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61-特別 [キング-07]

マリアの授業二日目。
質問に答えるというマリアの言葉に、まず口を開いたのは翔だ。

「この端末でマリアさまと話す事は出来ないの?」
『そうね、私達の方針で今はキングとあなた達の五人にしか私の声を聞かせることは出来ないの、でも手を考えてみるわ。』
「弟や妹もだめなのかな?」
『あなた達の本当の弟や妹が六歳ぐらいになるまではね。』
「お城に住んでる子は特別なの?」
『そうよ、この世界で特別な存在。』
「他の国のリーダー達の子達もでしょ?」
『いいえ、他の国は和の国ほど成功しなかった、色々な意味でね。』
「でもスコットランドのメアリーやジョージは五歳だけど優秀だわ。」
『実はそれ程でもないって、しばらくしたらあなた達も気付くでしょうね。』
「特別って、喜んで良いのかな、良い事ばかりじゃない気がする、三之助おばちゃんは良くバランスについて話してくれる、特別な存在はバランスを崩しかねないって。」
『尊は良く分かってるわね、その通り良い事ばかりじゃない、あなた達はこの先大変な思いをする事になるでしょう、でもキングがこの世界をまとめている事は理解出来てるわね。』
「はい。」
『これからも人が増える、大人を束ねるのはキングの役目、子ども達を導くのはあなた達の役目、だから城の子は特別なの。』

子ども達と目が合う、だが私も初めて聞いた事だ、彼等の期待には応えられない。
しばらくの沈黙の後、望が口を開いた。

「人が増えるというのが、この世界で子どもが増えるという意味なら、そんなに大変じゃない気がするわ。」
『これから新たな出会いが有って人が増えるの。』
「マリア、子ども達にいきなり重荷を背負わせるのはどうかと思うが。」
『キング、私は心配していない、それはこの子達が証明してくれる。』
「ならば、これからの…、マリアの予定を話してくれるか。」
『間もなく新たにゲートで繋がる国が有る、その国について説明を聞いてくれるわね、子ども達。』

もちろん断る訳にはいかない、全員の端末にデータが表示された、皆画面を見つめている。
私も自分の端末に目をやるが。
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62-犯罪 [キング-07]

新たに交流する国は、大人が六十二人子ども二十人、国土の面積は和の国に次ぐ規模。
マリアが解説を始める。

『昨日見せた各国のデータと比べてもこの国の産業に問題のないことは分かるでしょ。』
「でも、余剰食糧が少ないわ。」
『そうね、彼等なりに計算して自分達に必要な量をきちんと確保してるのかな。』
「和の国は次に繋がる国への援助を考えて多めに生産してるのよね。」
『そういう発想はこの国の人にはないみたい。』
「言葉はスコットランドと同じという事なの?」
『大体は同じ、でも違いは有るのよ。』
「大人が多いという事は平和な国なんだ。」
『今はね。』
「どういう事。」
『大人達が忘れていた事を思い出した時の事は覚えているでしょ。』
「大変そうだった。」
『この国の大人達は皆、過去に犯罪を犯しているの、その事を思い出した時に彼等がどうなると思う?』
「え~、どうだろう、でも今が平和だったら、そのまま平和に暮らしたいと思うんじゃないかな。」
『私にも分からない、今から端末の画面に映し出されるのは今の様子だけど、見ながら感想を聞かせてくれるかしら。』

端末に映像が映し出される。

「色んな人がいるね。」
「あっ、真っ黒な人がいる。」
「大人達が、えっと…、新島の人みたいに皺が多いね。」
「マリア、これは厳しいと思う、犯罪経験者の彼等に記憶が蘇ったら、すぐさま殺し合うかもしれない、特に記憶が不安定な期間は危険だ。」
『ではキングはどうすれば良いと思う?』
「これまでとは違った出会い方をするしかない、今までは和の国に代表者が来るタイミングで記憶が蘇り始めた、こちらから向こうへ行く事でも同様の結果は得られるのか。」
『そのシステムを開発した者はどちらの国と指定していない、ただ代表者による他国民との対面をスイッチにしただけだ。』
「この国とのファーストコンタクトは何時だ?」
『明後日の十時。』
「分かった、これから和の国の会議を招集するがそれを子ども達にも見せたい、今日の授業は終わりで良いか?」
『構わない、その判断に賛成だ。』

すぐに会議を招集。
対応を協議し、担当を決めた。
マリアは城の子達の教育を考えている、将来この世界のリーダーとなる四人の教育、それは新たに交流を始める国よりも重要かもしれない。
もちろん、欲張り者の私は両方を尊重する訳だが。
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63-差別 [キング-07]

会議の後で子ども達に問題の説明をする。

「あの国の大きな問題は大きく二つ有る、一つは大人達が昔、人を騙したり傷つけたりした経験が有るという事だ、昔、私達大人が暮らしていた世界では、人を殺してもこの世界の様に自分が死ぬことはなかった、ここでは罰が有るから悪い事をしにくいが、昔いた世界ではどれだけ悪い事をしても上手にやっていれば長生き出来た。
そんな過去を思い出して反省する者ばかりなら問題ないが、そうはならないだろう。」
「せっかく平和な国を作ったのに壊してしまうの?」
「可能性は有る、もう一つの問題も有るしな。」
「どんな問題?」
「色んな人種の人がいただろ、昔は人種差別という事が有ったんだ。」

子ども達にはまだ早いかと思いながらも、差別の話をした、我が国でも二丁目の住人や新島の住人が差別の対象になる可能性が有る事、それに対して三之助中心に大人達が色々考えている事も含めてだ。

「父さんは、どうするつもり?」
「まずファーストコンタクトの段階で、彼等が知らない事を説明しようと思う。
蘇る記憶は犯罪者としての記憶だという事、人種差別で対立していた可能性が有る事、新島で起こった事など色々説明した上で、大勢の大人に協力して貰ってあの国へ行き記憶が蘇る時の手助けをする、殺し合わない様にね、幸いな事に英語を話せる大人は多いからな。」
「僕たちは何をすれば良い?」
「向こうの子ども達を和の国へ移動させようと思う、子ども達の不安を軽くして欲しい。」
「マリアさまが転送してくれるんだね。」
「いや、出来るだけマリアの手を借りないのがここのルールなんだ、今回は色々情報を貰ってるからじっくり準備して無駄に死ぬ人が出ない様にする、手伝ってくれるな。」
「はい。」
「明日の緊急国連会議にも参加してみるか、途中で嫌になったら静かに退席が条件だが。」
「今までもキングは私達をどの大人よりも子ども扱いしないでくれてた気がするわ、私はその気持ちに応えたい。」
「何か急に大人になった気分、各国のリーダーの話を真面目に聞くよ。」

彼等は急速に成長している、それは多分マリアが関係していると思う。
マリアがその声を聴かせる相手を制限しているのはその辺りに理由が有るのかもしれない。
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64-会議 [キング-07]

緊急国連会議を終え、国民に事情を説明すると夕方になっていた。
城のダイニングルームで夕食を兼ねての定例会議。
今日から四人の子ども達も参加を許す事にした、強制ではなく自由参加だ。
城の子がこの世界で特別な存在だという事を皆に伝えるのは、子ども達自身が手伝ってくれた。
そして。

「でもね、ここにいない人達には内緒にしておいた方が良いと思うの。」
「どうしてだ、愛?」
「城の子だけが特別だって知ったら、やっぱり他の人達は気を悪くするんじゃないかしら。」
「ずっと、隠しておけるかな?」
「ロックおじちゃん、僕たちが皆の役に立てるという事を認めて貰えるまでだよ、それまでは子ども達の中で一番おっきい子って事でどうかな。」
「尊の言う通りだ、まあ、子ども達がマリアの授業を受け、その一環として国連の会議を傍聴した事、端末を貰った事、共通語に取り組んでいる事、そしてこの世界に住むすべての子ども達のお兄さんお姉さんとして、彼等に優しく接している事などを考えたら、認めて貰える日はそんなに遠くないと思う。」
「でも人間関係は難しいのよね。」
「もう一つ有る、他の国のリーダー達もまだ知らない事だが、今度の国が落ち着いた段階でマリア以外の管理者は観察のみになってコンタクトを取る事をやめるそうだ、現時点でもコンタクトの回数は極端に減ってるそうだから、感の良いリーダーは予測しているかも知れない。」
「そうか…、特別な存在で有るキングに対しての反発は感じてないな。」
「今はな、でも今後の事は分からない、ただ、この世界のすべての子ども達を城の子の影響下に置く事は難しくないと思う、翔はもうすぐ七歳か?」
「はい。」
「このタイミングが良いのかもしれない、もっと大きくなってからだと他の国の子ども達も成長して余計な事を考えてしまうだろう、どうして和の国の城の子どもばかりが特別扱いされるのだろうとか、今なら自然な形でリーダーとなれる、但し楽ではない、そうだったね望。」
「はい、マリアさまもその様に。」
「大変だと感じたら何時でも言うのよ、私達八人はあなた達の為に居るのだからね。」
「はい。」
「良い返事ね、なんて子ども扱いはもうしない方が良いのかしら。
ところで、今度繋がる国は随分特別なのね、キング。」
「ああ、まさしく実験的に作られた国だ、我々の国以上にな、トラブルが起きる可能性が高い。
だが広い国土、老化の進んだ住人が多めで、第一世代が向こうへ移住する事も可能という状況は有難いと思わないか。」
「えっ、それは聞いてなかったぞ、移住可って。」
「国のリーダーが認めなかったらだめなんだ、だから他のリーダー達にも教えてない、ただ移住が可能になれば新島の居住コロニーで仲の悪い人と暮らしている人達を離す事が可能になる。」
「画像では爺さん婆さんが子どもの面倒を見てたな、かなりの罰を受けたのだろうが死者は二名のみ
少し不思議な気もするが、移民を受け入れなければ子ども達が成長するまで持たないのじゃないか。」
「子どもが悪い事をしても、成長する訳ではないだろうからな。」
「僕らが大きくなったら罰を受ける様になるのかな?」
「尊、それは分からないが、私達と同じように真面目に世界の事を考えていれば、罰を受ける事はない、ここにいる八人は初めて会った時からほとんど変わっていないんだ。」
「あっ、マリアさまは、色々な意味で他の国は和の国ほど成功しなかった、と話してた、確かに他の国のリーダー達も皺は多くないけど、ちょっと違うと思う。」
「そうね、これは私の推測だけど、この八人は初めて会った時から喧嘩をしてないの、でも他の国のリーダー達は小さな喧嘩をしてる、罰にならない程度だけど私達程仲良しではないという事ね。
そして、あなた達が喧嘩をしている所を見た事がない、城が特別なのはその辺りに理由が有るのかもしれないわ。」
「喧嘩するほど仲が良いとか言う人もいるが、私はマリアが絶妙に相性の良い八人を集めたと考えている、遺伝的にもね、それがこの城の成功なのだろう。」
「成功したから特別なんだね、父さん。」
「たぶんな。」

正解は分からない、ただマリアがどれだけ私達の脳を改造したのかも分からない。
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65-準備 [キング-07]

新たな国との交渉、そのすべてを子ども達にも見せている。
子ども達は好奇心の塊、大人達の行動に対して様々な疑問を投げかけて来る。
質問をする対象は城のリーダー達だけでなく他国のリーダー達も含まれている。
リーダー達がそれを真面目に受け止めてくれるのはマリアの同僚が力を貸してくれたからだ。
これから付き合う相手国のリーダーさえもが、管理者から子どもが同席する事を知らされ、協力を要請されていたのには驚いた。
マリア達管理者全員が城の子ども達を特別な存在と考えているのだろうか。
だが、子ども達の質問が大人達に見落としを気付かせた事も有り、リーダーが子ども達に質問をするという場面が徐々に増える。
今回は、とにかくテレビ電話での交流を多く持った。
自己紹介や国の紹介に始まり…。

「そちらの国民に蘇る記憶は犯罪者の物、だが我々はあなた方の過去を問わない。」
「そう言われても…。」
「そちらでは死者こそ二名だが老化が目立つ、罰を受けてるのだろう。」
「確かにモニター越しのあなた方は若々しい、我が国は表向きずっと平和だったが、小さく傷つけ合う事は続いている、その結果が…。」
「差別意識はないのか。」
「言われてみれば心のどこかに有るのかもしれない、これで記憶のプロテクトが解除されたらどうなる?」
「精神的に不安定になるのは間違いない、その時殺人を犯せば、殺した本人もすぐ死ぬ、それがこの世界のシステムだ。」
「私はどうすれば良い?」
「すべての国民に、この事を理解させて欲しい、何ならモニター越しに我々が全国民と話し合っても良いのだが。」
「明日にでも直接会えると聞かされているがだめなのか?。」
「その瞬間から記憶のプロテクトが外れ始める、一つの国ではすぐに殺し合いが始まった、あなた方の国でも近い事が起こる可能性が有る、我々としてはそれを止めたい、それには充分な準備期間が必要だ。」

時間を掛け我々が経験した事を詳しく説明、好ましくない状況が起きた時の対策を話し合う。
その一方、六カ国合同で相手国を訪問する二百名ほどの訓練を行って来た。
誰しも、新島の悪夢は起こさせたくないと考え、色々なケースを想定しながら真剣にだ。
相手国の国民にどんな犯罪歴が有って、どんな能力を持っているかが最大の不安材料、例え年老いていても女性であっても油断するなと言い聞かせている。
準備期間中、城の子ども達の存在は大きかった、向こうの子ども達に色々説明してくれるだけでなく、リーダー達の話も聞いている、会談で知り得た情報を子どもに確認する事で安心感を得ている様だ。
ただ、どうやら女性リーダー達に気に入られてしまった様で長話になりがち、子ども達の為に周りの大人が気を付けて対話を終えるきっかけを作る必要が有ったが、両国の親善には大きく役立っている。
国連六カ国が協力し合っての準備作業には日数を要したが、現時点で考えうるすべての危険に対処出来る体制を整えた。

そして、対面の日を迎える事となる。
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66-作戦開始 [キング-07]

時間を掛けて練り上げた作戦計画が実行される当日、各国から二百人近くの大人が和の国、国際ゲート前に集まった。
向こうの子ども達は全員ゲート近くに集まって貰い、五歳児が乳児の面倒を見る事になっている。
大人達は人種ごとに集まって貰っているが、人と人は間を置くように指示がしてある。
予定の配置になったとの連絡を受けカウントダウン、まずは尊と望がゲートをくぐり、子ども達を招く。
画面を通して顔見知りとなっていた子ども達は、二人が抱えていたぬいぐるみを見て嬉しそうに駆け寄り、そのまま二人と一緒にゲートを越えて和の国へ。
子ども達の考えた作戦が成功したという事だ。
ここからは時間との勝負とも言える。
精神状態が不安定になっていくであろう大人達の状況を一人一人見極めなくてはならない。
三郎を先頭に百人を越す大人達がゲートをくぐり、向こうの国民達に声を掛けて行く。
画面越しに見知った人と改めて挨拶を始めて十分もしない内に彼等に異変が起き始める。
ここまでは想定内だ。
こちらからの訪問者は観察者となる。
その一人が異変を感じた者に声を掛けると、暴力的衝動が涌き始めたと言う。
促されて自分から居住コロニーへ入って行った。
同様に二名が居住コロニーへ。
突然暴れ始めたのは四名、近くに屈強な男性を配置して有ったおかげで用意していた檻へ入れる事に成功、彼等の老化が進んでいた事も幸いした。
他の大人達は、大人しく静かに苦しんでいる。
中には過去の犯罪歴を語り始める者も、人に聞いて貰う事で苦しみを和らげたいのかもしれない。
過去に犯罪を犯したからと言ってすべての人が危険人物だとは言えないだろう。
この世界で人を殺せば自分も死ぬ事になるとは時間を掛けて説明してある。
問題は、蘇った記憶が死にたくなる様なもので有ったら、誰かを道ずれにしてと考えたら。
細心の注意を払いつつ対応している。

「そろそろ、お茶かしら、それともお食事かな。」
「麗子の、その呑気さには救われるよ、翔、三郎に連絡してお茶か食事か聞いてくれるか。」
「はい。」
「愛は尊達と連絡を取って、子ども達の今の様子を聞いてくれるか。」
「はい、彼等は今の所落ち着いてる、乳児達も含めて問題無いと連絡が入った所です。」
「ならば、その情報を三郎に伝えてくれるか。」
「はい、心配してるだろうと思って連絡しておきました。」
「有難う、他にしてくれた事は?」
「尊からの指示で、今の事は各国のリーダー達へも伝えました、彼等からはこちらの状況を聞かれましたが、まだ成功かどうかの判断を下す段階になってないと話しておきました。
向こうのリーダー達へも、彼らは苦しそうでしたが、よろしく頼むとの事でした。」
「ふむ、愛、翔、この作戦は成功するかな。」
「目先の危険分子七人は抑えましたが、他の人の危険性が分からなくて不安です。
ほんとは皆が怖い思いをしない様に記憶の蘇りが終わるまでゲートを閉ざしておいて欲しいです、でも、ここでどれだけあの人達を尊重し手助けできるかによって、今後の友好関係は違う物になります、今は誰も傷つかない事を願うのみです。」

話の途中、翔は明らかに愛の不安に気を使った。
二人の緊張がこちらにも伝わって来る。
本当なら、まだ無邪気に遊ぶのが普通な年頃、この一か月の間で急速に成長したとはいえ、まだ七歳前後の子ども達、酷な仕事をさせている事に気が引けるが、彼等はこの世界のトップリーダーになる宿命を受け入れてくれた。
私の役目は彼等を守り育てる事、この世界の平和を願いつつ。
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67-夜 [キング-07]

作戦の初日、相手国の三名が死亡した。
予定外の事では有ったが作戦の失敗とは言えない。
元々老化が進んでいた人が、記憶の蘇りに耐えきれなかった様だとの報告を受けたからだ。
当初暴れた連中は、しばらくして大人しくなり、サポート担当者と対話をしているという。
食事の差し入れ業務、観察者の交代もスムーズに行なわれている。
残った五十九人の過去は少しだけ聞き出せた、それが事実かどうかは分からないが。
ただ彼等が元犯罪者で有ったとしても、暴力を振るわず過去の事を忘れてくれたら何の問題もないと考えている。

「向こうからの連絡はどうなの?」
「ロックから定時連絡が有った、特に問題は起きてない、居住コロニーの三名は落ち着いて来たが、三人とももうしばらく一人で居させて欲しいとの事、檻の四名は暴れて悪かったと反省しているそうだ。
話し相手を必要としている人は三之助が集めて、輪を作り語り合ってる、過去に囚われない様に時間を掛けて話しておいたのは正解だった気がする、もちろん安心するにはまだ早いと思っているが。
それより、八重、子ども達はどうしてる?」
「赤ちゃんは保育担当者が面倒見てくれている、他の子は城の子が誠達弟や妹も加わった八人で相手してるわ、不安がらせない様に沢山遊んで疲れた子から寝かせる作戦だそうよ。」
「そう言えば、誠や香も事前に顔合わせしてたな。」
「それだけじゃなく、お兄ちゃん達から色んな事を教わっているわ、下の子達の教育は尊達に任せて良いかも、学校教育は城の子以外で考えていかないと、教師がついて行けなくなるでしょ。」
「特別な子達か、リーダーとして大切な所がぶれない様に気をつけないとな、私はそろそろロックと交代しに行くが、持って行く物とか有るか?」
「麗子が夜食の用意をしてるわセブン、一花が三之助と交代するって言ってたから一緒にお願い、それと子ども達の様子は端末で翔を呼び出せばライブ映像が見れるの、子どもの事を心配している人がいたら見せて上げて。」
「分かった、キング、今回の交代は一花以外は予定通りだ。」
「三之助は予定を早めるのか?」
「ロックからの指示よ、今夜だけじゃないから三之助に無理させるなって、私が代わろうかと思ったけど、セブンと一緒なら私が行くって、一花が。」
「そうだな、セブン達の後はスコットランドに引き継ぐが、何時何が起こるか分からない、皆、休める時に休んでくれな、八重、三郎は休んでるのか?」
「さすがに疲れたと話していたけど、ここ数日が山だろうからと、ロックとも連絡を取り合いながら五十九人の分析をしてるわ、特に向こうのブラックコロニーが特定出来ていない事が気になるって、今までの国は簡単に特定出来たでしょ、死者が多く老化の進んでるコロニーなんだから。」
「今回は全部がブラックコロニーの可能性も有るな。」
「あっ、三郎から連絡だ。」
『ロック、セブン、第四コロニーが怪しい、コロニー居住者全員の所在を確認してくれ。』
「分かった、特に気を付ける事は?」
『本人は人を傷つけないが、言葉巧みに他人同士傷つけ合わせていた節が有る。』
『なるほどな、三郎、一人心当たりが有る、今、三之助が輪を解いて一対一で話始めた。』
『ロック、どんな人物だ?』
『この国の中では若く見える。』
『なら間違いない、三之助が相手してるなら問題ないだろう、セブン、他のブラックコロニーメンバーと思われる連中のデータは確認してくれたか。』
「ああ、確認した、今からどう動く?」
『あまり慌ただしく動いては向こうの連中に不安感を与える事になる、まずセブンはロックと合流して、そのコロニーのメンバーを彼等の居住コロニーへ隔離する事を考えてくれるか、全員若く見えると思う、探し易いだろう。』
「了解した。」
『私はキングに報告してから、そちらに向かう、自分の手を汚さずに小さな揉め事を起こして他人の老化を促進させた連中の意図は分からないがな。』
「分かった。」
『では、また後で。』

「という事で、すぐ行くよ、夜食とかは一花に任せてくれるか。」
「分かったわ、気を付けてねセブン、必要なら私も向かうから連絡してね。」
「ああ。」
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68-ブラックコロニー [キング-07]

しばらくして三郎が部屋へ。

「キング、向こうに入った時から違和感が有ったんだ、複数の人種が共存している中で、特定の人種だけ若いという事にね、でも罰を受けてないのだからまじめ平和的な人達だろうと思っていた。
ところが三之助の端末を通して向こうの音声情報を聞いていたら、一人、巧妙に実に巧妙に他人を争わせる様仕向けている人物がいた訳だ。」
「他の人達を争わせ自分は高みの見物、ここの罰則に引っかからなかったという事なんだな。」
「何の為にやってたと思う?」
「他の人種の力を削ぐ為だろうな、そんな事を記憶にプロテクトの掛かった脳で八人協力してやっていた、排他性は本能的な物なのだろうか、あ、連絡だ。」
『キング、三郎、ブラックコロニーの八名は居住コロニーに集めた。』
「分かった、こちらは八重と麗子に任せてそちらに向かう。」
「他国の居住エリアへダイレクトに通話出来ないのは不便だな。」
「そこらじゅうから気軽に連絡が来るのも困りものだろ。」
「向こうのリーダーも呼ぶか?」
「いや、まず我々で状況を確認してからにしよう。」

八重と麗子には端末で音声を送ると伝えてからゲートをくぐった。
ゲートの近くでロック達と落ち合いブラックコロニーに連絡をする。

「皆さんとお話しするのは初めてですね、和の国リーダー、通称キングです、少しは落ち着きましたか?」
『ましにはなったが、まだ落ち着かない、我々は居住コロニーへ戻る事を許されたが程度が軽いという事か?』
「誰も暴れなかったからな。」
『しばらくコロニーから出なくて良いと言われたが大丈夫なのか?』
「ああ、家畜の世話などは、こちらでやるから安心してくれ、そのコロニーに食料は充分有るのか?」
『今日に備えて二週間分の蓄えが有る、ささやかな畑も有る。』
「では、少し踏み込んだ質問をしたいが構わないか。」
『短い時間なら大丈夫だ。』
「君達以外の人種をどう思っている? もしくは君達の事をどう思っているかでも良い。」
『えっ…、べ、別に人種の事は考えていない、この国には色々な人種がいて協力し合って来た、皆、仲間だ。』
「そうか、ならば安心だ、ではゆっくり休んでくれ、暴力的になった人もいたからしばらく居住コロニー住まいになるが、子ども達の様子はそちらでもライブ映像が見れる様にするから安心して欲しい。」
『分かった。』
「ではお休み。」

スコットランドチームと交代するまで他の人達の様子を見て回り情報を仕入れた。
ブラックコロニーに関しては苦しそうにしているリーダーの許可を得て、私の許可なく出られない設定にしておいた、彼にその理由を聞くだけの余裕がなかったのは幸いだった。
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69-監視 [キング-07]

城へ戻って。

「八重、子ども達は?」
「もう寝たわ。」
「私達も明日の事が有るから早めに休みたいが、状況の整理をしておかないとな。」
「キング、彼等の根には人種差別が有ると思うが。」
「そうだな、推測でしかないが自分達は優秀な人種、もしくは他の人達を低い人種と考えている可能性が有る、またリーダーグループではない自分達を、国内でより優位な立場にしようと考えたのだろう。
そして、この世界のルールを利用して自分達の思いを成功させつつ有った。
彼等の誤算は他に国家が存在していた事、我々との接触は考えてなかっただろう。
もう一つの誤算はこの先労働力不足になる可能性、まだ気づいてないかもしれないが。
三之助、相手をした女性はどうだった?」
「ほんとにすごい話術だったわ、完全に良い人を演じながら他の二人を争いに導いていこうとしてた、相手がまだ子どもを産めそうな人だったからでしょうね、今まで死者が少なかったのは子どもを残せない状態になったら、ターゲットから除外してたからだと思うの。」
「二丁目とは逆に頭の良い人達なのね。」
「それだけに、今後どうするかって問題が大きいな。」
「とりあえずキングは、ちょっと気付いてると匂わせた、頭の良い人なら過剰反応するかも、特に精神状態の不安定な時期だけにね。」
「他の人達へはどう伝えるの?」
「まだ事実かどうかの完全な裏付けは取れていない、調査の必要は有る、確証が得られたとしても混乱させない為に、しばらくは誰にも話さないのが最善だろう。」
「他の人達に問題が有るのかどうかも、まだ分からないのよね。」
「キング、他国とはどの程度情報を共有して行く?」
「少しづつで良いだろう、あの国の危険性は理解しているだろうし、今までと違ってブラックコロニーの連中が一番長生きする可能性が高い、方針を固めてから相談した方が良いだろう。
まずは三郎と三之助であの国を担当して貰えるか? 残ってる人達の肉体年齢とかも把握して欲しいのだが。」
「そうだな、やってみるよ。」
「ブラックコロニーはしばらく様子見ね。」
「あっ、そうだ、私達の端末でマリア達の隠しカメラを見る事が出来る、マリアが子ども達に教えていた。」
「あのコロニーを監視出来るのね、どうやるの?」
「明日、望に教えて貰ってくれるか、たぶん気軽に使えない様にだと思うが説明に時間が掛かるんだ、かなり無駄な事をさせられる。」
「それは我々以外、誰にも知られたくない機能では有るな、その存在さえも。」
「子ども達は私達の知らない事も教えられているのね。」
「空気中の酸素濃度を調べたり、統計情報の整理、人の感情を数値化するなんて機能も有る、子ども達は、今我々が必要としてない機能も教えて貰ったという事だ。」
「監視機能以外に今活用出来そうな機能はないのか?」
「もう一度検討してみるが…、嘘発見器は使えそうだな、後は子ども達と相談だ。」
「監視機能は向こうへ行かないと使えないの?」
「ああ、あっ、そうか、マリアはここですべての国を管理出来るシステムを与えてくれた様だ。
教えられた時は、使う事を想定してなかったので深く考えてなかったが。」
「どういう事なんだ?」
「私達は、この世界に存在するすべての端末をハッキング出来る、おそらく他のリーダー達は知らない機能だ。」
「そんな事も子ども達に…、思ってたよりも特別なのね。」
「今から試してみる、時間が掛かりそうだから、明日のスケジュール確認は三郎中心に頼めるか。」
「了解。」
「尊が起きてたら早いのだが。」

城の住人以外に知られたら問題になりそうな機能をマリアはまず子ども達と私に教えた。
城の子ども達の口から他へ漏れてはまずい情報だ。
翌日の予定が変更される。
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70-カメラ [キング-07]

朝、コペンハーゲンの後を引き継いで現場管理をしている三郎から連絡が入る。

『こちらは至って平穏だ、夜の間もトラブルはなかったそうだ。
朝食は喜んで貰えた、三之助は嘘発見機能をさりげなく使いながら聞き取り調査をしているが、国民の状態は悪くないと話していた。』
「嘘発見機能は使えそうか?」
『三之助が感じた嘘と端末が判断した嘘とは概ね一致してるそうだ。』
「三之助が居れば嘘発見器はいらないって事か。」
『だから教えられなかったのかもな、ところで例のコロニーの様子はどうだ?』
「朝から会議、人種差別的発言が飛び交う中で状況変化に困惑している様子が伺える、リーダー格の二人が責任のなすりつけ合いを始めた所だ、帰ってから見てくれ。」
『分かった、彼等への差し入れはどうする?』
「テレビ電話でさわやかな笑顔と共にお伺いを立ててくれるか、後ろに黒人の姿が入ると効果的なんだが。」
『分かった、やってみるよ、その後、城の子が彼等の子ども達の面倒を見ている映像を見せて上げる予定なんだが。』
「ああ、翔にもアドバイスしておいた、色んな人種の子達が楽しそうに遊んでる姿が良いと。」

人を陥れるのは私達らしくない事だ。
しかし、多くの人を巧妙に老化させた連中と簡単に手を結ぶ事は出来ない。
彼等の会議風景はそれを決断させるのに充分過ぎた。

『キング、さりげなく聞き取り調査をしているがブラックコロニーの連中は実に巧妙だった様で、皆知らぬ間に争わせれていた事を意識していない様だ、落ち着けば気付くかもしれないが。』
「それは芸術的だな、三郎、家畜の世話とかはどうなっている。」
『応援に来てる人だけでも何とかなりそうだが、落ち着いて来た人が働こうとし始めた、共に働くという良い形になって来てる。』
「トラブルになりそうな所はないか?」
『スコットランドからの応援者とヒスパニック系が少し、用心して早めに作業分担を入れ替えた』
「今は、どことどこにいる?」
『スコットランドが麦畑、ヒスパニック系がスオミの連中と養豚場だ。』
「了解した、何かあったら連絡頼む。」
『ああ、ではまた。』

世界中に隠しカメラが設置されている事は以前から分かっていた、音楽村の人達がその映像を見たと話していたし、私達も相手国の映像を見せて貰った。
マリアは子ども達にその使用方法を教えてくれた、私も含めてだ。
その時はその必要性を考えていなかった、というより出来れば使いたくないと考えていた。
だが今はこの世界のリーダーとして使いこなさなくてはならないと思っている、平和の為に。
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