも田舎体験をしてみたいと考えている子もいるそうだ、今回参加の三人がまとめ役に立候補してくれたよ。」
「そうね、岩崎村への移住が進むと隣村に余裕が出て来る、大鹿さん指導の下なら安心かな。」
「全員が今後も何らかの形でうちと係わって行きたいと話してくれた、心強いよ。」
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25-社長 [岩崎雄太-03]

一回目のインターンシップが終わりに近づいた頃、雄太は学生達との時間を持った。

「株式会社岩崎はどうでした?」
「初期投資の規模に驚きましたが、これほどまでの投資を決意された根拠…、と言いますか、利益を追求するだけなら他に投資先は有ったと思うのですが。」
「ここは会社の利益というより社員が安心して暮らせる田舎をイメージして、そうだね皆も知っての通り伯父さんの遺産で始めた事業なんだけど、その伯父さんは社会のバランスが崩れ過ぎていると話していたんだ。
君達はそれに気付いているから詳しくは話さないが、まあバランスの崩れた社会で廃村になった所を復活させるビジネスモデルを構築出来ないかと考えてね。」
「ビジネスモデルと言っても他の人には真似出来ないし、真似しようとも思わないでしょう。」
「そうだね、でも会社の規模が大きくなったら、人が見捨てた土地でもビジネスが成り立つと思って貰えないだろうか。」
「過疎地に可能性を感じさせる事が目的なのですか?」
「それも有るよ、今までの過疎化対策と言えばお役所仕事だろ、たとえ億の予算がついた所でマーケティングも考えられない様な職員の悪あがき程度にしかならない、能力の高い人がいても限られた予算で何とかなる様な問題でもない。
だが、充分な初期投資をして環境を整えれば、安心して働ける環境を作る事は可能なんだ。
その中で収益を上げて行けば会社として充分成り立つのさ。」
「しかし、これだけの投資を回収するのはビジネス的にはきつく有りませんか?」
「きつい? 岩崎家をなめて貰っては困るな、何かしらのトラブルが有っても今の社員全員養えるレベル、中途半端な投資ではないからきちんと収益を上げられると考えているよ。
もっとも、利益は次への投資となるから当分の間赤字企業、だが借金はない、岩崎家の財産を少し減らす事にはなるけどね。」
「それが、このエリアに経済効果をもたらすという事でしょうか?」
「その通りさ、造成工事などはこの経済圏の業者に頼んで来たからね。」
「実は…、うちの教授は大金持ちの道楽だと話していたのですが…。」
「そう思われても仕方ないが、親父もお爺さまも金持ちの挑戦と考えているんだ。
金持ちにしかできない大きな社会貢献を、過疎化を食い止め森を守る形で出来ないかとね。」
「挑戦というのは?」
「俺達には多くの社員やその家族に対して責任が有る。」
「あっ、その視点は…、見落としてたというか…、社長と言うのは大変なのですね。」
「わが国の経済環境は決して安定したものではない、だから親父の会社も色々備えて来た訳だ。」
「そうですね、企業の内部留保など疑問に感じてましたが…、立場が違えば…。」
「だが、親父もお爺さまも身内の安定に走り過ぎていたと気付いて下さったのだよ。」
「どういう事です?」
「守りの姿勢が内需拡大の妨げになっていたと気付いて下さったのだ。」
「あっ、もしかして、お父上の会社での給与体系見直しは社長の発案だったのですか?」
「まあね、子どもを育て易い環境を作り出せば、良い人材も得やすくなる。
非正規だった人も極力正社員にという方向、成功すれば内需拡大にささやかながら貢献できるでしょ。
ここの社員だってきちんとした給料を支払ってるから安心して結婚を考える事が出来るのさ。」
「正直、社長のお話を伺うまで誤解をしていたかもしれません、お金持ちって持ち物や総資産を自慢したり、ブラック企業で人の事を考えない社長がいたり。」
「あんな人達は成金だからね、うちみたいな歴史の有る家柄とは違うのさ。」
「社長、株式会社岩崎は来年も新卒を雇う予定有りますか。」
「ああ、若者が移住して来ないと続かないからね。」
「私、ここで働きたいです。」
「君の評判は聞いてるよ、内定という事で良いかな。」
「有難う御座います、就職までに身に付けて置くべきスキルは何でしょう?」
「そうだね…、今回の体験を思い出しながら、自分がここでどんな役割を担うのが会社にとってプラスになるか考えたら答えが出て来ないかな。
すぐに思いつかなかったら、メールで先輩に相談しても良いし、また遊びに来たらいい。
事前研修という形も有りだから交通費も会社で負担する、佐藤副社長と相談してね。」
「有難う御座います、よろしくお願いします。」
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26-サークル [岩崎雄太-03]

インターンシップに参加した学生達は雄太の予想以上に動いてくれた。

「明香、学生達はサポートサークルを作ってくれたよ。」
「聞いたわ、一回目から三回目のインターンシップ参加者が連絡を取り合って、目的はこのプロジェクトの拡大を早める事、私達もそれに応えないとね。」
「ああ、優秀な学生を選んだが、想定以上だ、ボランティアの力を借りるのは邪道だと考えていたが、彼等に言わせると、過疎の問題に対して何かしたいと考えていても何も出来なかった人に光を与えてくれたと、だから学生サポーターに使う費用は最低限にして、その分をプロジェクトの拡大予算へと話してくれた。」
「心強いわね。」
「彼等からは要望も来ている。」
「どんな?」
「廃村を一つ、学生の手で蘇らせてみたいとかね。」
「どこかの集落を彼等に託すの?」
「きちんとした事業計画を出す事が条件だが、隣の県に貰って欲しいと打診を受けてる廃村が有る、そこを任せてみても良いかな、先々の事は相談だが、ここよりは都会から通いやすいんだ。」
「それでも、始めは色々大変よね。」
「そこは社員がサポートしてくれるだろう、学生主体の事業は初めから多額の初期投資とはしない、彼等にプレッシャーを与えかねないからね、但し人を雇う事になったらうちの社員扱いだな。」
「人件費は大丈夫なの?」
「ああ、都会で稼いで過疎地に投資、この流れは維持出来そうだ、社員の賛成も得られて俺達の会社が株式会社岩崎の株主になるからね。」
「一生配当は得られないのでしょう?」
「まあ実質寄付、だが何に使われているかはしっかりチェック出来る、というよりみんな応援してくれているよ、建設中のコテージを岩崎村支社として、村での生活を体験してみるとかね、ネット環境が整ってるから仕事に支障はないだろ。」
「そうね…、問題は収入の差かしら、株式会社岩崎の従業員はお父様の会社の給与体系に準ずる形だから、それなりの月給だけど、専門職集団の方は軽く二三倍の給料でしょ。」
「さらに株主企業の従業員でも有る、でもまだ定住を考えてる訳でもないから試すぐらいは大丈夫だろう。」
「そうね、社長は同じでも全く違う会社の従業員が仲良くしてくれたら嬉しいけど。」
「その間を学生達が取り持ってくれるかもだな、新たな取り組みに関しては積極的に関わって行きたいと学生代表から言われているからね。」
「学生達は具体的に何を?」
「人手が欲しい時に学生バイト募集の窓口になってくれる、法的に問題の無い形を検討中との事だ、田舎体験とセットでと考えてくれてる。」
「ほんとは社員で固めるべきでしょうけど、体験とセットに出来るのならバイトという形も良いわね。」
「農学部の学生に協力を求めて、実験農場を考えてくれる学生もいる、ここの気候に合って利益率の高い作物を模索する手伝いをしてくれるよ。
そのままブランド化してマーケティングまで考えたい、という声も。
彼等にとっては実習だね。」
「優秀な子がいたら、引き抜くの?」
「それも有りだな、なんなら新規事業を立ち上げて貰うのも有りだろう。」
「意欲的な学生なら乗って来るかもね。」
「過疎の問題とも向き合える真面目な学生ばかりだからな。」
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27-学校 [岩崎雄太-03]

私立岩崎学園の設立発表は世間を驚かせた。
校舎の場所が不便な所という事だけでなく、将来的には幼稚園から大学までの設置を計画しているからだ。
学園の認可は実験的カリキュラムを取り入れ特色を出すという事で担当者はかなり苦労した。
最後は雄太の祖父が力を発揮し、過疎地の私立学校に関する特例法が国会を通った。
支援をしている学生達は。

「過疎地に私立学校を作るなんて普通じゃ考えられなかっただろうな、公立でも廃校の話しか聞いた事ないぞ。」
「過疎地に暮らす子ども達の可能性を広げるという事で随分柔軟な特例法だよな。」
「その柔軟さを生かした学校にしたいわね。」
「高校は、普通科、農業科、林業科、特進クラス、起業家クラスとかが候補に挙がってるけど募集は一括三十名、教師の目途はついてるそうだけど、俺達でフォローしてあげたいな。」
「ええ、親が社員ではない寮生は何かしらの問題を抱えて入学してくる可能性も有るのよね。」
「その前に、応募者数が全く読めないのだが。」
「そこは、君等の大学名を表に出せば安心じゃないのか?」
「バックアップは考えてるけど、そういうのはあまり好きじゃないわ。」
「一期生は定員割れ覚悟だそうだが応募が多かった時の方が問題じゃないかな、社員の子弟は落とせないだろ。」
「寮生枠二十名でスタートだそうよ、自宅から通学できる人は簡単な試験で全員合格ね。」
「場合によっては学力差が半端なく大きくなりそうだな、個別指導的な取り組みを準備中とは聞いてるが教える側は大変そうだ。」
「確かにな、始めの内は他作業兼務での非常勤講師が多目だからな。」
「全教科揃うのか?」
「何とかなりそう、通信制関連も検討しているの、教師が揃わなかった時の保険的な意味だけでなく、ネットを使って学習のバリエーションを広げる意味でね。」
「不登校の子とかも受け入れるのか?」
「高校に関しては入試や編入試験をクリアすれば問題ないけど、寮暮らしはハードルが高いと思うわ。
でも、小中学生に関しては、どんなハンディを持った子で有っても親が株式会社岩崎の社員になったので有れば全力で応援する体制を作ると、岩崎社長は話して下さった。」
「養う…、か。」
「ああ、社長として社員の家族まで養って行く覚悟だと話してみえたな、寮生も親の経済状態に応じて奨学金を給付して行くとの事だ。」
「岩崎家の本気という事なんだな。」
「昔なら領主さまといったところかしら。」
「名君だな、都会で稼いだ金を田舎へ、今までのお金持ちとは逆の流れを作ってる訳だろ。」
「良くして下さるお殿様の為にも岩崎村を盛り立てて行きたいと、村人の皆さんも話してみえたわ。」
「普通の会社で、そこまでの気持ちになるものだろうか。」
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28-宿泊 [岩崎雄太-03]

山でのスポーツとして色々な案が出た。
その中でモトクロスを優先したのは猿対策も考えての事。
他にもマウンテンバイク向けのコースやクロスカントリーのコース、森林浴向けのコースなども順次整備の予定、それぞれが交差する事なく独立した形を計画している。
それぞれの利用客を増やすのは簡単ではないだろうが、施設が有れば宿泊客が期待できる。

「雄太、モトクロスのお客さんはどうだった?」
「コースは気に入って頂けた様だ、もっとも今回来て下さってる方々の要望に沿って整備したのだから当たり前だな、コテージの方も予算に合わせて色々なサービス体制を組んである事が喜ばれた、テント持参で三食自炊という形から、コテージで三食付きまで選べるというのは正解だそうだ。
視察を兼ねて宿泊して下さる方々にも気に入って頂けてる様だからね。」
「コテージの稼働率がこんなに高くなるとは思ってなかったわ、最新型の農機具や林業機械を導入した事が大きな効果をもたらすとはね。」
「ああ、自治体の視察は多少意識していたが、農機具メーカーが大きく協力してくれたのは大きい、彼等にとっては新しい農業をPRする良いチャンスなのだろう、新しい村へ視察、見学、体験という形で人の流れ作ってくれている、農村のイメージを一新した事が思わぬ形でプラスになった、でもこれがずっと続くとは考えない方が良いだろうね。」
「ええ、でも今の勢いなら、宿泊客が減ったら社宅への転用も有りでしょ。」
「それでも宿泊客があれば職種のバリエーションが増やせる、社員の子ども達が将来ここで仕事を見つける場は多いに越した事はないよ。」
「そうね、農業や林業をやりたくない子にも村での可能性を…、あっ、コテージ一つを専門家集団の岩崎村支社にする話は順調に進んでいるそうよ、交代でここでの生活を体験する方向で。」
「それは良いな、うちの連中は独身者が多いから良いきっかけになるかもしれない、在宅で働いてる人も何人かいるぐらいだから仕事に関して大した問題もないだろう。」
「趣味や遊びが都会志向な人以外には、ここでの生活も、もうかなりハードルが下がってると思うわね。」
「後は病院か…、どの程度人口を増やせば病院として採算がとれるのか…、老人向けの施設と併用してか、お医者さんが住みたくなる環境を作れそうにないと考えていたが、この状況ならもう一度考え直してみようか?」
「そうね、学校のスタートに合わせて…、せめて小さな診療所ぐらいは必要じゃないかしら。」
「人脈がな~。」
「学生達とも相談してみようか。」
「そうだな、専門家との繋ぎを随分してくれたおかげで大学関係者が大勢係わってくれた。」
「明日にでも相談してみるわ。」
「ああ、頼むよ。」
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29-取材 [岩崎雄太-03]

ドキュメンタリー番組が放映されてからテレビや雑誌の取材を受ける事が多くなった。
相手の要望に応じて対応しているが、今回のテレビ取材は村長が対応している。

「岩崎村というのは正式名称ではないのですね。」
「はい、私達が勝手に呼んでるだけです、私の村長という肩書も公のものでは有りません。」
「やはり株式会社岩崎からとったのですか?」
「そうですね、ここは社長を含めた岩崎家三代の挑戦ですから。」
「かなりの額がこの村の為に使われているとお聞きしましたが。」
「ええ、朽ち果てた廃屋の撤去、昔からの道路は全部潰して区画整理をしました。 
電気、水道、通信の整備、ガスはプロパンですが、近い将来都市ガスに出来ないか検討中です、住居は今でも充分快適ですが。
畑は土壌改良し、最新型の農業機械も導入しましたが、これからメインで取り組む作物に応じてさらなる設備投資を考えています。
林業も最新型の林業機械を導入、村周辺の植林地は随分綺麗になりました。
後はモトクロスコースの整備、さらにクロスカントリーコースや森林浴の出来る遊歩道も整備中です。
洋蘭の生産温室に続いて、観光客向けの温室も建設中、宿泊客用のコテージも稼働していますが今後増やして行く予定です。
岩崎学園は間もなく開校、その他にも色々、さて幾ら掛かったでしょう?」
「想像できませんね、でもその投資は回収出来るのでしょうか?」
「二十年三十年と掛かるでしょうが、社長は拡大を考えていますから。」
「ビジネスとしてどうなのですか?」
「社長はビジネスというより、お金持ちが真剣に取り組めば過疎地の一つぐらい軽く再生出来るという事を示したいと話しています。
過疎化は、都市部への人口集中を推し進めてきた企業にも責任が有ると考えています。
貧富の二極化により内需が拡大しない現状も労働環境を悪化させた企業に問題は有りませんか?
株式会社岩崎は、田舎に安定した仕事の場を築き上げる事を目的としています。
今の私達は岩崎社長に養って頂いている状態ですが、岩崎家の挑戦を成功させようと、社員、村民全員で頑張っている所です。」
「岩崎家の挑戦と言うのはどういう事ですか?」
「誰も住みたがらない様な土地を再開発して、都会の生活に疲れた人達が人間らしく暮らせる村を、どこまで大きく出来るか、そして、無駄に資産を貯め込んでるお金持ちが、社会のバランスを取り戻す事を考えるきっかけになればという事です。」
「その思いが、この別荘地の様な環境を生み出したのですね。」
「ええ、もう少し村の形が整ったら資産の規模を自慢してる方々に、岩崎家の挑戦を見て頂きたいです。」
「なるほど、それでは次に…。」
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30-隣村 [岩崎雄太-03]

岩崎村の整備と並行して隣村も建物を増やしつつ有る。
ただ同然で手に入れた土地には各種機械の整備工場や倉庫などが建てられた。
観光客の目に触れさせたく物はこの村にという事だ。
新しい建物は村から廃れた雰囲気をなくした。
そして村では、都会から実家に戻り株式会社岩崎に入社する者や社員とお見合い結婚する者も。
独身の社員はほとんどがこの村で暮らしている。
岩崎村に建てた独身寮は宿泊客向けに変更したためだが、それは社員の意思による所。
彼等はインターンシップや農村体験でやって来る学生と共に、村人と交流する事が自分達の役割だと考えている。

「町へ出たついでに買って来た酒だがどうじゃ?」
「美味しいですね、何時も有難う御座います、ご自身はあまりお飲みにならないのに。」
「はは、気にするな、遠くの親戚より近くの他人、金は墓まで持って行けんからな。
それよりな、久しぶりに蔵の整理をしとったら太鼓が出てきてな。」
「太鼓ですか。」
「昔、祭りの時に使ってた奴じゃよ。」
「そうか、俺達はイベントとして祭りをやってるけど、昔ながらのお祭りが有るのですね、次は何時なんです?」
「年寄りばかりになっちまって、今はやっとらんよ。」
「残念です、私達の岩崎村は伝統がないから…。」
「源蔵さん、俺達で復活させるのって有りですか?」
「そりゃあまあ…、だが、伝統は作ればええじゃろ、昔のを土台にしても良いが…、娯楽の少なかった頃は祭りが男と女の出会いの場だった、儂も婆さんの踊る姿に惚れてな。」
「おお~。」
「毎月やってるイベントも楽しいけど、一歩踏み込んで伝統芸能を作るって面白そうだわ。」
「そうだな…、この地を治めている殿さま、岩崎雄太に感謝の気持ちを伝える形で始まりましたとか。」
「何年続けば伝統芸能になるんだろう?」
「細かい事は気にしないの、細かい事気にしてると大物にはなれないわよ。」
「いえ、小者で充分です。」
「とりあえず、伝統芸能っぽいのを考えてみるか?」
「そうね、源蔵さん、参考になる物有りますか?」
「ああ、明日にでも蔵を見せてやろう。」
「うおっ、お宝発見となるのか!」
「うちに大した物はないぞ。」
「それでも楽しそうです、明日は仕事も休みなので集合は何時にします?」
「十一時だな、共同菜園の作業が有るのだろが、昼飯は焼肉でどうじゃ?」
「はい、掃除に草むしり何でもやります!」
「じゃあそっちは健ちゃんに任せて私達はお祭りの計画を立てましょう。」
「え~!」
「心配するな、俺が手伝ってやるよ、五分くらい。」
「せめて三十分…。」

翌日は、草むしりや掃除を皆で協力して終わらせ、蔵を見せて貰って、お祭りの相談となった。
移住して来た連中は確実に村人となりつつ有る。
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