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81-受け入れ [キング-09]

五人の孤児たちはひとまず城の一室に落ち着いた。

「香は彼等の言葉が分かっているのか?」
「そうでもなくて、ただ何を伝えたいのか感じてるそうよ、それに対して笑顔で答えてると話してたけど。」
「あの子にそんな能力が有るとはな、でも嘘発見器と同等の能力を備える三之助の子なら有り得なくもないか。」
「尊、彼等のコロニーはどうだった?」
「ひどかったです、畑も貧弱で、テレビ電話、端末も翻訳機も見つかりませんでした、一つの居住コロニーだけで自給自足を試みてきたのが失敗に終わったのではないでしょうか、鶏を見かけないのに卵の殻が有りましたから、ここからマリアさまが持って行った物かもしれません、後は翔が調べています。」
「絶望したのかな、怪我をした子がいるという事は、無理心中を図ったのかもしれない、子どもを傷つける事は重罪だと聞いてるから、子どもに傷を負わせた時点で罰を受けて即死という可能性も否定できないだろう、遺体はすぐに消滅するらしいからな。」
「問題は残された子ども達だけど、言葉が通じないのは大きなハンディね。」
「愛が彼等の言葉を分析しています、それを元に共通語を教える準備を始めます。」
「そうか、望と香は五人に付き添っている、怪我をしてる子もいるから、まずは東城家で担当だな、キングにも伝えてくれ、彼等の保護は我が家が担当すると。」
「はい、ただマリアさまから極力短期間で城から移す様に指示が有りました、ここで暮らす事は彼等にとってマイナスになるそうです。」
「そうか、城は特別な場所だからな、言語に関する話は相談しなかったのか?」
「僕らで解決出来るだろうと言われました、翻訳機に新たな言語を追加する必要はないと。」
「そうか、子ども達の年齢を考えると、その方が早いかもな、今後について何か考えは有るのか?」
「まずは城下町の子どもの家で暮らして貰い、僕らが交代で面倒見ます、三歳から六歳なので何とかなると思います、お泊りに来る子達も協力してくれるでしょう。」
「大人は必要ないかな?」
「今の所は大丈夫だと思いますが、何かあったらお願いします。」
「分かった、愛、どうした?」
「翔が録画してくれた映像から、言葉が有る程度把握出来ました、城の子八人で確認したいと思いますがどうでしょう。」
「それなら集まった方が良いね、三郎おじさん、子どもを全員彼等の部屋に集めようと思うけど良いですか?」
「問題ないだろう。」
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82-交流 [キング-09]

城の大人達も集まり、モニターを通して子ども達の観察をする事にした。

「語彙が少ないから、愛の解説でなんとなく分かるわね。」
「香が修正してる、もう会話し始めてたのかな。」
「まずは名前ね、自己紹介の意味は通じたみたい。」

「呆れるほど早く言葉を理解して行くな、あっ、食事は?」
「隣の部屋に用意してあるわよ。」
「尊が食事の指示を出したわね。」
「こういう指示は尊なんだな。」
「今回の事もマリアはまず尊に伝えた、翔達は納得してるのかな。」
「大丈夫、そういった分担もマリアさまと相談したそうよ。」
「まあ特に立場の違いが有る訳でもないか。」
「向こうの大きい子も運ぶの手伝ってるな。」
「良いね、香は小さい子から離れずにいる、それだけで落ち着かせているのか。」
「用意が出来たな、いただきますは、手を合わせた、アジア系だと思うがどこの国かさぱっぱり分からない。」
「すぐに和の国の国民になるだろう。」
「日本語も教えるのか。」
「どうするかは子ども達に任せよう。」
「おいしそうに食べてるな、食べ物の名前も教え合ってる。」
「孤児になったのだからカウンセリングの必要はないかしら。」
「望達と相談するわ、でも望と香に任せておけば大丈夫かもしれないわね。」
「だな、もうすっかりお母さんをやってないか。」
「はは、自分達が三之助にして貰って来た事をちゃんとやってる。」
「今回こういう出会いが有ったという事は今後も有るという事かな。」
「可能性は否定できないわね、国家を成立させる事が出来なかったコロニーは他にも有るでしょう。」
「子どもが成長してからだと厄介かも。」
「まあ、マリアさま次第だからな。」
「こういう形で子どもが増えて行くとなると住居の建設計画も見直しか。」
「いや、翔が彼等のコロニーを住み易く作り直して、子ども専用の居住スペースにするそうだ。
子どもが増えて手狭になってるコロニーからも交代で夜を過ごしたり、使い方は城下町の子どもの家と似た様なものにするそうだが、ゲートも子どもの家の中に付け替える予定だとか。」
「なるほど、それは良いな、親がいない寂しさを紛らわせてくれるだろう。」
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83-プリンス [キング-09]

五人の新しい友達は世界中の子に歓迎された。
もちろん、尊達の働きかけ有っての事だ。

「あの子達も共通語に馴染んできたわね。」
「そりゃま、子ども同士で遊ぶ時は共通語になるからな。」
「いきなり大勢の子と出会うのは大変だろうと、少しずつ引き合わせて来たが問題は有りそうか?」
「今の所は大丈夫、でも、ずっと見守っていて上げないとね。」
「孤児という事を考えて何人かが育ての親を名乗り出てくれてる、城の子達はまだ結論を出せていないみたいだけど。」
「答えが一つじゃないから難しいって言ってたな、でも早く落ち着かせたいとも話してくれたから我々は様子見で良いだろう。」
「いや、状況が少し変わった。」
「キング、何か有ったのか?」
「先ほどマリアと話をしたのだが…、城の大人も八人の子ども達も全員一緒の方が良い、すぐ呼べるか?」
「ちょっと待って。」

ほどなくして十六人が集合した。

「忙しい所すまない、マリアから今後についての相談が有った。
まず、マリア達は先日孤児達と出会った様なコロニーをまだ幾つも持っているそうだ。
この世界の一員となる要件を満たしていない国もだ。
だが、長子が七歳になるまでに私達の世界と繋ぐという条件も定められているという。
という事でこれから子どもが増える、ただ、大人に関してはこちらで決めて欲しいとの事だ。
和の国へ子どもだけ移動か、親も一緒に居住コロニーをここへ接続かどちらでも良いと言われた、ただ大人も一緒だとかなり人口が増える事になるそうだ。」
「子どもだけでは可哀そうだわ、あの子達も口には出さないけど、親子でいる人達を見て寂しそうだもの。」
「望の言う通りだよ、人口が増えても大丈夫さ、今までの余剰生産分が減っても食べてる人は同じだと思う、マリアさまが送った先で食べてるか、ここで食べてるかという事でしょ。」
「人道的見地から考えても、翔に反対できないな。」
「聡達が早く六歳になってくれないかしら、急に人が増えたら大変そうじゃない?」
「はは、そいつは流石に無理だろう、でももうすぐ五歳だ、お手伝いはしてくれるんじゃないのか。」
「うん、そうね。」
「この先のスケジュールはこちらの都合に合わせてくれるそうだ、その管理をマリアは誠にお願いしたいと話してたのだが頼めるか、誠。」
「うん…、じゃなかった、はい。」
「この事はもちろん国連の場でも相談するが、このメンバーが中心にならざるを得ないだろう。」
「これから出会う子ども達の面倒は望と香中心にお願いしたいが、良いかな。」
「はい。」
「もちろん皆でカバーするからな。」
「なら私は調整役になるわ、誠が動き易い様に。」
「愛がそっちを担当してくれるなら、僕はコロニーの環境改善を、昇、手伝ってくれるか。」
「うん、兄ちゃん、がんばるよ。」
「巴は僕と大人の相手をしよう、大丈夫か。」
「はい、お兄さま。」
「尊、巴の能力を考えての事か?」
「はい、サンフランシスコの時も彼等の緊張をほぐす手伝いを僕らで出来ていたと思います、巴が加わってくれたら作業が早くなると思います。」
「大人相手が一番大変だからな、二人にはこの際プリンス、プリンセスという称号を授けても良くないか、肩書を有難がる輩には効果的だろ。」
「二人だけというのは嫌です、僕ら八人…、いえ夢や聡達僕らの妹、弟全員、同じ様にして欲しいです。」
「神の子という名称はこの世界では当たり前になっている、だがこれから出会う人達にとっては、すぐには馴染めないだろう、う~ん…、八人とも貴族階級の子弟という事にするか?」
「そうね、国連メンバーとも相談してその方向で良いと思うわ、この世界は私達の知ってる民主主義とは違う物だから。」
「城の子に限っては反発もないだろう、ほかの国のリーダーが真似したら顰蹙を買うだろうがね。」
「特権階級として私達の存在も強調するのか?」
「新たに出会う大人達に向けてと話せば反発する人はそんなにいないと思うわ。」
「貴族となって特権を振りかざしたい訳じゃないが、この世界は民主主義とは違う、国民がどういった反応を示すか興味は有るな、絶対王政だって王が国民の幸せを真に願っていたら違ったものになっていたと思うし。」
「翔はどう思う? キングの息子だから尊はプリンスという事になるけど。」
「何か問題が有るのですか? 尊は僕らのリーダーですよ、城の子皆でこの世界を守って行くその代表です、僕らにはそれぞれ役割が有り、尊は最終判断を担当して貰ってます、今まで尊の判断は間違っていません。」
「そんな風に考えていたとはね、これからはもっと真面目な話をする機会を増やさないといけないわね。」

確かにそうだ、彼等の本心は、その天才性故に聞きにくくなっていたと思う。
これから共に世界の為に働く過程で、また違った親子関係が構築されるのかもしれない。
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84-スケジュール [キング-09]

新たなコロニーの受け入れ作業は余裕が有るのかどうか微妙な状況だ。
単独の居住コロニーが六十七、子どもの人数が二十名に満たない国が八カ国。
七歳に近い子はいないので時間的な余裕は有るとはいえ、先回の様な孤児を生み出す様な事態は避けたい。
これからの受け入れ作業はその規模も状況も我々にとって大きな試練となるだろう。
試練に先立って、マリアは各コロニーの監視カメラ映像を見れる様にしてくれた。
それを元にコンタクトの優先順位を決めている。

「子ども達の作ったスケジュールはどうだ?」
「妥当な所ね、映像からの判断で環境の悪い所を優先だけど、まずは二つの楽そうなコロニーで手順を確認してから、国の方は今までの経験を生かして、テレビ電話を介してのコンタクトは八カ国同時にスタート、各国のリーダー達と協力して行けば大丈夫でしょう。」
「国の方は大人の数が今までの国よりかなり少ない、サンフランシスコの時よりは楽そうだな。」
「それでも八回続くのだから急ぐと国民の負担も大きくなる、並行して単独居住コロニーにも対応しなくてはならないしね。」
「問題は言語だな、国家を形成出来た連中には翻訳機が対応してくれそうだが、単独コロニーは難しそうだ、子ども達にコンタクトを任せるしかないのか…、先回と違って大人相手だ、難しくないか?」
「あっ、キングからだ。」
『セブン、一花、ロック、試験的に一つの単独コロニーとコンタクトを取ってみようと思う、集まってくれるか?』
「分かった、すぐ行くよ。」

城の十六人が集まった。

「今回の問題点は向こうに端末どころかテレビ電話さえも存在しないという事と言葉が通じないという事だ、愛が映像から言語の解析を進めてくれてはいるが、相手は大人だ先回の様には行かないと思う、そこで今回の作戦だ、尊から説明して貰う。」
「はい、今回一番重要になるのはファーストコンタクトです、向こうの大人がこちらの人と対面してしまうと記憶の蘇りが何の予備知識もないまま始まってしまいます、出来れば時間を掛けて準備したいのですが、時間を掛けていては残ってるコロニーを長期間放置する事になってしまいます。
今回は翔中心に作成して貰ってる映像を三日間見て貰ったら、会いに行こうと考えています。
その第一段階として、まずモニターをうさぎに括りつけてゲートを越えさせようと考えています。
そのモニターを通して相手の言語を解析する事も可能ですが、単独居住コロニーに関しては共通語を覚えて貰おうと考えています。
向こうの子ども達にはゲートを行き来して貰って、こちらの安全性や豊かさをアピールして貰います。
今回の記録映像は編集して次回以降、教育用映像として活用します。
向こうへは、僕と巴で護衛には各国から六人にお願いしようと思っています。」
「確かに相手の大人は六人だから護衛の数は多過ぎず良いかもしれないが、尊と巴は充分安全が確保されてからの方が良くないか。」
「護衛も必要ないと思っていますが、念のためです。」
「巴は大丈夫なのか。」
「はい、お兄さまと一緒ですから。」
「尊、我々大人の役割は?」
「まず作戦全体を細部まで検討して行く手伝いをお願いします、実行は極力僕らで進めます、大人は八カ国との交渉に力を注いで欲しいと考えています。」
「お前たちに無理はさせたくないが、彼等の映像を見せられてはな、細かい打ち合わせを始めるか。」
「はい。」

子どもを含めての事、安全に留意し十六人で一つずつ解決して経験を深め成長の糧としたいのが本音だ。
麗子は二人の子を未知のコロニーへ行かせる事に反対したが、不安な生活を送っている千人以上の人達が一刻も早く平穏な暮らしを送れる様にとの、子ども達の思いを聞いては妥協せざるを得なかった。
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85-コンタクト [キング-09]

コロニーとのコンタクトに向けて準備が整った。
作戦開始の時は世界中の人が注目、翔が情報映像を流してきたからだ。
直接係わらない者にとっては良い娯楽になるのだろうが、映像を通してこれから仲間が増えて行くと実感して欲しい。
城の大人達は非常時に備え待機しつつ子ども達を見守っている。

「一つ目のアクションは先方にモニターを届ける事だけど。」
「まずは、いきなり現れたゲートにご注目有れという予定だが、さあどうだ。」
「普通に慌ててるけど、大人六人子ども七人、全員集まって来たわね、先方の管理者はコンタクトをやめて久しいそうだから、突然のイベントにはビックリでしょうね。」
「モニターを背負ってうさぎがゲートを越えたな。」
「しかし、どうしてうさぎなんだ?」
「犬が吠えたら子どもが怯える、猫が引掻いたら、機械仕掛けより生物の方が警戒されにくいとか考えたそうだけど、首のヒモをどう判断するかね。」
「おっ、モニターを手にしてくれたぞ。」
「翔が編集した映像を不思議そうに見てるわね、過去にはテレビを見てたでしょうに。」
「まあ、久しぶりで記憶の整理をしてるんじゃないか、知らない言葉だし。」
「子どもが二人うさぎに注目してない?」
「大人達がモニターに気を取られてる間に子どもをって…、こんな釣り上げるみたいな感覚を尊達が好きになって欲しくないわね。」
「だな、でも今は作戦の成功を祈ろうか。」
「ゲートから奥の手の子犬か、良いタイミングだ。」
「はい、お子様二人…、じゃなく五人一気にゲットか、残る二人は大人に抱かれてるから、第一段階は成功ね。」
「五人の子ども達は香達とご対面か。」
「翔の作った映像はなかなかだな、言語の問題は有るが向こうに伝わってるみたいだ。」
「そうね、でも子ども達がいなくなった事に気付いたみたいよ。」
「メイン画面が子ども達の映像に切り替わった、良いタイミングだ。」
「ここで誘拐と思われたらやっかいよね。」
「今回の作戦、一つ目の大きな山だな。」
「お菓子を喜んで食べてる、望の身振り手振りは通じてる様ね、カメラに向かって手を振ってくれた。」
「大きい子二人にミッションの説明を始めたな、どうだ…。」

「親に上げるお菓子を持ってゲートを越えてくれたわね。」
「さて次の画像にはどう反応する?」
「おいしそうな食材を揃えさせて頂きましたよ。」
「ちゃんと子どもが説明してるな、サブ画面の調整も翔がやってるのか。」
「あの子にとっては簡単な事でしょう。」
「子ども達がゲートを越えたわ、大人は通れずがっかりみたいね。」
「今度は指定された食材を届けて貰う訳ね、選んで貰った食材から差し入れのメニューを検討だけど。」
「映像での説明がうまく行って欲しいわね、共通語に早く馴染んで頂かないと、この後八つの言語が翻訳機に加わる、それ以上にこの世界に言語が増えたら大変だわ。」

コンタクトは先方の素直な子ども達のおかげで順調に進んでいる。
まずはモニターを通してこちらの暮らしぶりを紹介しつつ、尊と巴がプリンス、プリンセスと分かる様に、まあ二人が国民の間を歩く映像を見れば一目瞭然だろうが。
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86-訪問 [キング-09]

言葉が通じない相手に、記憶が蘇る過程をどう説明するか、悩んだ末に翔はショートドラマ仕立てで何本もの映像を用意する事にした。
台本は大人達が経験を元に書き、演技は各国の有志による。
言語は彼等にとって耳慣れない共通語、言葉では伝わらないというハンディが有るが俳優達は熱演してくれた。

「なぜこんなドラマを見せているのか分かってくれれば良いけど、愛、どうだろう。」
「ただの娯楽番組を見せてるとは普通考えないわよ、翔、それよりモニター越しでない生の巴に向こうの大人達がどう反応するか興味が有るわ、香が子ども達を引き付ける力の強さは、もう疑いようが無いけど、大人は事情が違うと思うの、この世界では私達が特別な存在だと知られている、でも彼等は知らない、その状況で巴にどんな態度をとるかによって今後の作業が随分違って来ると思うわ。」
「確かにそうだ、何とか最後のコロニーまで半年以内に終わらせたいよな。」
「あらっ、尊からだわ。」
『愛、翔、予定通りに行くよ、訪問の最終調整に入って貰えるか。』
「分かった、リハーサルは何度もして有る、ゲートの部屋まですぐ行くよ。」

今回のゲートは城下町の一軒家に接続して有る、そこに関係者が集合した。
先方の子ども達は香達に会えるのが嬉しくて、コンタクトを取り始めてからこちらで過ごす時間が長い、今も楽しそうだ。

「護衛、しっかり頼むな。」
「はいキング、任せて下さい。」
「静子さんは小柄で可愛いから、相手に余計なプレッシャーを与えないと思っています。」
「はは、尊さまったら。」
「おい、静子、浮かれるなよ。」
「分かってるわよ、相手にプレッシャーを与え過ぎそうな親衛隊長の出番が無いように気を付けるわ。」
「映像で常に確認しているが、いざという時は先頭で入る静子に掛かっているからな。」
「そんなに心配しなくて大丈夫だよ、じゃあ皆行くよ。」
「尊さま! 私の後ろに!」

先頭に静子、尊と巴、後ろに五人の護衛を従えゲートを越える。
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87-希望 [キング-09]

尊達の訪問は全く予想していない展開となった。
彼等は尊と巴を跪いて迎え入れたのだ。

「これは驚いたな、翔の映像効果か、麗子の食事が効いたのか、何にしても上手く行きそうだな、翔。」
「はい、僕らが観察してる中でも危険は感じませんでしたが、こうなるとは思ってもなかったです。」
「手土産も押し頂くという感じね。」
「この形でスムーズにコミュニケーションは取れるのか。」
「彼等は共通語に挑戦していますね。」
「記憶の蘇りは静子さんと対面してスイッチが入り数分後に始まるという予定だったでしょ。」
「その筈だが、未だに冷静だな。」
「輪を作って話し始めた、愛、何を話してるのか分かるか?」
「だめです、初めて聞く単語が多すぎて。」
「尊達はにこにこしながら聞いてるが。」
「たぶん分かって無いと思います。」
「でも頷いてくれる人がいれば、心が軽くなるのかな。」
「泣いてる人もいますね。」
「それでも表情が穏やかに感じる。」
「尊が端末に手を伸ばしたぞ。」
『愛、お茶を頼めるかな。』
「はい、すぐに用意するわ。」
『ここの子達と一緒に持って来てくれるか、望。』
「分かった。」
「全く危険を感じてないという事か。」
『翔、予定より早いがここにテレビ電話を設置したいが。』
「ああ、すぐ持ってくよ。」
「キング、この状況はどういう事でしょう。」
「親衛隊隊長、彼等はコロニーでの生活に苦労していた、蘇りつつ有る過去の記憶も良いものだったとは思えない、だが、翔の映像や実際に尊や巴に会って、彼等に希望が芽生えたと考えられないか。」
「あっ、そういう事ですか。」
「その希望をさらに強く感じさせる為に、尊は子ども達を呼んだのさ。」
「なるほど、ここの住人とは早く仲間に慣れそうですね。」
「ああ、そうして行かないと、先は長いからな。」

その後は交代で夕食を差し入れたりしたが巴が戻った後も穏やかに進行した。
記憶の蘇る苦しみ以上に、狭いコロニーでの先の見えない生活から解放される喜びが大きかったのかもしれない。
今回の事で我々を待っている人達の気持ちが分かった気がする。
子ども達も、これから出会う人達へ一刻も早く希望の光を届けたいと話してくれた。
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88-予測 [キング-09]

一つ目のコロニーは成功したが修正の余地も見えた。
城の子達は次への準備を進めている。

「愛、一つ目の記録映像を編集したのは見てくれた?」
「ええ、次のコロニーから、あれを見て頂けば理解が早くなると思うわ、でも、翔、映像を利用しての共通語教育プログラム、基礎は何とかなると思うけど相手の言語を充分理解出来ていないと、その先は難しくないかしら?」
「そこを埋めるのがドラマ作品だよ、早めに覚えて欲しい言い回しを強調する形でドラマ番組を作成する、すでに台本はサンフランシスコの作家集団に依頼して有るよ。」
「翔、ブラックコロニーは、もう大丈夫なの?」
「彼等も、この世界での役割を持つ事が大切なのさ、僕の要望に真面目に取り組んでくれてる、トリッキーで面白い話を作るのは得意みたいだからね。」
「でも、その完成を待ってられないね、次のコロニー受け入れが成功したら、ペースを上げたいと思う、それで受け入れた単独コロニーを和の国新島に集めようと思うんだ、慣れるまでは国際ゲートに制限を掛けて置けば安心、モハメドも賛成してくれた。」
「尊、今の住人はどうするの?」
「今のままでも構わないけど、本島にゲートを付け替えても良い、新島はゲートだらけになるだろうからね。」
「新島を希望の島にするのね、新しい仲間があちこちに散らばるより良いと思うわ、人数の少ないコロニーからどんどん繋がって行きましょうよ。」
「僕は構わないが皆の負担は大きくなるよ、言葉の行き違いによるトラブルも予想されるだろ。」
「私達の本部を希望の島に置いて、何か有ったらすぐ対応出来る様にすれば良いんじゃない?」
「静子さんは、どう思う?」
「夜を城で過ごして下さるのなら、親衛隊に問題は有りません、皆さんをお守りするのが私達の使命です。」
「そんなに気を張ってると疲れるでしょ、もっと気楽で良いと思うな。」
「巴、静子さんには特攻隊長の職務もお願いしてるのだから、気楽にとは行かないんだよ。」
「でも静子さんの次の出番は来年の私の誕生日に私を肩ぐるまして馬に成りきる事、それまでは兄さまの横に立っているだけじゃない。」
「はは、巴がそう言うのなら問題なさそうだな。」
「しかし肩車して馬に成りきるって、どういう状況なんだ?」
「巴の誕生日が待ち遠しくなったという事でしょ。」
「あ、あの~、どういう事なのか…。」
「静子さんは少なくとも巴の誕生日まで活躍する場がないって事だよ。」
「何が起こるか分かりませんよ。」
「巴は状況分析プラス直観力で先を予測出来る、僕らの中では一番精度が高いんだ。」
「ずいぶん先の事まで分かるのですか?」
「それはマリアさま次第、まだ教えていただけない情報が有るからね。」
「巴の誕生日まで半年ぐらいか、それまでには最低でもすべてのコロニーと繋がる所までは済ませたいね。」
「もっと急ぎたいけど管理し切れなくなってのトラブルは避けたいからな。」
「環境が悪いコロニーほど楽に進むと思わない?」
「うん、環境が格段に良くなる訳だもんな。」
「一番ましなコロニーでも私は住みたくないレベル、油断しちゃだめだけど怖がらずにがんばらなきゃね。」

望の発言に他の子ども達も頷いている。
私としては巴の予測が当たっていて欲しいと願うのみだ。
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89-民主主義 [キング-09]

和の国新島から和の国希望島と名前を変えたエリアは順調に人口を増やしている。
十人から二十人程度の居住コローで暮らして来た彼等にとって、ここは言葉の壁こそ有るが広い空間においしい食べ物、この世界を楽園と感じている様だ。

「新しい仲間達は、先の見えない月日を重ねた後だから、ここでの生活は嬉しさひとしおでしょうね。」
「そうだな、そして、それを城の子達に導かれたと感じてるみたいだ。」
「ああ、作法はそれぞれ違うが城の子達に対する敬い方は半端じゃないぞ。」
「国の方も尊の提案で、尊と巴を記憶が蘇る場に同席させたらすごく穏やかに事が運んだ、今後の予定を早めても良いのではないか。」
「問題ないだろう、なあ、今回の件で世界中の人達をもう一度観察させて貰ったが、民主主義って何だったと思う?」
「民主主義か…。」
「この世界に選挙はない、キングを中心に各国のリーダーグループが行政面を担当している、でも不満もなく平和な社会だ。
過去の民主主義は能力の良く分からない連中の中から、政治の事も良く分かっていない人による人気投票みたいな選挙で代表を選んだ結果、私利私欲に走る連中の不正が有ったり…、もっともここじゃ金が無いから不正蓄財は出来ないがな。」
「かつての世界でも民主主義、人の平等を唱えながら、王を敬ったりもしてただろ、人間の集団には心の支えとなる王様だったり大統領だったりが必要じゃないのか。」
「ヒーローを求めていた気もするわね。」
「自分達の集団をより良い方向へ導くと人々に思わせる事が出来たら、例え独裁者で有ったとしてもヒーローだろうな。」
「キングは、この世界で唯一マリアさまと会話できる大人、彼を中心にこの豊かで平和な世界が成立している、誰も民主主義を望んでいないと思わないか、利害関係も少ないしな。」
「新たに加わった人ですら、この世界の一員となるべく、キングに忠誠を誓うという意思を覚えたての共通語でたどたどしく伝えようとしていたな。」
「この世界でキングは象徴的な存在でも有るのよね。」
「私達の世代はそれで問題なく進んで行くと思う、だが、子ども達の世代はどうだろう?」
「そうね、彼等はキングより、マリアさまの立場になっていく気がするわ。」
「それは私も感じている、でも子ども達は…、はは、まだ先の事だよな、子ども達がどんな社会体制を選択するか楽しみじゃないか、それまではキングを中心とした今の社会体制を守って行けば良いだろう。」

金の存在しない豊かな世界。
貧富の差を生み出す要因はここにはない。
綺麗な石っころを有難がる人もいないし、そもそも宝石の類は見つかっていない。
この社会が拡大したら、今のシステムでは無理が出て来るのだろうか、子ども達が成長してどう判断して行くのか楽しみでは有る。
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90-温故知新 [キング-09]

八カ国の受け入れには三か月、全部の単独居住コロニー受け入れには半年ほど掛かった。
新たな住人がこの世界の生活に慣れるには、まだ時間が掛かるだろうが、今の所大きなトラブルは起きていない。
このタイミングで余剰食糧をマリアが引き取る事がなくなった。
この事からも、マリアの管理下に有ったすべてのコロニーが我々の世界の一員となったと判断出来る。
今現在、人口七十人から百五十人程度の十四カ国と、多くの少数民族を抱え二千人を越えた和の国を合わせ、この世界の総人口は三千五百人近くになった。
翔はまもなく九歳の誕生日を迎える。

「まだ先の事なのだが、今後の人口増加と食糧事情を予測した結果、翔が二十四歳になる頃からスペースに余裕がなくなりそうだ、孫世代の誕生に関しては予測しにくいから、かなり誤差は有ると思うが。」
「産児制限が必要になるのかしら、気にしてる国民も結構いるわよね。」
「それは必要ないと思います、おそらく僕らが十六歳になる前後に何かが変わるのではないかと思います、まだ教えられていませんが、今までの状況から推測した結論です。」
「尊、子どもは増えた方が良いの?」
「はい、マリアさまはより多くの遺伝子を残す為に小さいコロニーの子ども達も見捨てなかったと思っています。」
「城の子もか?」
「弟や妹は沢山欲しいです、他の子達も可愛いですが、城の子は少し違いますから。」
「という事は、産児制限なし、安心して子を産み育てよ、キングの名で布告するか尊の名で布告するかだけど。」
「そうね、尊の考えに沿っての布告、明日の世界に関する事だから尊で行きましょうか。」
「布告に伴って演説するか、尊、布告の根拠を世界中の人達に知らしめる必要が有るぞ。」
「演説というか説明は僕がしますから父さんとの連名でお願いします、良いでしょ、父さん。」
「ああ、問題ない。」
「夫と息子から子を産めと言われるとはね…。」
「言われなくてもがんばるでしょ、麗子も。」
「昔、早くに子を産んだ友達から聞いてた程、ここでは大変じゃないからね、二十人ぐらい産んで上げようかしら。」
「はは、ぜひ頼むよ君はキングの子を五人産んでも、ここへ来た時と少しも変わってないからね。」
「城の住人が十年変わらないのは、城が特別な場所だからとは分かっているけど、ちょっと複雑な気分だわ。」
「だろうな、でも、ずっとマリアさまの管理下と考えるかマリアさまに守って頂いてると考えるかだろ。」
「子ども達程でないにしても私達も特別な存在、私は受け入れているわよ、気を付けていないと過去のひどい記憶を忘れてしまいそう、でも忘れてしまったら、この世界がどれ程の楽園なのかも忘れてしまいかねない…、楽園に暮らす喜びを忘れないで子育てして行きたいわね。」
「ねえ…。」
「どうした、尊?」
「城の大人の過去は少しだけ教えて貰ってる、でも僕らはもっと知らなくてはいけないと思う。」
「そうだな、私達の過去は決して良い手本ではないが未来へ向けての参考にはなるかもしれない、世界が安定しつつ有る今、尊と巴が中心となれば大人達の負担も少なく聞かせて貰えるだろう、そうだな城の子による聞き取り調査という形で良い、思い出したくない事を思い出させてしまった対面後のフォローが必要になった時は私がするよ。」

実際にはフォローの必要はなかった、かえって城の子による調査は人々の心を軽くした様だ。
城の子との対話を誰しもが喜んでいた。
そして子ども達は多くの事を学んだ。
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