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41-共通言語 [キング-05]

我々はスコットランド国民を招待し、もてなしている。
来客達は食事と音楽を喜んでくれた。
だが、ささやかに始まった国際交流の合間に微妙な問題が提起された。

「英語を世界共通語にしたいと提案されたが、どう思う?」
「こちらの国民全員が英語を話せる訳でもないし。」
「昔、全世界の人が英語を理解できると思ってるアメリカ人に辟易した経験が有るが。」
「子ども達に教えて行く事は可能よ、でもね…。」
「私達の星には実に多くの言語が存在していた、歴史を考えたら仕方のない事だったのだろうけど、不便で非効率だったよね、誤解も生まれたろうし。」
「世界に一つの言語の方が効率が良いのは分かるが、日本語の使用をやめて欲しいと言われてもな。」
「文化の問題も有るわね、まあ、こちらが日本語で会話していたら向こうは翻訳機を使わないと理解出来ない、だがこちらにはそういった制約がない、若干不公平に感じているのかも。」
「極力彼等の前では日本語を使わないという事で良いだろ。」
「次に交流出来る国の言語が翻訳機に頼るしかないのか、英語で済むのかにもよるわ。」
「統一言語を一つ決めておく事は悪い事ではないが、国が増えたら揉めそうだな。」
「そうよね、過去に揉めてた国同士との国交が成立したら宗教対立の可能性も有って、共通言語どころの話ではないわよね。」
「国際法を考えなくてはいけないのかな、共通言語の話はしばらく保留にせざるを得ないと思う。」
「後から加わって来る国は成長が遅いって事よね、こちらが気を使ってあげないと嫌な世界になりかねないわ。」
「国連を先に作っておくか?」
「そうね、言語の問題もそこで…、ねえキング、次に国交が成立する国の情報はないの?」
「まだ何も聞かされてない。」
「例えば、私達とは別に国家の集合体が形成されてから、交流という事は?」
「マリアに確認したがそれはないそうだ、そんなことになったら大変だろ。」
「始めから二大陣営が対立という図式でなければ少し安心だが、他の国々はどうなっているのかな?」
「発展に手間取っているとは聞いている。」
「ねえ、生産余剰分だけど、そういった国々の住人の為に使われてる可能性はどうかしら。」
「あっ、そうか…。」
「二つの意味で生産拡大を考えるべきかも、一つはまだ見ぬ国の住人達の為、もう一つは新たな隣人を得た時、食料支援が出来る様に。」
「余力は充分過ぎるほどに有るな。」
「もう一つ意味が有るぞ、子ども達が食べ盛りになっても余裕が有る状態にしておく必要も有るだろ。」
「はは、そうだな、作り過ぎた分がゴミになっていない事を祈ってとりあえず増産体制を検討するか。」

食料生産の計画を見直す事になる。
国民からの反発はなかった。
スコットランドも賛同、無理の無い範囲で食料生産計画を変更してくれた。
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42-スコットランド [キング-05]

スコットランドの連中とはうまくやっている。
考え方の違いは少なかったし、相手を尊重する気持ちも互いに有った。
特権階級同士の会談は昼間に開いている、夜間も行き来できる我々の特権を国民に意識させない為だ。
会談では、次に交流を始める国を想定しつつ二国間の約束事を相談しまとめる作業が随分進んでいる。
国民同士の交流も順調、英語を理解できない者は翻訳機を利用するが、その利用者は極めて少なかった。
サッカーの試合は国対抗とせず混成チームで行われている、国を越えての仲間意識を高めるためだ。
そんな中で特に情報交換がなされたのは共通のテーマ、そうこの世界に対する疑問だ。

「スコットランドの連中も我々同様、単一の民族で構成されている様だな。」
「管理者の意思なのかな。」
「今後出会う国の人達もそうなのかしら。」
「過去の暮らしによる違いは有るけど、この世界へ来てから今に至る過程は極めて似通っているよな。」
「スコットランドが海の向こうに存在するのか、全く違う空間に存在するのか知りたいが。」
「調べる方法は?」
「星かな、ただ管理者が尤もらしく投影してるだけなら事実は掴めない、何か嘘くさいんだよな、日本で見ていた星空と違い過ぎるからかもしれないけど。」
「ふふ、星座占いは破綻したのね。」
「はは、土に関しては住んでいた所の物を再現してくれている、明らかに二つの島の土壌は違っているよ。」
「気候は適度な気温適度な降水量で問題ないけど、四季を感じられないのは少し寂しいわね。」
「ウインタースポーツはもう出来そうにないが、代わりに乗馬が楽しいね、どうだい麗子、多少は慣れたか?」
「少しはね、でも三丁目の連中は全員楽々と乗りこなしている、さすがよね。」
「彼等は英語が得意そうじゃなかったのに、サッカーや乗馬を通してスコットランドの連中と仲良くなってるよな。」
「仲良くしててくれて嬉しいよ、大きな声では言えないが、彼等のキングに対する忠誠心みたいな感じから…、彼等の役割は軍人ではないかと。」
「ああ、それは感じていた、彼等を軍人にしない事が我々の役目だな、何時迄も罰が有効なら要らぬ心配だが。」
「二つの国を比べてみると管理者の方針が分かる気がするな。」
「どんな部分で?」
「こちらの二丁目に相当する向こうのコミュニティで生き残ってる大人は二人だけ、三丁目に相当する連中はやはり運動能力が高い、音楽村に対して演劇集団、他は職人という構成だろ。」
「成程、この先、国交を持つ国も同じ様な形なのかな。」
「可能性は高いが、となると問題は二丁目か。」
「一つはっきりして来たのは仕事が嫌いで能力が低いという事だよな。」
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43-時間制限 [キング-05]

二丁目の連中が仕事嫌いで能力が低いという三郎の評価に一同頷く。

「どちらか一つなら救いが有るが。」
「二丁目の一人が貴重な道具を独占していた、先にここへ来たからと言ってな。
それが作業見直しのタイミングで五丁目の人と交代して貰ったら、三日掛かってた作業が一時間で終わったよ。」
「他の現場も似た様なもの、能力が極めて低い癖に文句だけは一人前だって、皆怒ってるわ。
大切な仲間の寿命が短くなって欲しくないから、対策を決めるまで相手をしないで我慢する様にお願いしておいたけど、早急に対応を決めないとね。」
「今から教育って難しくないかしら。」
「現状なら彼等が働かなくても生産活動に問題はない。」
「むしろいない方が効率的か…、他の国民と同様に働かせるのは無理が有るかもな。」
「彼等の人権は後で考えるとして、一旦仕事からはずすか?」
「働いていない連中が文句を言いながら近くに居るなんて構図は、国民の平均寿命を短くする事にしかねないと思うが。」
「少し酷かもしれないが真面目に働けないのならこの島へ入れなくするか?」
「マリアさまにお願いするのね、でも、キング、完全に排除でなく時間制限に出来ないかしら。」
「それでも構わない、今まで必要が無かったから皆に話してなかったが、スコットランドと国交が樹立した頃から国内のゲートは私の一存でかなり自由に出来るようになっている。」
「なら話は早いわね、でも国民に対してはマリアさまにお願いしたと。」
「ああ、私もそう思う、で、子ども達の事も有る、具体的にはどうする?」
「まずは時間制限で様子をみますか?」
「そうだな、朝の十時から夕方四時、但し仕事をしてなかったり愚痴ばかり人にぶつけている様なら即座にお帰り願うって可能か?」
「大丈夫だ、仕事をしてなかったり妨げになっていると感じだ人が帰宅指示を出して、こちらに連絡してくれれば、ゲート通過予定時刻を過ぎても帰宅してなかった場合は罰が有効になる、強制的に帰宅させられて、少し老けた気がするだろうな。」
「そしてコロニーが暗くなって…、経験していないから具体的は分からないが。」
「一度罰を経験したら少しは考えるかしら。」
「どうだかね、大人はそれで良いとして子ども達はどうする?」
「大人達は朝食夕食を自分達で作って必ずコロニーで済ませて貰う、子ども達は今まで通りここで食べてもコロニーで食べても良いという事でどうかな。」
「親と一緒が良いか、おいしい食事が良いかは子ども自身が決めれば良いわね。」
「なら、そろそろお泊り保育を始めましょうか。」
「お泊り保育?」
「他の子ども達も大きくなってきたから、お城で親から離れて一晩過ごすの。」
「タイミング的には良いかもな、二丁目の子ども達を城で守って行きたいが、三歳児が三人だけとはいえ他の子達とあまり差が付くのは好ましくないと思う。」
「じゃあ、八重、その方向で頼むよ。」
「ええ、親だけでなく子ども達とも相談してスケジュールを組んでみるわ。」
「将来的にはスコットランドの子ども達とも相互にお泊り会を開ける様にしたいね。」
「ああ、結構仲良くやってくれてるからな。」
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44-二丁目の住人 [キング-05]

スコットランドの子ども達と和の国の子ども達は仲良く遊んでいる。
特に城の子ども達は交流の機会が多く仲良くなっていた。

「子ども同士が仲良くしててくれると安心よね。」
「だね、問題は言語か…。」
「子ども同士の会話は何というか、単語も文法も日本語と英語が入り混じってるよな。」
「キング、言語教育はほんとにしなくて良いのか?」
「子ども達の柔軟さを明日の世界に生かせないかと思ってるのだが。」
「言葉の乱れという次元じゃない…、新たな言語の創造か…。」
「どっちの言語で会話しろとは強制出来ないからな。」
「八重は単語を教えているのか?」
「ええ、でも少しだけ、子ども同士で結構解決してるのよ、子どもだから語彙が多い訳でもないでしょ、相手の話す言葉が不思議で面白くて興味を持ったのね、子ども同士の話はごちゃまぜでも、私と話す時はきちんと日本語で話してくれてるし、向こうの大人と話す時は英語で話そうと試みているのよ。」
「それは心強いな、で、子ども同士の時はどんな基準で言葉を選んでるんだ?」
「自分に馴染みのなかった物は相手の言語、他は語感で選んでいるみたいね。」
「という事は子どもによって使う言葉が違うという事か、これで統一された言語に成長して行くのか?」
「ポイントはこれから出会う言語だろうな、出会った時の力関係も影響するだろうし。」
「現状では英語と日本語が有利になりそうだな、まあ彼等の言語に関して我々が口出しする必要はないのかもしれない。」
「少し早く生まれた分、我々の長男長女達が他の子達をリードしてる様に見えるが。」
「ええ、国に関係なく年下の子の面倒を見てくれて助かってるわ。」
「躾をきちんとして来た成果だね、八重のアドバイスが的確だったおかげだよ、有難う。」
「簡単なお手伝いも出来る様になってきた、二丁目の大人達より役に立ってるよな。」
「その二丁目の連中、最近はどう?」
「十時過ぎに来て簡単な作業、昼食を食べたらしばらくくつろいで、食材を受け取って帰ってる。」
「少し太って来たと思わない?」
「食べる事しか楽しみがないのかな。」
「記憶に残ってる童話とかの文字起こしを提案したけどだめだったわ。」
「スポーツやゲームもやる気なし、布教活動は無駄だと気付いたのかやめてくれた。」
「まあ、二人が罰を受けてから静かになって問題は減ったな、しばらくは静観するしかないみたいだね。」
「今後彼等がどんな問題行動を起こすのか…、どう思う?」
「不満が爆発して殺人というのが最悪のシナリオ、後は…、他の国民に害を与えさえしなければ良いのだが。」
「他の国民も理解をしてくれている、彼等の様子がおかしかったらすぐ連絡して貰う様頼んであるし、子ども達には近付けない体制にしてある。
排除したいというのが私も含めた国民の本音、でも人権の尊重を誰も忘れてはいない。」
「子ども達はどうだ?」
「能力的にすごく劣っているという事はないわね、お泊り保育も問題なかった。
幸いな事に二丁目の親達は子どもの事をあまり考えてないから、変に汚染されてない、自分の親より保育担当者に懐いているぐらいよ。」
「将来的に二丁目出身という事がハンディにならない様にしないとね。」
「気を付けるわ。」

二丁目の大人達は現時点で犯罪者という事ではない、ただ、その言動は時に論理性を欠き感情的になり易い。
彼等の役目は終わったのか、それとも…。
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45-レストラン [キング-05]

スコットランドとの交流が始まってから半年が過ぎた頃、マリアから告知が有った。

「順調に行けば来月、新たな国との交流が始まるそうだ。」
「いよいよか、具体的には?」
「確定ではないとの事でまだ詳しくは分からない、ただ、その後立て続けに条件をクリアする国が現れる可能性が高いと言われた。」
「スコットランド側は?」
「先ほど確認したところ同様の告知を受けたそうだ、協力して国交樹立プログラムを策定する必要が有るという事で一致している。」
「記憶が蘇るスイッチが入ってから、しばらくは国内の安定に力を注がざるを得なくなるというプロセスが同じなら、本格的に交流するまでにじっくり準備出来ると思うが。」
「そうね、でも立て続けという事だと落ち着かないかも。」
「国民とも相談して我々が外交に多くの時間をさける環境を整えておきたいと思うが。」
「二丁目の問題も落ち着いてきたから大丈夫だと思う、教育や外交に力を注いで欲しいと話してくれる人もいるよ。」
「スコットランドからは麗子の予約制レストラン、手伝うから席を増やして欲しいとの要望が有った、今後交流する国の人も招かなくてはいけないし、我が国の民からは子どもの誕生日以外でもレストランの雰囲気を味わいたいとの声が届いている。」
「それには応えて行きたいね。」
「そこで、国内のゲートに関して時間ルールを変更しようと思う。」
「キングの自由に出来るのはどこまでなの?」
「零時から六時の間以外はフリーに出来る、時間制限の理由は分からないが。」
「どんな風に変更?」
「音楽村が完全にフリーなのと二丁目の制限は今まで通り、他は夜十一時までの滞在を認めようと思う。」
「喜んで貰えると思うが、何か交換条件を出すのか?」
「当番制でレストラン運営の手伝いをお願いしたいと考えている。」
「そうか、各国の特権階級は夜におもてなしという事なのね。」
「国民も夜のレストランを利用出来る体制にしたい、昼はスコットランドに手伝って貰って外国の一般人も受け入れて行く。」
「私達の会議はどうするの、時間に余裕がなくなりそうだけど。」
「基本は今まで通りダイニングルームで八人揃って開く、レストランは麗子がいなくても充分なものが出せるから問題ない、麗子の料理教室は大きな成果を上げたからな。」
「問題は国際的な会議かな、他の客に聞かれたくない話も出て来るだろう。」
「ケースバイケースだな、部屋は有るのだからレストランにこだわる必要はないだろ。」
「リーダー同士で一対一という事も有るだろうな。」
「基本この八人で臨むべきだと思っている、物事は色々な視点で捉えて行くべきだと思うし、後から話の内容を伝えるのは二度手間だ。」
「あくまでも独裁政治をしないつもりなんだな。」
「当たり前だ。」

国民達は島に滞在できる時間延長を素直に喜んでくれた、そのおかげでレストランの新体制は新たな客人を招くまでに余裕を持って完成した。
二丁目以外の国民はほとんどの時間を島で過ごし、多くは寝る為だけに自分のコロニーへ帰る様になった。
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46-フィンランド [キング-05]

端末に表示された次なる隣人のデータはスコットランドの時より少し詳しくなっていた。

「フィンランド語か、だったらフィンランドの人達だろうな。」
「言語を明示してくれたのは、私達の時に失敗したからかしら。」
「フィンランドの人は四か国語とか話せる人が多いと記憶している、英語で会話出来そうだな。」
「でもあえて日本語、翻訳機を使ってフィンランド語を聞きながらにして欲しいそうだ、マリアはね。」
「私達の時と同じ事になる可能性が有るのかしら。」
「ああ、彼等が落ち着くまでスコットランドに出番はなく我々だけがコンタクトを取る事になる。
もう一つ、マリアは言語に対して興味を持ったそうだ、子ども同士の会話を見てね。」
「キングはマリアさまとそんな話もしているのか?」
「一時期ほとんど会話がなかったが最近になって色々質問される事が多くなった、時には意見交換もしてる、異なる言語を使う子ども達が言語の融合を試みる事は想定外だったと話していた。」
「私達も想定してなかったわ、こんな特殊な環境がなかったら起こらなかったでしょうし。」
「翻訳機を使って知らない言語を習得するのも面白いかな、でもこの先、幾つの言語と出会うのだろう。」
「マリアさま達が単一の言語で生活して来たのなら、複数の言語を理解し複数の言語で思考するという人間の存在は新鮮でしょうね。」
「誰かフィンランド語話せるか?」
「さすがにいないだろ、それよりデータを見ると子どもが二十人となっている、スコットランドの時との共通点だな。」
「こちらの子どもは六十一人、子ども同士の交流もスコットランドの時と同様、同程度の人数で交流させないとね。」
「大人は五十八人、六名死亡、データを総合的に判断すると国の規模もスコットランドと大きく違わないという感じだな。」
「このデータはスコットランドでも見てるのか。」
「ああ、特に気付いた事が有ったら知らせて貰う事になっている。」
「フィンランドとのファーストコンタクトは何時?」
「画面右上でカウントダウントしている。」
「まだお茶する時間は充分有るのね、皆さんご希望は?」

新たな隣人とも良好な関係を築かなくてはならない、麗子達の入れてくれたお茶でも皆の緊張をほぐすには充分ではなかった。
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47-スオミ [キング-05]

当初の不安をすっかり忘れる程、フィンランドとの交流がスムーズに進んでいるのは、スコットランドとの経験が生きているからだろう。
ここまでのコンタクトにスコットランドが関わらなかったのも良かったと思う、私達の判断だけで物事を進める事が出来たからだ。
外交担当は三之助、今までスコットランドと二国間で進めて来たシステムなどを説明をしている。

「三之助、フィンランドの人達はどう?」
「皆さんフレンドリーよ、相談の結果、国名はスオミ、Suomiに決めたって話してたわ。」
「じゃあこれからはスオミと呼ばないとな、システムが変更された翻訳機の使い勝手はどうだい?」
「良いわよ、フィンランド語を聞きながら訳を確認してるから良く出て来る単語は何となく分かり始めてるわ。」
「英語に関する事情は話したのか?」
「ええ、落ち着いたら翻訳機なしで語り合えるのが楽しみだって、来週末辺りに外交団を歓迎出来るみたい。」
「歓迎会にはスコットランドからも来て貰うのか、キング。」
「まずは三カ国の代表による顔合わせ、後はゆっくりで良いと思う。」
「確かに焦る必要はない、次の国の事も有るしな。」
「あっ、そうそう、次の国はドイツ語が公用語みたい、端末に予告が出てるわ。」
「早いな、ファーストコンタクトは何時頃?」
「一週間後よ、私が担当しても良いけど。」
「タイミング的に三之助はスオミに集中して貰った方が良くないか。」
「ドイツ語が公用語なら私が担当しようか、こちらがドイツ語を理解できても問題ないよな。」
「そうだな、たぶん英語を理解できる人が多いだろうから、スコットランドの出番は今回も先送り、先々を考えたら三郎に頼むのがベストだろう。」
「今後もスコットランドには先方の国情が落ち着いてから動いて貰う事になりそうね。」
「スコットランドと役割分担の調整が必要だな。」
「ああ、進めておくよ。」
「役割というか、スオミのリーダーが蘇った記憶から過去の職業を一覧にして送ってくれたわよ。」
「ふむ、教育に携わっていた人がいるのか、学校設立に向けて助言を貰えると助かるが。」
「フィンランドって教育システムがしっかりしてると聞いた事が有るわ。」
「国同士で補い合って行けると良いね、すでにスコットランドの職人技に助けられているし。」
「三之助、先方に小学校設立の計画が有る事も伝えておいてくれるか。」
「分かったわ、明日の定時連絡で伝えておく。」

学校で何をどう教えて行くかは大きな問題だ。
保育の専門家は居ても学校教育となると話は違って来る。
素人なりに考えてはいるが専門家の意見は貴重だと思う。
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48-国連 [キング-05]

しばらく落ち着かない日々が続いている。
スオミに続いて国名をミュンヘンとしたドイツの人達、同じくコペンハーゲンとしたデンマークの人達、ボルドーとしたフランスの人達との国交が始まったからだ。

「ようやく予告が途切れたわね。」
「ここまでヨーロッパばかりだけど、他の地域はどうなのかしら。」
「管理者はなぜか八にこだわってるだろ、八人のコロニーが八つ集まって一つの国、という事はあと二か国の参加でこの世界は完成という事にならないか?」
「マリアはそれを否定しなかったが、違った出会いも有るだろうと話していた。」
「意味深ね、でもまずは今の世界を安定させないとね。」
「国連への参加に前向きな人達ばかりだから大丈夫でしょ、今日の会議でも特に問題はなかったわ。」
「でも、スコットランドから出た、英語を共通言語にとの発言には反発が強かったな、翻訳機が有るからと。」
「翻訳機の精度の高さは各国とも把握してるからね、誰しも母国語を愛している、自分が理解できる言語で有っても他国の言語を特別な言語にしたくないわよね、前の世界では英語を使っている国の力が強かったけどここではそれ程でもない。」
「でも携帯型の翻訳機は数に限りが有るから…、一つの国に八台だろ。」
「現時点で唯一の問題かな、それ以外、国連内でのルールに関しては、小さな修正ぐらいで特に問題なかったわね。」
「今までスコットランドと随分時間を掛けて意見交換をしながら作って来た成果だな。」
「国連の正式スタートに向けては何か儀式的な事をするの?」
「ルールを守りますって、指切りでも良いとは思うが。」
「明日の会議で決定したいわね、えっと、プリントアウトしたルールブックの表紙に守る事を誓うと各リーダーが署名するって、どう?」
「六冊用意する訳だな、それぞれの言語で。」
「後になって解釈がどうこうとならなきゃ良いけど。」
「早い内に国民レベルでの友好を深めて揉め事を回避したいね。」
「麗子はボルドーの人達とどう?」
「フランス語はかつてフランス料理を研究してた頃に少しかじってるし、ふふ、料理は認めて頂けたわ、レストランの手伝いもして下さるそうよ。」
「キング、夜に外国の一般人を招く事は難しいのか?」
「いや、両国で話がまとまれば我が国の国民と同じ条件に出来る、ただ、しばらく様子を見てからにしたいと思っている、まだ、どんな問題が有るか見えてないだろ。」
「焦らずに各国の状況を見極めながらで良いと思うわ、ねえ、デンマーク語なんて初めて耳にしたけど、セブンはどう?」
「ああ、言葉には少しづつ馴染んでる、コペンハーゲンの人達も友好的だよ。」
「スコットランドとの様な相互協力は他の国々とも出来そうだな、どの国も余裕が有るから今の所物々交換に問題はなさそうだ、このまま金を必要としない社会が成立するのならそれも良いが。」
「人口が増えた時が問題だろうな、土地の私的所有とか、今のまま限りある国土なのかどうか…、キング、マリアさまはその辺りの事何か話してくれたか?」
「子ども達の成長を待つとの事だ。」
「子ども達か…、子ども達こそがこの世界のほんとの住人なのかもね。」
「国連を成功させないとな。」
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49-教育 [キング-05]

成立から二年が経過した国連は大きな問題もなく機能している。
当初は国家間の対立を危惧していたが、誰も対立を望まなかった。
六カ国の国家間交流は盛んに行われ、その結果暮らしがより豊かなものに。
養豚がスオミの援助でその効率を大きく上げ、ボルドーのワインを味わえる様になり、城に絵画が飾られ、アーティスト達は所属する国に関係なく、時に笑いを、時に感動を、楽しみを与えてくれている。
早い段階で、ゲートの規制を緩め夜十一時まで他国の一般人も和の国に滞在できる様にしたのは、城を会議の場としてだけでなく芸術活動の拠点とする意味合いも有った。
レストランは各国からの応援により、さらに席数を増やしたが昼も夜も盛況だ。
私達の城を中心に、六つの言語が飛び交う六カ国からなる世界が一つの共同体となった、世界の規模は村と言ってもおかしくないレベルでは有るが。
今は通貨を必要としないまま、共産主義の原点とも言える社会構造となっている。
皆、真面目に働いていて貧富の差もない、二丁目の住人に多少の規制は有るが、彼等は労働時間の短さと引き換えにそれを受け入れていた。
今後に関しては、過去の社会体制を研究しつつ、今後の社会体制を話し合っている、だがそれは未だに明確な答えは出せないでいた。
おぼろげに見えて来ているのは、子ども達がどう成長して行くかによって社会が変わるであろうという事だ。
貧富の差が有り犯罪というものを当たり前の様に受け止めていた過去とは前提条件が違う。
我々が子ども達の教育に成功して私利私欲に走る者が現れず、皆が社会の中で自分の役割を真面目に担ってくれるので有れば、今のまま通貨を必要としない平和な社会が存続するのかもしれない。
だが、最年長でさえようやく六歳になったばかりの子ども達から、それを判断するのは性急過ぎる。
そんな事情も有って教育の重要性はどの国のリーダーも真剣に考えている。
和の国で始まった学校教育への布石に各国からの参加が有ったのはこんな事情も有った。
小学校は城に住む私達の長子四人でスタート。
幸い四人の生まれには三か月の差しかない。
校舎は城の近くに建てた、今後人数が増えるので大きめに、また増築も計画されている。
朝九時には教室で授業開始。
午前中は算数や理科、国語、社会といった教科を六カ国の教育担当者が教師となって教えているが、そのまま今後のカリキュラム作りの参考にしている。
午後は国内で仕事のお手伝いをしつつ、植物や動物の観察、その後日替わりで他の国の三歳から五歳の子達と遊ぶ。
一か月もしない内に小学一年生達はこの流れに慣れた。
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50-カリキュラム [キング-05]

和の国の教育担当は三郎。

「三郎、うちの子達、今日はスオミの子と遊んだのでしょ、どうだったの?」
「向こうの九人全員、和の国のお姉さんお兄さんが大好きだから楽しそうだったよ。
今回は一昨日ミュンヘンの大人に教えて貰ったゲームを彼等に教えていた、やりながら四人で相談して皆が楽しめるルールに変えながらね、スオミの保育担当者が六歳児の発想ではないと驚いていたよ。」
「言葉は?」
「極力フィンランド語を使おうとしてた。」
「子ども達にとって六つの言語ってどうなのかな、各国の子ども達と同程度に使えているそうだけど。」
「うちの子は疑問に感じ始めている、多言語の理由は簡単に説明しておいたが…、近い将来子ども達が六つの言語を基礎に新たな共通言語を構築しても驚かないよ。」
「共通言語の問題は子ども達に丸投げになるのかしら。」
「他の学習はどうだ?」
「算数も理科も順調に進んでいる、コペンハーゲンの教育担当と話したが、過去の記憶に残る六歳児よりかなり能力が高いという事で一致した、それだけに教育プログラムの構築は簡単ではないと思う。」
「無駄で無意味なカリキュラムは彼等の反発を受けるかもね、でも大人に対して反発し上を目指す心も必要かな。」
「歴史をどう教えて行くか決めたの?」
「ああ、何年に何が起きたかなんて無意味だし、別の世界の出来事でも有るから、架空のお話として教訓的にまとめようと考えている。」
「争いのないこの世界で争いを教える意味は有るのかしら。」
「小さな我儘による小さな喧嘩はしてる、大きな争いにならない様に知識として揉め事の解決方法を教える必要はあるだろう。」
「この国の始まりについてはどうするの?」
「神話でもでっち上げるかな、俺達が経験した戦争に関しては、どの国の連中も詳しく分かってないだろ、攻撃された後情報が全く伝わって来なかった、ラジオさえ沈黙してしまったからな。」
「この世界の事だって私達は理解出来てる訳でもない、多少の作り話でも用意しておかないと子ども達に説明出来ないわね。」
「そうだな。」
「一年生に関して一つ不安なのは、彼等には身近なお手本としての先輩が存在しないという事だ、その事が心理的な歪を作りかねないと思う、すでに子ども社会ではリーダー的立場になってしまっている彼等の意思はこの世界の子ども達に大きな影響を与えると思う。」
「それは否定できないわね、教育が成功するか失敗するか、四人の子ども達がどう成長するかに掛かってる、リーダーとしての教育を考える必要が有ると思うわ。」
「そうだな、彼等はこの世界で特別な四人だ、各国の教育担当者とも、もう一度話し合ってみるよ。」

リーダーの世襲という事は考えていなかった、だが私達の子がこの世界の次なるリーダーとなる可能性は高い、早い段階でリーダー論をカリキュラムに加えるべきだろう。
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