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動植物園再生-05 ブログトップ

架空サークル-41 [動植物園再生-05]

発足式翌日、日曜日、学生たちは一気に動き始めた。
すぐ実行に移される企画もある。
連絡を取り合ったり、会合を開いたり。
昨日の興奮さめやらぬまま学生たちは動いていた。
プロジェクトは大小様々、多くの企画が結びついて大きな集合体となっているものもある。
高橋はそんなプロジェクト統括責任者だ。

「高橋さん、動物生態調査の方は動物園職員の方とも相談して色々できそうです。」
「その調査のフォローも工学部メンバーからすでに色々な案が出て来ています。
単なる映像だけでなく、得られたデータをどうまとめていくかとか。」
「その協力あって、糞の調査も形に出来そうです、にしても、糞の分類なんて思いつきもしなかったことですが、データも分かり易くして、糞処理研究チームに渡せそうです。」
「うん、ま、皆順調みたいだね。
ただ、これからは問題も起こってくると思うから、とにかく無理しない、一人で抱え込まないを守ってくれな。」
「俺は無理してでも完成させたいって思ってるけど…。」
「分かるよ、その気持ちは、俺もこの取り組み面白いから目いっぱいやりたいって思ってる…、
自分の力で成功させましたって格好いいし、結果残せたら嬉しいって思うのは当たり前、でも俺たちの壮大な実験の場では制約もある、企画がんばったけど留年とかでは本末転倒だろ。
いや、あえて留年してでもって奴が出て来てもおかしくないが、対外的にということもあるし、留年するほど抱え込むって俺達の挑戦では完全にNGなんだよ。
一つの目的にリーダー育成ってなかったか?」
「あっ、有りました、自分はタイプじゃないからスルーしていましたけど。」
「リーダーってさ全部自分でやる人かな?」
「え~っと、自分では実務をしないで人を動かすってことですか?」
「ま、色んな解釈が出て来る所なんだけど、君にもリーダーになって欲しいと思うな。」
「でも、自分そんなタイプじゃないですけど…。」
「タイプは関係ないさ、一つの作業を一人でやっても限界がある、でも、その作業を上手に後輩や仲間に振り分けることが出来たら、限界が無限に広がると思わないか。」
「あっ…。」
「実際俺だって佐々木の…、うまく言えないが…、佐々木の限界を広げる役割を担っていると思って動いている。」
「先輩たちの信頼関係って…、なんかうらやましいな…。」
「はは、俺はずいぶん議論をふっかけて、敗れた立場だから結構面白くないんだけどね。」
「あの、殴り合いの喧嘩をした後お互い分りあえて男同士抱き合う、って感じですか。」
「おいおい、そんなドラマじゃないよ。
でも…、皆がリーダーとはって考えることは大切なことだと思ってる。
この活動を通して優秀なリーダーが生まれたら面白いと思ってるよ。」
「リーダーか…。」
「佐々木なんて、どの道に進んでもトップリーダーになると思う、でもね、トップリーダーだけじゃ世の中回って行かないんだよ。
その辺りを皆には考えてみて欲しいかな。
組織を固めて行く時には色々なリーダーが必要だからね。」
「はい。」

リーダー論は上級生たちの中でずいぶん議論もされてきたことだ。
高橋の話しには色々な思いが込められていた。


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架空サークル-42 [動植物園再生-05]

動物生態調査の結果を待っている糞処理研究チームは工学部中心のプロジェクトだ。

「ちょっと先週見てきたけどやっぱ糞の処理って大変そうだな。」
「ああ、ゾウの糞なんて迫力満点だぞ。」
「ま、色んな動物がいるから対応も色々考えることが出来そうだ、糞の種類によってね。」
「やっぱロボットか?」
「俺たちのアプローチとしては外せないよな。」
「早く対象動物が決定してくれないかな。」
「対象動物以外を想定しても良いんだろ?」
「構わないさ、でも実用を目標としたいじゃないか。」
「な、床が動くって動物たち嫌がるかな?」
「えっ?」
「床をさゆっくり動かして丸ごと掃除って考えたんだけど。」
「おっ、大胆だね。」
「スピードとか頻度によるんじゃないか。」
「外と内、二部屋で暮らしてる動物なら問題ないかも。」
「ただ、ランニングコストがな。」
「確かにそうだ、シンプルに出来ないか?」
「きついよな、作りました、でも使えませんじゃ。」
「多少は他への応用ありの実験ですということで理解してもらえてもな。」
「後処理の問題もある。」
「今ってどう処理してるんだろうな?」
「草食動物のは植物の肥料にしてとこも有るらしいよ。」
「うまくやれば燃料になるだろうな、でも。」
「やっぱランニングコストか。」
「ま、それも計算して試しに設計してみても良いんじゃないのか?」
「だな、他への応用も見えて来るかもしれない。」
「再生エネルギーに関係する教育の場としてアピールできないかな。」
「まずは、既存の技術を当たってみるか? そこから可能性を模索ということで。」
「サポート企業の技術が応用出来そうだったら、共同研究も視野に入るよな。」
「観察システムチームの中には、すでに共同研究が決まりそうなとこも有るからな。」
「俺は共同にこだわってない、あ~何か企業の人たちも驚くようなの作ってみたいな~。」
「だよな、でも小さな改良でも良いよな。」
「飼育係りの人たちの負担を軽くが俺たちの目標だから…、やっぱ自分の目でもしっかり見直さないとだめじゃないのか?」
「はは、動物園へ遠足に行く?」
「行こうか?」
「おやつは三百円まで。」
「先生、バナナはおやつじゃないですよね。」
「はは。」


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架空サークル-43 [動植物園再生-05]

糞処理研究チームが遠足の計画を立てていた頃、佐々木はテレビ局の取材を受けていた。

「基本、動植物園の再生を目的としたボランティアサークルなんですよね。」
「はい。」
「それにしては多岐に渡る研究があって良く分からないのですが。」
「そうですね、色々な思いが有りまして、動植物園再生は我々の目標の一つ、そしてシンボルだと考えています。」
「目標は色々有るということですか?」
「はい、一つは我々学生が色々なことを体験するということです。
その体験は、企業の方の協力を頂いでの実習、研究だったりもします。
お堅いものだけでなく音楽などのパフォーマンスも考えています。
色々な事をこの公園を中心に行う事によって地域の活性化ということも意識しています。」
「まさに、色々な思い、なんですね。」
「はい、これから少しずつ皆さんに紹介していけると思っていますし、参加型の企画も進めていますので、そんな企画には皆さんも参加して頂きたいです。」
「単なる学生のサークルという感じではないですね。」
「そうですね、自分は総合研究所と捉えています。
色々な事を皆で研究し、その成果をこの動植物園の再生に繋げて行こうと考えています。
ちょっと、参加者ががんばってくれたお蔭で多数の企画が立ち上がり、皆さんには分りにくくなっているかもしれませんが、これから少しずつ紹介してして行きますのでよろしくお願いします。」
「確かに企画一覧を見ても色々で、今日はそこから幾つか紹介していただけるのですね。」
「はい。」

「OK! 佐々木君さすがだね。」
「えっ?」
「手元に君が書いてくれた資料が有るけど難しいって思ってたんだよ。
結構バッサリ要約してくれて助かったよ。」
「それでも、やはり難しいんでしょうね、研究とか言われてもピンとこない人多いだろうし。」
「その辺りは時間を掛けてで良いと思うよ。
まだスタートしたばかりなんだし、具体例が増えていけば認知されて行くんじゃないかな。」
「そうですね。」
「じゃあ、次は改装予定の売店へ行こうか。」
「はい、お願いします。」


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架空サークル-44 [動植物園再生-05]

佐々木がテレビ局の取材を受けていた頃、テレビ局のローカルニュースでは、まだ扱いが小さいながらも発足式の様子が紹介され始めていた。
さよりの友人、佐伯明香はそれを両親と見ていた。

「これに明香も参加してるのか?」
「うん。」
「でも学生のサークル発足式ってピンと来ないな。」
「まあ、普通のサークルじゃないからね、市長も来てたし。」
「大学の壁を越えてか…、良い男いるのか?」
「いるいる、代表の佐々木先輩なんて頭も良いしね。」
「明香の目的はそっちなの?」
「違うわよお母さん、かなり真面目に考えてるのよ、でも出会いが有っても良いかな…。」
「将来性はどうなんだ、その…、男子学生達の。」
「はは、父さんたら気になるの? 
基本、真面目で頭のいい人達が多いからね。
企業の方々が先輩方を狙ってるオーラ半端じゃなかったわ。」
「そうか、優秀な学生はどこも欲しいからな。」
「でもこんな真面目な活動だったら母さんも安心だわ。
男子学生が女子大へ来るなんて言ってたからちょと心配だったのよ。」
「はは、すごかったわよルックスの良い先輩も来て下さったからね。
へへ、結局昨日ファンクラブ結成へ動き始めたし。」
「それって、本来の目的からそれてないか?」
「ま、遊び心と公園の魅力アップ。
佐々木先輩が困った顔して賛同して下ってた姿はかわいかったな~。」
「お前らはすぐかわいい、かわいいって、どうなんだ、それって。」
「だって、かわいかったんだもん、お父さんは女心分かってな~い。」
「あらっ、この子が佐々木さんなの?」
「そうよ。」
「イケメンじゃない。」
「でしょ。」
「私もファンクラブに入ろうかしら。」
「おいおい…、母さん…、お茶くれ。」


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架空サークル-45 [動植物園再生-05]

佐伯明香の父がふて腐れていた頃、某大学二年生の大川は自室でパソコンを見ていた。

『あっ、サークルからメールだ…、お~、サイト本格運用開始…、チェックをお願いしますか、そりゃ皆でチェックしていかないとな…、コンテンツ膨大な量になりそうだし。
え~っと…、この前、見た時は準備中ばっかだったけど…、お~、デザイン良いんじゃないか。
うん、がんばったな奴ら…、良い出来だぞ、プロ目指していると聞いていたけどやっぱ違うな…、はは、しかしこの企画の数…、多すぎるよな、普通に考えたら、スタートしたばかりでこの数は…。
ブログはどうなんだ?
さすがに一発目は佐々木先輩だな…。
なんか雲の上の存在だよな、先輩…。
これはメインブログで日替わり投稿を予定ということか。
企画の方は…? そうかプロジェクトごとでもブロク立ち上げてるんだ…、まだ全部という訳でもなさそうだな。。
おっと、自分のとこ確認しなきゃな…、うん、あ、うちらもブログ立ち上げたんだ、この文は…、桜井さんだな…、結構うまくまとめてある…。
あまり目立たない子だと思ってたけど、人は見かけによらないってことか…。
う~ん、やっぱ俺もスタッフに立候補しようかな…、でも学業を疎かにするなってとこが一般メンバーより厳しくなるから…、最近のスタッフ連中、何か、やたら腹括って企画に取り組みますって…、決意表明かもしれないけど…、俺でもついていけるのか?
しかしな…、腹括ってって、いつの間にか流行語になってきてないか、俺たちの…、いい加減な気持ちではスタッフ出来ないよな…。
やってみたいような、怖いような…、もう少し様子をみるかな…。』

その頃、中山の部屋には遠藤が遊びに来ていた。
ノートパソコンを覗き込みながら…。

「中山、サイトの完成度結構高いぞ。」
「どんな感じなんだ…。」
「ほら、結構見やすく設計してあるだろ…。」

本格運用スタートとなったばかりのサークルのウエブサイトを見る二人。

「…、うんそうだな、遠藤の知り合いなんだろ、メインで作業してるの。」
「ああ、企画の多さに悲鳴を上げてたけどな、とにかくベースを作るのが大変で、まあベースの完成度が高ければ、後の更新は楽なもんだって言ってたけど。」
「とは言っても先々のこと考えたら楽じゃないだろうな。」
「ブログとかも組み合わせて、各プロジェクトが更新できる体制とか言ってた。
データベース系はまた違う連中が取り組むらしい。」
「そうか…、共同研究の中には微妙なのも有るけど、原則すべて公開だからな。」
「あっ、もう、裏話的なのアップしてる奴らもいるぞ。」
「う~ん、焦り過ぎてもな…。」
「なあ中山、プロジェクトが色々有る訳だからさ、時間差でどうだ?」
「時間差?」
「今日は奴らが目立ってるけど、ずっと懸命に更新じゃ、その内きつくなるかもしれない、きつくなるちょっと前のタイミングで他のプロジェクトが更新回数増やすとかさ。」
「そうだな、個々としてはばらつきが有っても全体として途切れなく更新されてればイメージは良いかもな…、うん、まずは俺関連のプロジェクトに相談を持ちかけてみるよ。」
「じゃあ俺も動くよ、皆が無理なく続けられる様に気を配るのが俺たちの役割だからな。」


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架空サークル-46 [動植物園再生-05]

公園内での本格的活動はサークル発足式の翌週から始まった。
その活動の一つは美大生が中心。

「準くん私、ここでいいの?」
「良いよ、準備始めてね。」
「おっけい。」
「俺はここで良いんだよな?」
「ああ、安本は、綾ちゃんと随分芸風が違うから、そこがベスト。」
「準くん、寄付の受付はここ?」
「えっと、もう少しコアラ舎よりで頼む、そこにもう一人入る予定なんだ。」
「了解。」
「サンプルの似顔絵を飾り終わったから、私は、もうお客さん待ちで良いのかな。」
「ああ香澄ちゃん…、こっからが本番…。」

落ち着かない表情の香澄に近づいたのは三十そこそこと見受けられる女性。

「ねえねえ、ここで似顔絵を描いてくれるってことなの?」
「はい。」
「料金は?」
「えっと五百円の寄付をお願いしています、ちょっとごめんなさい、準く~ん、寄付とかの案内がまだよ~。」
「おう、ごめん急ぐよ。」
「失礼しました、五百円の寄付というのはこの公園の再生のためのものです。」
「じゃあ、皆さんはアルバイトというよりボランテイア?」
「ええ、つい最近発足したばかりで、この公園の再生とか考えています。」
「え~っと、絵描きさん? 何人かいるけど…。」
「後ろのサンプルを見て気に入った作風を選んで下さい。」
「なるほど…、私、あなたの作風気に入った、お願いしてもいいかな、えっと…、時間の目安も有るのね。」
「はい、私たちも個人差がありますから、ではポーズをお願いします。」
「これで良いかしら。」
「はい。」
「ね、描いてる間、お話ししても良いの?」
「大丈夫ですよ。」
「皆さん学生さん?」
「はい、美大生が中心です。」
「こういう似顔絵も自分たちのプラスになるのかな?」
「練習になります、でもそれだけではなくて、別で仕上げた自分の作品が作品展で発表させて貰えることになっています。」
「そっか単純なただ働きでもないのね。」
「ええ、スポンサーからは画材の提供も受けていますから。」
「あっ、五百円は全額寄付なのね。」
「そうです…。」

絵が完成した。

「わっ、思ってたより良い感じ、ほんとに予定時間通りで早かったし、有難うね。」
「いえ、こちらこそ、えっと、完成品の写真だけ撮らせてもらって良いですか?」
「もちろんよ、じゃ寄付してくね。」
「有難うございます。」
「あっ、ちょっとあなたのサインも入れてくれないかな。」
「はい、ちょっと照れくさいですけど。」
「じゃあね~、そうだゴリラを見に行ってる連中にも教えてあげよう。」
絵を片手にスマホを取り出す女性。

開始から一時間もしない内に人だかりが出来ていた。
絵描きは一人一時間程度の作業を予定していた。
個人の負担が大きくならない様、メンバーが交代しながらと考えていたのだ。

「準くん、やれる人は時間延長した方が良くない?」
「そうだな、予想外の反響だから…。」

そこへ佐々木光一が遠藤真一他三十名程のメンバーと共に現れた。
「やっぱり盛り上がったな準。」
「佐々木さん、ここまでとは思ってなかったです。
絵描きからは、個人の時間を延長しても、という声も出てますが…。」
「じゃあ、準は公園職員の方に若干場を広げるお願いをして、フォローは遠藤の出番だな。」
「ま、この人数は予測の範囲だからな、じゃ計算チームは、ここから時間当たりどれぐらいの人数をさばけるか、画家たちの人数の変動や人気のばらつき具合も考慮して、論理的に終了予定時間までにこなせる人数を計算してみようか。
待ち時間も並んで下さってる方々に明示出来る様にしてくれな。」
計算チームが作業に取りかかる。
「接客チームも出番だ、待っている間に我々の活動の宣伝と、計算チームの結果から予想待ち時間を伝えたり、お話し相手になったり、終盤ではお断りしなくてはならなくなるから丁重に頼むね。」
「はい。」
接客チームは笑顔で、並んで待っている人たちの中に入っていく。
「こんにちは~、私たち学生中心に結成されたばかりのサークルなんです。
今日は似顔絵プロジェクトの一回目の活動で…。」

「まあ、良い感じだな彼女達、う~ん…、待っていただいてる間…、佐々木、演奏家も一人呼ぶか?」
「微妙だな、確かに演奏を聴きながら待ち時間を過ごしていただくということは良いかもしれないが、すでにこの人数だから、演奏でさらに増えてしまってはまずくないかな。
ここは接客チームにがんばってもらうということでどうだ?」
「そうだな。」

「佐々木さん遠藤さん、公園職員の方と絵描きとで相談してこっからの人の流れを決めました。
結果は計算チームの方に伝えて有ります、すいません、自分ちょっと甘かったです。」
「何、初回なんだから気にするなよ。」
「はい。」

「なあ遠藤、色々検討課題が有りそうだな。」
「だな、流れとかを考えてもらう様に、今日の報告とタイミングを合わせて発信していくよ。」
「うん、頼む。」

「ねえ準、寄付の方はどう?」
「はい佐々木さん、もちろん人数掛ける五百円は順調に集まってます。
絵が気に入らなかったら払わないって人もいましたけど、ちゃんと払って下さいましたから。
絵を気に入って下さった方の中にはお札を入れて下さった方もみえますし、絵描きのちゃんとした作品もみたいと仰って下さる方も…、作品展へ向けて心強いです。」
「準、次回からは君がもっと落ち着いて動ける体制にするからな。」
「有難うございます、企画を考えてた時にはこんな形で他の学部の方が協力してくれるなんて思ってなくて、自分で全部やらなきゃって思ってましたから…、しかも佐々木さんも遠藤さんも知らない内に自分達のフォローを考えていて下さって。」
「この学部を越えた協力ということこそが、俺たちのサークルの大きな目的の一つだからね、今日の取り組みは、その良いサンプルになったと思ってるよ、有難うな準。」
「いえ、自分は…。」
「明日も計算チーム接客チーム、若干の入れ替わりが有るけど手伝うからな、ま、今日の反省を踏まえてレベルアップは考えていくけどね。」
「はい、遠藤さんよろしくお願いします。」


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架空サークル-47 [動植物園再生-05]

佐々木と遠藤は準たちにメールでの状況報告、またトラブル発生時にはすぐ連絡を入れるよう指示を出した後、植物園へ向かう、しばらくして彼らの耳に届いたのはバイオリンの調べだった。

「さすがだね、俺じゃあれだけの表現は出来ない、やっぱ滝沢さんの演奏は良いな。」
「えっ? 今日ってバイオリニスト一人じゃなかったよな、音で誰の演奏かまで分かるのか?」
「ずっと注目してるからね、コンクールで一緒になったことも有るし。」
「えっ!! お前バイオリンコンクールに出てたのか!」
「ああ、でも別に趣味の一つって程度だから、二位とか三位ばっかだったよ、小さいコンクールのな。」
「う~ん、それってすごいのかすごくないのか全然分からんが…。」
「彼女は金賞か一位ばっかさ、しかも練習の時はめちゃ良くてね、聴いてて涙が出る程だった。
でも本番は…、それほどでなくても一位、実力を考えたら二位との差はかなりなものだろうな。」
「本番が苦手なタイプか。」
「そうだな、ちょっと惜しいが。」
「でもそんなレベルの子が、よくこんな企画に乗ってくれたものだな。」
「本番の機会が少ないという現実が有るんだ。」
「う~ん、良く分からない。」
「演奏家として上を目指している人にとって、特に若い世代にとっては百回の練習より一回の本番ということも有るんだ。」
「本番か。」
「練習でどれだけ上手に弾けても、本番で上手い演奏が出来なかったら誰も認めてくれないんだぞ、プロの世界って。」
「あっ、そういうことか、本番に慣れたいと。」
「俺の場合は、実力の割には本番に強いって言われたけどな。」
「はは、分る気がするぜ。」
「活動を通して彼女のファンが増えたらって思う、そしたら本番の回数も、その規模も違ってくるだろ…。」

「あっ、あそこで演奏してる、結構観客多いな、テレビカメラこっちにも来てるんだな。」
「局側の対応もまだ完全に決定じゃないけど、似顔絵も生演奏もテレビの絵的に良いと思わないか?」
「実力もあれば…、クラシックってあまり聴いたことなかったけど、こうして聴くと良いもんだな。
うん、絵になってるな。」
「もう一押ししておこうかな。」
「佐々木、何か企んでるのか?」
「はは、企んでるなんて人聞きの悪い表現使わないでくれよ。」
「とりあえず後で滝沢さん、紹介してくれよな。」
「もちろんだ。」


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架空サークル-48 [動植物園再生-05]

佐々木たちは少し遠くから滝沢桜子の演奏を見ていた。

「特に問題はなさそうだよな。」
「ああ、サポートもちゃんと見守ってる。」
「なあ佐々木、あの子、アイドル的な要素も持っていると思うな。」
「えっ? 遠藤…、俺にはそういう感覚…、良く分からないが…。」
「彼女の演奏を初めて見たけど、演出を間違えなかったらちょっと行けると思うんだ。」
「演出か…。」
「ああ、演出って大きいぞ、うまく行けば彼女の才能を最大限に引き出せる。」
「でも、本人の…、容姿とか実力とかは演出によっては変わらないだろ?」
「はは、アイドルの世界なんて、どこにでもいるような歌も踊りも下手で、そんなに美形でもない子がファンを集めたりもしてるんだぜ、演出の力でね。
滝沢さんはルックスも良いから、俺も応援したくなってきたな。」
「アイドルって滝沢さんとは分野違うんじゃないのか?」
「佐々木にしては珍しく考えが固いな。」
「いや、その前にアイドルって良く分かってないんだ、考察したことなかったし。」
「ならば…、どうだ、滝沢さんをアイドル的バイオリニストにするなんて企画。」
「遠藤、確かに個性的なバイオリニストはいるんだ…、けど…、アイドルの定義ってなんだ?」
「そう来たか…。」

しばらく話し合う二人。

滝沢の演奏は終わった、次の演奏家と替わる。
演奏を終えた滝沢桜子は国井さより橋本裕子、そしてテレビ局の山田と共に佐々木たちの所へ。
「佐々木さん、お久しぶりです。」
「滝沢さん、演奏良かったよ。」
「有難うございます。」
「でもびっくりしたな、桜子が佐々木先輩知ってたとか、先輩がバイオリンやってるなんて、思ってもみなかった。」
「はは、で、さよりさん、そちらの方は?」
「あ、ごめんなさい、取材に来て下さってる山田さんです。」
「よろしく。」
「こちらこそ。」
「佐々木ちょうど良いんじゃないか。」
「そうだな、向こうの休憩所で落ち着いて話しをさせていただけたらと、山田さんいかがですか?」
「大丈夫だよ、何かあったら連絡入れるように指示は出してあるからね。」
「では…。」

休憩所へ移動。
それに気付いたサポートの学生が飲み物を届けてくれる。

「え~と、少し長くなるかもしれませんが、今まで自分が考えていたことプラス、さっきまで遠藤と練ってたことを提案させてもらいます。
まず、我々のテーマの一つに成長ということが有ります。
で、山田さん、局として滝沢さん橋本さん達の成長ということを取り上げてみませんか。」
「それはここの再生プログラムを通してってことなのかな?」
「いえ、ここでの演奏は、きっかけという程度です。
我々はこの場にこだわっていません、シンボルでありメインの活動拠点では有りますが、大学間の交流、分野を越えた協力というテーマも持っていますから。
自分が滝沢さんの演奏に感動したのは、コンクール本番ではなくその練習を聴いてです。
人前での演奏に関して、彼女の伸び代はすごく有ると思っています。」
顔を赤らめ下を向く滝沢。
「今日は演奏前のトークに橋本さんを提案しておいたけど、さよりさんどうでした?」
「良かったと思います、曲への流れが自然で。」
山田の方に目をやるさより。
「だね、演奏も良かったけど橋本さんも良かったよ。」
「滝沢さんは?」
「は、はい橋本さんのおかげで演奏に入り易かったです。」
小さな声で答える滝沢。
「すごく実力が有りながら、それを充分に発揮できてない演奏家がここにいます。
その成長の物語を、そこに関係していく学生の成長と共に描いていくというのをメインテーマにしたら面白い番組が出来るのではないかと思っているんです。
まず、滝沢さんの演奏、今日の演奏に向けてしばらく前にカルテットとかの録音を聴かせて貰いました。
悪くはなかったのですが、正直言って他の演奏家が滝沢さんの演奏についていけてないと感じまして。
山田さん、彼女にプロとの共演の機会を作れないでしょうか。
彼女の力を引き出せるだけのプロの力を見せる、それだけでも企画として面白いと思いませんか?
さらにその番組進行はその道のプロのアドバイスをいただいての、橋本さん達学生、どんなアドバイスを受けて録画に臨んだとか裏も見せていけば面白と思うのですが。
そして演出、照明、カメラ諸々も同様に学生達がアドバイスを受けながら担当する、実際の番組制作の裏側を学生を通して紹介していくって感覚なんですけど。
一回だけでなく継続して行って、その成長記録を何か月後かにまとめる。
成長のドラマを見せて行くって感じで。
企画としては、滝沢さんのイメージビデオを学生が作成するとかも有りです。
橋本さん達のパフォーマンスをアピールしてみたり、ダンスやってる子達の本気、歌を歌ってる連中の思い…、中にはクオリティの低い人もいるだろうけど、そこはオーデションとかで整理しつつ、でも実力不足の子を追ってみても良いかもしれません。」
「はは色々考えているんだね、面白いかも…、うん、素人の成長過程を追うってことか…、ジャンルは色々…。
これは局に持ち帰らせて貰うよ、地元発信…、地元学生が主役か…。」
「暫定的に遠藤が窓口になります、だめそうなら他の局をあたりますので早めにお願いします。」
「そう来たか厳しいね、君たちの活動って不気味なんだよ、下手な対応したらうちのスポンサーが黙ってないって、昨日も上から脅されたからね。」
「生意気言ってすいません。」
「いや、それぐらいの方がこっちも気合が入るよ、そのまんま上に伝えるから、たぶん大丈夫だろう、遠藤君の連絡先聞いておこうかな。」
「はい。」


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架空サークル-49 [動植物園再生-05]

遠藤と情報交換の後、山田はカメラマンの所へ。

「佐々木さ~ん…。」
不安そうにつぶやく滝沢。
「滝沢さん、ごめん、ちょっと驚かしちゃったかな。」
「私…、どうすれば…。」
「ま、良い演奏してくれれば良いんだよ。
前に会った時、上を目指してますって言ってたよね、今も変わらないんだろ?」
「は、はい…。」
遠藤が口を開く。
「自分は素人だけど、さっきの演奏良かったよ。
佐々木の心臓は鋼鉄で出来てるけど、君のハートは薄いガラスなのかな、今は。
そのままでも良いしダイヤモンドに替えても良いんだけどね。」
「遠藤先輩、佐々木先輩の気障が伝染してますよ。」
「はは、まあちょっと踏み込んだ話しをさせてくれな。」
「はい。」
「さっき俺たちが考えていたのはアイドルについてなんだ。」
「えっ?」
「パフォーマンス系の連中を演出によってより魅力的な存在に出来ないかってこと。」
「なんかサークルの趣旨と違ってませんか?」
「いや、俺たちには、地元を盛り上げるって目標もあるからね。
でね、演出って重要なことだと思うんだ。
俺たちは自分たちのサークルをどう演出して、どう世間に認めてもらうかという課題も持ってる。
佐々木も話してた通り、目的の中には俺たちの成長ということも有る。
滝沢さんは演奏も良いけどルックスも良いから、アイドル的な売り方もできると思ったんだ。
アイドル的な売り方で人気を上げて行く中で実力もアップして世間に認めて貰うという方向性を考えてみた。」
「そ、そんな…、アイドルなんて私、無理です…。」
「はは、今時のアイドルなんて名刺の肩書きをアイドルにして配ればなれる程度だからそんなに深く考え無くていいんだよ。
人前での演奏が苦手だったら、リラックスして出来た最高の演奏を利用してビデオを作る。
映像は橋本さんとかさよりさんとかにも参加して貰えば心強いだろ?
なんなら、佐々木も貸すけど。」
「おいおい俺はだめだろ。」
「うん面白いかも。」
「男性ファンが減らないか?」
「女性ファンは増えますよね。」
「そうか?」
「ほらこんな形で始めたらプレッシャーは少ないでしょ、滝沢さん。」
「でも…。」
「そして俺たちにはバイオリニストというシンボルが出来るのさ。
もちろん橋本さん達のパフォーマンスもシンボルになる。」
「でも私たちのレベルはまだ低いですよ。」
「アイドルオタクと話してる時にね、純粋にアイドルの成長を見守り成功を喜んでいるって感じたことがあるんだ。
ま、君たちは既存のアイドルとはちょっと違うから展開が読めない部分も有るし…、演出の仕方も違って来るから…、そこが難しくも有り面白くも有るんだけどね。」
「遠藤先輩ってアイドルオタクだったのですか?」
「オタクってレベルにはほど遠いけど、オーラがすごいって感じた子がいて、アイドルってなんだろうって考えたことが有るんだ。」
「オーラですか…。」
「華が違うかな、はは滝沢さんは演奏中と今とでは全然違う、演奏中は…、あっ、そうそう君たちの衣装ももっと踏み込んで考えてみないか?」
「? どういうことです?」
「今日は、背景を意識して衣装を選んだのかな?」
「あっ、そんなこと気にもしていませんでした。」
「こんなことも演出なんだよ、同じ演奏でも、聴いてる人への届き方が変わってくるってことかな。」
「遠藤先輩、私…、あ~、全然考えてなかった、ごめん桜子、裕子。」
「気にしないで。」
「うん。」
「さよりさん、これからサポート体制作って行くから協力頼むな。」
「もちろんです、大きいプロジェクトになりそうですよね、私メインスタッフになっていいですか?」
「佐々木、良いよな。」
「ああ任せたい、ただし全部一人で抱え込むなよ。」
「あ~、そうでした、自分であれやってこれやってなんて考え始めてましたけど、うわ~。」
「大丈夫?」
「ふふ、バランス感覚を持って調整していく力でしたよね、人を生かす力を持ったら自分の世界がどんどん広がっていくって、先輩の言葉忘れてません。
自分のスキルを上げて行くトレーニングと思ってがんばります。」
「さよりのパワーには圧倒されるな…。」
「ですよね裕子さん…。」


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架空サークル-50 [動植物園再生-05]

「それから。」
と意を決したと言わんばかりに、佐々木達を見つめるさより。
「私がんばりますから、私のこと、さよりって呼んで下さいませんか、何時までもさよりさんじゃチームの結束が…、対外的にも疑われます。」
「う~ん…、西山の手前…。」
「健くんはそんなこと気にしないですよ。」
「私も、裕子って呼んでいただけたら。」
「あ、あの~、え~っと、私も…、桜子って…。」
「ふふ、桜子ったら顔真っ赤じゃん。」
「ちょっと、どきどきするな…。」
「遠藤先輩、桜子に惚れましたか?」
「ま、細かいことは気にするな。」
「ね、桜子、腹括った?」
「えっ?」
「本気でプロを目指すなら皆で応援するけど。」
「さより…、ちょっと緊張してるけど、がんばる。」
「適度な緊張は必要、ただ本番でいかに緊張してない振りを出来るかが重要って誰かが言ってたな。」
「あっ、佐々木さん…、それ名言かもしれません、私の座右の銘にします。」
「私も…。」

「ねえ、裕子。」
「は、はい佐々木先輩。」
「一人芝居ってやったことある?」
「エチュードでなら少しだけ有りますけど。」
「セリフ一切なしってどう?」
「え~、ハードル高いな。」
「桜子の演奏とのコラボってどうかな?
無理そうなら他の人を当たるけど。」
「えっ、えっ…、先輩ってサディストだったのですか…、そんなの、やりたくてやりたくないっていうか…、え~、やってみたいけど…、怖すぎで…、あ~ん、遠藤先輩助けて下さ~い。」
「はは、すぐ答えを出す必要はないからね、ちょっと絵にならないかなと思ってね。」
「もしかして発案は遠藤先輩なのですか…。」
「バイオリンとのコラボで君が目立てば桜子も楽にならないかと思ったのさ。」
「あのですね、一人芝居ということだけでもすごく大変なことなんですよ、それを動きだけでなんて…。」
「ま、やってみないか? だめだったらやめれば良いだけだからさ、桜子はどう?」
「私は裕子さんとならやってみたいです、今日も…、演奏前の緊張を軽くしてもらえましたから。」
「う~ん…、でもほんとに私のレベルが低かったらちゃんとストップかけて下さいませんか。
桜子さんと組むってことは…、それなりの覚悟が必要だって思いますから…。」
「ま、やってみてよ、それから次の可能性を考えれば良いんだし、時間かけても良いからね。」
「時間かけたらだめです、勢いって大切なんですよ、でも、ストーリーとか…。」
「ごめん忘れてた、台本とか演出スタッフもちゃんと探すからね。」
「裕子、見つからなかったら遠藤が演出とか仕切るそうだ。」
「えっ? え~っと…、あ~、だめだめ、とにかく色々考える時間下さい…。」
「遠藤じゃだめなのか?」
「い、いえそういうことではなくて、もう…、あっもうすぐ最後の出番なんで準備に行きますね。」
立ち去る裕子。

「裕子の最後の出番って?」
「え~っと、まあ気にしないで下さい。」
「さよりはどう思う?」
「私も彼女の演技を全部知ってる訳では無いですから…、ただ全否定しなっかったってことは…、先輩方、面白くなるかもです。」
「私、迷惑かけたかな~。」
「桜子は、とにかく堂々としてなさい。」
「うん…。」


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