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架空サークル-21 [動植物園再生-03]

再び学長室

「お疲れさま。」
と、ねぎらいの言葉を掛けたのは桐山祥子学長。

「疲れました~。」
「え~中山先輩大したことしてないじゃん。」
「お、お夏、そんなほんとのこと言っちゃだめでしょ。」
「あ、そうだった。」
「はは、まあ中山もがんばったということにしといてやってくれな。」
「はい、光一先輩がそうおっしゃるのなら、さ、お飲み物どうぞ。
は~い、他の方々、お茶とコーヒーどちらがいいですか~?」
「ちょっと待て、俺だってそれなりにがんばったのに、佐々木はちゃんとしたティーカップで…、レモンティー? で、俺たちは紙コップか?」
「中山君、世の中は不公平なものなのよ。」
「が、学長~。」

演劇部の橋本裕子、華道部の佐伯明香も自分たちのサークル紹介を終えて手伝いに来ている。
「さ、先輩お菓子もどうぞ、佐伯明香と申します、よろしくお願いします。」
「いや、こちらこそ…、そう言えば、まだ四人だったんだね。」
「ふふ、でも佐々木先輩、今日の感触ではかなり増えそうですよ。」
「そうだな、メインのスタッフとかプロジェクトを立ち上げるといった人は分からないけど、人手が欲しい時に動いてくれそうな人は結構いたね。」
「参加しやすいシステムで広めて、そこから色々動いてくれる人が出てきたら面白いって、亀田さんも話しておられました。
始めからハードルが高いと確かに盛り上がらないと思います。」
「しかし、真面目な子だけにして欲しいかな…。」
「ふふ、遠藤先輩大変でしたね。」
「まったく、人が真面目に話してるのに…。」
「でも彼女たちは結構真面目なんですよ。
もう入会するつもりで遠藤先輩の所へ集まった子達で、まあ、女子大に現れた男子学生に若干興奮気味だったということで、許してあげて下さい。」
「ああ…。」
「ちなみに先輩の評価、結構高かったんですから。」
「えっ、俺は佐々木と違って…。」
「女子が外見だけで判断してると思ったら大違いですよ。」
「じゃあ俺も?」
「中山先輩は、もう少し芸風を固めていかないと…。」
「え~、俺は芸人じゃないぞ。」

「はは、ま、お楽しみのところ申し訳ないが、ちょっと連絡事項があって…、いいかな?」
一同、佐々木の方に目を向ける。

「役所の永田さんから連絡があって、皆が今練ってる企画の第一回目の締切を四月末にするとのことだ。
企画書の完成までに、まだ時間がかかるという場合でも、途中経過ということでもいいから一つの形にする、また必要な予算も概算でいいから出して欲しいとのこと、今後の活動に大きく影響するので無理をしてでもお願いしたいそうだ。」
「えっ、今までは永田さん、どちらかというと、じっくり取り組んで下さいという感じじゃなかったか?」
「う~ん、まあ、俺も断言できることではないが、サークルに係わって下さってる方々が色々動いて下さってる成果が出つつあるのだと思う。
関係するメンバーへは俺からメールを入れるけど、自分のプロジェクトを持っている人は頑張って欲しいし、サブ的についてる人たちも、まじで動いて欲しい、無理をしてでもなんて普段絶対言わない様な人からの連絡だし…、もう一つ、俺たちのサークル、その発足式がゴールデンウイーク開けの土曜日に決定した。
これには市長も出席して下さる予定だそうだ。」
「おお~。」
「発足式に向けての準備会は次の土曜日…、で、永田さんからのメールの最後に…、光一、腹を括れとあった…。」

学長室は静寂に包まれる。
各自、言葉の意味、重みを考える。
しばらくの沈黙の後、口を開いたのは桐山学長だった。

「私もまだ少ししか話しは聞いてないけど、はは、わくわくしてるの…、私からも、光一君、腹を括ってがんばって。」
「は、はい。」


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架空サークル-22 [動植物園再生-03]

サークル発足式に向けての準備会。
進行は高橋。

「では、会議を始めます。
本日の議題はサークル正式発足に向けて、今まで暫定的だったスタッフ組織を対外的にきちんとすること。
企画について。
それと具体的な発足式の進行。」

今までのメインスタッフはかなり暫定的な形だった。
それは、メンバーが各大学からの寄せ集めだったことに起因する。
お互いの力量が把握出来ない状況では致し方なかろう。
総務を担当している佐々木の場合でも、総務的な人が必要だとなった時、「じゃあ俺やるよ。」という感じで軽く決まっていた。
だが、いよいよ正式スタートとなるとそうもいかないが、初顔合わせから四か月経過、お互いの力量は分かってきている。

「まずはサークルの代表を選出したいと思います、今まで曖昧でしたが…。」
「佐々木君ではどうでしょう。」
声を上げたのは遠藤、事前に高橋と打ち合わせをしていた、進行を早める為だ。
「佐々木で良いけど、代表? リーダーとか、呼び方はどうなのかな?」
「対外的には代表、内輪的には親分でいいんじゃね。」
「親分なんて佐々木さんに合ってないわ…。」
ひとしきり、不規則発言? が続くが…、高橋が場を収めて。
「佐々木、どうだ? 腹括ったか?」
「はは、まいったな…、ちゃんと決をとってくれないか、高橋、呼び方とかは置いといてさ。」
「だな…、サークル代表に立候補する人いたら挙手願います。」
誰も手を上げない。
「いなければ、佐々木光一が我々の代表になることを承認する人、挙手をお願いします。」
全員が手を上げた。
そして立ち上がる佐々木。

「えっと、みんな有難う、正直戸惑いもあるけど、俺たちのサークルを最高のものにしよう、もう感じてる人も多いと思うけど、単なる大学生のサークルじゃないからね。
何かこの所、俺に対して、腹を括れ、腹を括れって声が届くんだけど、ここに居るメンバーはプロジェクトのリーダーだったりする訳だからさ、一緒に腹括ってくれるよな。」
「おう。」
佐々木の人柄のなせる技なのだろうか、会場は一つとなる。
「なあ佐々木、進行変わろうか?」
「いや、高橋が続けてくれよ、ただスタッフ人事に関してはサークル発足式の後にしたいんだ、何か微妙に教えて貰えてないことがあって、その辺りがはっきりしてからの方が良いと思ってる。」
「うむ、佐々木がそう言うなら…、皆さんどうですか。」
「オッケ~。」
「はは、では企画について。」
「これはやっぱり佐々木から説明して欲しいな。」
「おう、メールで知らせた通りなんだけど、それ以上の情報は貰えてない。
「永田さんは教えて下さらないんですか?」
後ろで見守る市職員永田の方へ目を向ける一同。
「それについては俺から話すよ。」
と、佐々木。
「守秘義務って聞いたことあるかな。」
「えっ、そんなレベルの話しなのか?」
「永田さんが教えてくれないのはただの意地悪かもしれない。」
「はは。」
「ただ、守秘義務は我々に生じてくる可能性もあると思って欲しいんだ。」
「隠さなきゃいけないことなんて有るのか?」
「組織固めを考えているメインスタッフは、すでに市会議員の方と話しをさせていただいたりもしている。
今後は、もっと色々な方々たちと接する機会が出てくると思う。
そんな時に何かのはずみで…、軽い気持ちでは口外していけないことを目にしたり耳に…、ということも充分あり得る話しなんだ。
注意が必要になる過程で皆にも具体的に話していくつもりだけど。
まあ、推測だけで話しているから気にしなくていいかもしれない。
で、俺の推測では、企画書の内容が良ければ、何人かの人生を左右するかもしれない。」
「まじ?」
「ま、人によって当たり外れもあると思って欲しいけど、企画書は真面目に練って提出して欲しいということだ。
だめだった奴には俺が缶コーヒーでもおごってやるよ。」
「あっ、今の一言、みんな録音したよね。」
「あ~、だめになりたくないわ~。」
「はは。」
「でも、缶コーヒーおごってもらえたら幸せかも~。」
「おいおい。」
「とにかくみんな、企画書をきちんと仕上げて欲しい、ここまでしか出来ていません、でも出さないよりましだからね。
「は~い。」
「じゃ、高橋、俺からはこれくらいだよ。」
「おう、では、この後は市役所の永田さんからサークル発足式当日に関するお話しです。」


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架空サークル-23 [動植物園再生-03]

市職員、永田の話しは、事務的なもので終わった。
その話しにそってサークル発足式の役割分担が決められた。
式そのものは形式的なものだから、特に大きな問題もなく会議の終わりとなる。
が、永田が再度登壇し話し始めた。

「もうここにいる皆は分かっていると思うけど、このサークルを多くの方々が支えていこうと考えています。
市長を始め、我々市の職員、公園の職員、ガイドボランティア、大学の教授陣、佐々木君が話してくれた通り、単なる大学生のサークルじゃないということを肝に命じて下さい。
服装も態度も、外見なんて関係ないと思う人もいるかもしれませんが、全く知らない人を判断する時、まず外見からとなりませんか。
まだ実績のないサークルに熱い視線が注がれていると思って下さい。
私自身大きな期待というか、どきどきしながら働いています。
変な形で評価を下げることだけは避けて欲しいと思っていますのでよろしくお願いします。」

永田の話しは学生達の心を引き締めるのに充分すぎるものだった。

会議終了後。

「やっぱスーツだよな。」
「う~ん、リクルート用か礼服か…。」
「あ~、自分まだそういったの持ってないです。」
「そっか、西山はもうちょい先だな、でもいずれ必要になってくるからご両親とも相談したらどうだ。」
「そうですね。」
「わ~、めっちゃフォーマルな場なんですよね~、どうしよう。」
「あまり、華美にならないように、学生らしくだな。」
「高校生だったら制服で済ませたのにな。」
「間違ってもコスプレはだめだぞ。」
「入学式の時のにしようかな。」
「はは、小学校のか?」
「え~、馬鹿なこと言わないでよ、市長とかも来るんでしょ。」
「じゃあ、小学校卒業式のでよくね?」
「ちょっと~、さっきからひどい、身長はコンプレックス…、あ~ん佐々木先輩、この人いじめるんです~。」
「はは、永田さんは場にそぐわない恰好をしてくれるなって言いたかったのだと思うよ。
皆もこの為に大きな出費はして欲しくないけど、この先の就職とか考えて欲しいかもな。
でも、それより中身が大切だよ、企画書の提出頼む、俺の方でもフォローするつもりで作業を進めてるけど、皆の企画書が貧弱だと…、そうだな、自分が就職して任された仕事が自分の企画だと考えて欲しいかな。」
「うっ、手が抜けないってことか。」
「真面目に働く気があったらな。」
「もう帰って良いんですよね?」
「ああ。」
「俺、帰って仕上げます、佐々木先輩出来上がったら送ります、問題があったら指摘してもらえますか?」
「もちろん…、だけど同学年だから先輩じゃ…。」
「いえ、先輩と呼ばせて下さい、では失礼します。」
「おいおい、普通にいこうよ…。」

「はは、じゃあ自分は佐々木大先輩って呼ばなきゃ、でも大川先輩のプロジェクトってなんでしたっけ?」
「西山、大川が取り組んでいることはレベルが高いんだ。
分類学的見地からのデータベース構築、基礎を動植物において、細菌とかまで視野に入れつつ、まずは動植物園で展示されているものから整理して…、例えば植物のネームプレート、ほら、この木はネコヤナギとか示しているのが有るだろ。
そのプレートに分類番号とかQRコードとか付けて調べやすく出来ないかって、一般向けと研究者向けとか考えてるし、分類学の究極ってどう思うって真顔で話してくれた、本人も自分の生きている内に完成することはないだろうって言いつつな。」
「えっ。」

絶句したのは西山だけではない。
まあ、佐々木の話しの意味を全員が理解出来た訳ではないが、理解出来た者達は…。

「やべっ、俺自分の取り組み結構、でかいと思ってたけど…。」
「大川先輩って、外見は…。」
「私は古くなったプレートの更新とか提案しょうと…。」
「その彼が仕上げ?」
「そっか、ステップを考えてるんだ。」
「あっ、一歩ずつってことか。」
「負けてられないな。」
「ああ。」
「俺も帰って仕上げよ。」
「私も、へへ、内容はささやかだけどね。」

刺激を受け合いながら成長していく、このサークルの目標の一つは確実に学生たちの心に宿りつつあった。


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架空サークル-24 [動植物園再生-03]

少しずつ人数の減って行く会議室。

「光一せんぱ~い。」
「ああ、夏子、どうした?」
「えっと、私のささやかな企画書です、一応プリントアウトした物とUSBメモリでデータを、えへっ、軽いんですけどね。」
「うん、ささやかでいいんだよ、USBメモリはすぐ返した方がいいかな?」
「いえいえ、何時でもいいです、先輩お忙しそうですし。」
「え~っと、あっ、ちゃんと名前書いてあるんだ。」
「はい、お返し下さる時は色々…お写真とか入れておいていただけたら幸いで~す。」
「はは、考えとくよ。」
「え~、考えとくよは…。」
「そうだったな…、善処するよ。」
「う~ん、なんかな~、ま、いっか。」
「はは。」
「ね、光一せ・ん・ぱ・い、私、思ったんです。」
「うん、何を?」
「桜って綺麗じゃないですか、みんなが浮かれるぐらいに、でも、桜だけが花じゃないって、思いませんか。」
「そうだな。」
「植物園の中でも綺麗な花にばかり皆の目が行くけど、雑草だって植物ですよね。」
「まあそうだな、でもね雑草って名前の植物はないんだよ。」
「あっ、確かにそうです。」
「大川と分類学の話ししてる時に出てきてね、昭和天皇のお言葉でもあるそうだ。」
「へ~、じゃあじゃあ、皆が雑草って呼んでる植物を、もっと知ろうって企画どうですか~、もやもやって考えてたんです。」
「うん、良いね、むしろ俺たちじゃなきゃ出来ない企画かもな、夏子のこと見直したよ。」
「やった~。」

「お~い、お夏、帰るわよ~。」
「あっ、さよりだ、じゃ光一せんぴゅあい、まったね~。」

「う~ん、かわいくはあるが…。」
「どうした、佐々木。」
「ああ中山…、そう言えばお前の企画なんだけどさ。」
「おう、何か問題でも?」
「いや、問題ってことでもないんだけど、空き店舗再生って結構色々なプロジェクトが絡んでく訳じゃないか。」
「そうなんだよな、今後の調整が難しくもある。」
「でさ、中山の立ち位置なんだけど、まとめ役に徹してさ、細かい部分は全部後輩連中に、ま、後輩じゃなくても良いんだけど、一旦仕事全部振り分けてみないか?」
「俺は何するの?」
「まずは振り分ける、その進行を見守り調整する、一つ上の目線ってことかな。」
「う~ん、そっか~、ただちょっと人材的に足りてなくないか?」
「まあ、あせる必要はない、これから入ってくる人にも手伝ってもらうという前提だ。」
「あっ、そう言えば佐々木、スタッフ人事先送りしたな、それも関係してるのか?」
「ああ、プロジェクト全体を考えたら人は足りてない、補助的なメンバーを増やすことはそんなに難しくないかもしれないが、やはりスタッフとなるとね。
で、これから入ってきてくれる人達も、プロジェクトリーダーやメインスタッフになって欲しいと思ってるんだ。
その為には、今の段階で変に形を作り過ぎてしまわないこと、それと新メンバーが気持ちよく参加できる体制を作っておきたいとは思っている。」
「やっぱり、お前はリーダーの器だよ、俺だって高校の生徒会長とかやってきたけど、そこまでの視点は全く持ててなかったよ、新規メンバーを含めての組織固めという方向性か、俺は、プロジェクト内の組織作りに力点を置けばいいんだな。」
「そういうこと、その目標とする組織図とかを含めて…、組織作りという側面からの企画書を作ってみてくれないかな。」
「はは、断れんわな~、締め切りは?」
「もちろん四月末、無理してでも。」
「了解、がんばってみるわ。」

「中山さん、佐々木さんとのお話しは終わりましたか?」
「あっ、ああ。」
「すいません、私も佐々木さんと相談したいことが有りまして…。」
「はいはい自分は帰りますよ、佐々木を独り占めなんてしませんよ。」
「いえ、そんな意味じゃ…。」
「う~ん、中山はもう少し芸風…、考えた方が良いかもだな。」
「おいおい、佐々木までもが言うか?」
「はは。」

「佐々木さん、例のイベントなんですけど、そろそろ日程を決定したいのです、具体的な日程も決まれば、企画書も作り易くなりますし。」
「そうだね、竹内さんたちの希望はどうなの?」
「まずは、早く、とにかく一回やってみたいというのが本音です。」
「最短でやるとしたら何時頃?」
「う~ん、五月末ぐらいでしょうか、正直言って混成なのでレベルはやってみないと分からいって感じですが、ただ一度やってみて、お互いのスキルとか問題点とか把握出来たら、二回目以降はレベルアップしていきますよ。」
「いいね、はは、その…、やってみて、てのが俺達らしいし…、じゃあ、五月末で決めちゃおうか、ま、雨天順延とか…、ちょっと失敗したからリベンジってのも有だからね。
基本的な了解はとってあるから大丈夫だと思うけど、企画書はきちんと出してね。」
「はい、もうほとんど出来てますから大丈夫です。
あっ、この前、佐々木さんが紹介して下さった橋本さん、トークのスキルとかも高くて頼もしいですよ。」
「どう、仲良くやれそう? 混成軍だから、皆が仲良くやってくれることが一番なんだけど、どうかな?」
「大丈夫ですよ、この前はなんか佐々木さんネタで盛り上がっていましたし。」
「えっ、それって…、何?」


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架空サークル-25 [動植物園再生-03]

西山健一と国井さより、会議からの帰り、地下鉄の車中。

「なんか一気に進んでるよな。」
「そうよね、でも、発足式なんて全然考えてなかった。」
「だよな、こんなにお堅いものとは…、にしてもさ、式って簡単そうじゃないか…、でも結構な時間…、もしかして来賓の挨拶めっちゃ長いのか…。」
「色々秘密が有りそうじゃない?」
「だな…。」
「佐々木先輩もほんとに知らないの?」
「みたいだ、あの人嘘のつける人じゃないから。」
「そっか、当日のお楽しみってことか。」
「悪いことではなさそうだよな。」
「うん。」
「さよりの企画書はどうなってる?」
「出してはあるけど、もう一度練り直すつもりよ、健くんは?」
「先輩とも相談してるけど、サークル組織がテーマだから、きちんとしたのは、どうしても発足式以降になりそうだよ、もちろん現時点でのは仕上げた上で再検討してるけど。」
「そう言えば、大学単位の集まりとプロジェクト単位の二重になるのよね。」
「うん、ちょっとだけ複雑になってしまうけど、運営スタッフがしっかりしてくれれば、補助的なメンバーは何人でも受け入れ可能だとは思う。」
「新メンバー、かなりの人数になりそうよね。」
「ああ、さより達が来てくれたおかげでうちもそれなりの人数になりそうだよ、ただ、それだけに組織の体制作りが難しくなる訳だけどね。」
問題はスタッフメンバーをやってくれる人がどれぐらい入ってきてくれるかだな。」
「佐々木先輩は何ておっしゃってるの?」
「推測でしかないが発足式後にスタッフ希望者も増えると思うって。
だから、それを前提として自分なりの組織作りの案をまとめる様に指示されてる。」
「推測か、先輩の推測ならかなり当たってそうな気もするけど。」
「それは感じる、先輩と話してると、そう将棋の何手先までも考えてるみたいな、亀田さんからも代表は佐々木先輩にって話しが諸先輩方にあったそうだからね。」
「そうか…、やっぱお夏じゃ無理が有るのかな…。」
「はは、まあもうしばらく、生ぬるく見ててやれよ。」
「ふふ、そうよね。」


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架空サークル-26 [動植物園再生-03]

企画書の第一回締切が近づいていた。
学生たちは各々のテーマを見直している。

『大川は、自分の生きている内に完成することはないなんて考えているんだよな…。
分類学か…、確かに幅広い分野だと思うけど、う~ん、俺には想像できない世界だ…。
じゃあ俺の企画はどうだろう…。
公園全体を設計するって感覚なんだけど…。
予算とか色々考えると行き詰るんだよな~。
でも佐々木は、短いスパンで考えなくても良いって言ってた。
生きている内に完成することはない…、か…。
あっ、なら…、公園の完成が百年後でも…、いいのか…。
皆で百年後の動植物園の姿を描いてみよう。
あっ、悪くないかも…、そうだ、施設の改修だってとりあえず百年計画にしといて、前倒し出来たらラッキーとか有りじゃないか?
皆で百年後の動植物園の姿を描く、それを実現可能な部分から形にしていく…。
大きな目標に向けての取り組みなら説得力も有るよな。
次世代の連中が次の絵を描いてくれたら面白いだろうし。
皆の動植物園に対する夢を描くプロジェクト、仕上げてみるか。』

『メンバーも賛同してくれたのにな~。
動物たちの幸せ度低すぎないかって。
あんな狭いとこに閉じ込められて生活してたら、私なら発狂してるんじゃない?
動物の展示か…、動物園の役割。
良い案が浮かばないのよね~。
スペースの問題か…。
予算の問題か…。
予算、そんなことは始めから考えるなって佐々木さん言ってたな、発想の広がりに無駄な制約を与えるだけだとか、はは彼って気障よね、イケメンだから許しちゃうけど。
佐々木さん、どんなとこに住んでるんだろ…。
私はワンルーム…、はは動物園のマイナーな子達と同じかな、でも外には出れる。
あの子たちも、もう少し広い所で…。
敷地の問題か…。
待てよ、動物たちの住居もマンション化出来ないのかな?
横に五種類の動物を展示を縦に五階建てにすればどうかしら、彼らが動けるスペースが五倍でしょ。
う~ん、予算の壁が厚いかもだけど、提案するだけならお金はいらないって?
うん、とりあえず敷地の問題だけは解決できる訳だから、企画書出しても恥ずかしくないよね。
まとめてみるかな。』

『微妙なんだよな…、俺のベースは里山がテーマだから…、動植物園とは微妙な距離感があるんだよな…。
佐々木は里山のイメージってここらでは緑地公園と切り離せないんじゃないかって言ってたけど、緑地公園と動植物園って根本的に違う気もするし…。
はは、あいつ野鳥の話しとか結構乗ってくれてたな。
動植物園にこだわるなとも言ってた、でもこのサークルは動植物園がベースじゃないのかって言ったら…。
俺たちがやりたいことを、あんな狭いとこで完結するのかって、笑ってたな…。
共通するところから発想を広げてみたら、とも言われた。
にしても、佐々木って総務として俺たちの企画全部目を通してたみたいだけど…、他の連中もアドバイスもらってたな…。
発想を広げるか…、ほんとは佐々木にはもう答えが出てたのかもな…。
う~ん、あのレベルが同学年とはね、あいつの大学落ちた時はショックだったけど、今にして思えば当たり前のことだった…。
え~っと共通点としては…、動植物か。
待てよ…、里山の保全を植物園の活動を通して訴えて行くという手もあるな。
はは、何で気付かなかったんだ、簡単なこと…? じゃないかもしれないけど。
企画書ぐらいなら、すぐ出来るぞ。
え~とテーマは植物園を通して里山に目を向ける…、ちょっと分かりにくいかな…。』


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架空サークル-27 [動植物園再生-03]

『音楽と動物、面白いテーマだと思うんだけどな。
音楽を人間と同じ様に感じることはないと思うけど、流れていて好きな音楽、嫌いな音楽とかは有りそうな気がするよな。
やっぱ、類人猿対象か?
否、始めから対象を絞るというのはなんだな…。
うん、特に絶滅危惧種なんか対象にして寿命を縮めたらやばいし。
動物って音楽を認識しないのかな。
あっ、犬笛とかあったな…、音楽とはいかなくても音には反応する。
小鳥のさえずりに似た曲をピッコロとかで流したら…。
はは、結果はどうであれ動物と音楽って試してみたいよな。
そんな過程を記録して来場者にも見て貰ったら、また違った関心が湧くんじゃないか。

あっ、条件反射ってどうだ、餌を与える前に、ある曲を聴かせる。
すると、曲を聴かせるだけで動物たちが集まって来るようになる。
うん、条件反射の実験としてなら面白くないかな。
そうだ、音大学生もいるから、普段は録音で、音楽に反応するようになったら生演奏でってどうだろう。
客寄せなら、水族館でやってるアシカショーとかやって良いと思うんだけど、公立の動物園だと色々問題があるらしいからな。
まあ、動物の見せ方として、うん、この辺りを軸にして企画をまとめてみようかな。』

学生達の企画は様々だ、来場者を楽しませることを考えている者、金銭面を検討する者、研究の場として生かそうとしている者、すでに色々な案が出されていたが、この時点で企画書という形まで完成しているものは少なかった。

『動物たちを、より魅力的に見せるための演出ってあまり考えられてなかったと思うんだよな。
だいたい展示のためとは言え、狭い飼育室、しかもむき出しのコンクリート製の檻の中。
鉄格子の中の動物って何か哀れで見たくないんだよな。
だから広めの飼育場、鉄格子越しじゃない状態で見れる動物の方に目が行く…、所詮自然環境じゃないけど。
もう少し彼らの生活環境に配慮できないかな。
う~ん、それには彼らの生態をもっと知る必要があるか…。
一人じゃ無理だな…、でも、サークルメンバーが手分けして…、動物たちのことを調べて、もちろん職員の方々は色々ご存じだろうけど、ちょっと違った視点、あっ、待てよ隠しカメラによる映像ってどうだ。
今でも利用してるみたいだけど、工学部系と協力してもっと充実させれないかな。
確かに生の生き物を見せることが動物園の役割だけど、その生態を知るには映像を見せるということも有りじゃないのかな。
あ~、テーマが増えてしまった。
一回目の締め切りまで…、無理してでもだったよな…、がんばるか。』


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架空サークル-28 [動植物園再生-03]

ゴールデンウイーク、賑わいを見せる公園内にはサークルメンバー達の姿もあった。

「大川先輩、このプレート痛みが激しいです。」
「そうだね、チェックしておこうか。」

園内のネームプレート、動植物の名前を記しているそれを見て回っているのは、分類学の大川と園内の表示改善を目指している者達。
元々彼らに繋がりはなかった。
が、各々が企画書提出後、佐々木からアドバイスを受けた。
関連する企画に関してだ。
複数の企画が立ち上がれば、内容の重複は避けられない。
が、連絡を取り合い意見交換をしていけば、違ったものも見えてくる。
単に、古びたプレートの交換をイメージしていた者たちは、分類学的見地からデータベース作成を目論む大川と出会い、そのデザインを一歩踏み込んで考える様になった。

「ね、統一感はないけど、今までプレートを作ってきた人たちも色々考えてたんだなって思わない?」
「だな、色々な工夫があって面白いね。」
「バラ科カンヒザクラとかありますけど、大川先輩はここに分類上の番号とかQRコードとかって感じですか?」
「まあ、そんな感じだね…、でも君たちさ、バラと桜って同じ科で違和感ない?」
「私は違和感大有りです、全然違うのにって思ってました。」
「もう、桜がバラ科ってことは当たり前のことの様になってるけど、自分は間違ってると思っている。」
「えっ、間違いなんですか?」
「ま、お偉い先生方の研究の成果なんだろうけど、ここまで違う植物群を同じ科にしてしまってはね、まあ『科』というのは大きい分類だから多くしたくなかったのだろう、でもこのことで一般人に分かりにくくなってしまった。
残念なことに広まり過ぎているから、今さら変更出来そうにないけど、研究者のエゴだと思ってる。
簡単に言えばバラ科に色々な植物を入れ過ぎたということだね。」
「え~っと、間違ってるって、言い切れるものなのですか?」
「ああ、数少ない共通点から、無理やり一つの科としてしまったと思わない?
分類学的見地から見直したら動植物図鑑の表記なんて大きく変わってもおかしくないと思うな。」
「じゃあ、先輩のデータベース化って…。」
「基本、現時点で一般的なのを基に構築していくけど、何らかの形でより分かり易いものに出来ないかなとは思っている。
もちろん一人で出来る作業じゃないし、早い段階で他の動植物園でも利用してもらえるレベルにしたいと思っているから、多くの研究者の意見も聴きたい、まあそうなって来ると最終判断を誰が下すのかとか、まあ問題は多いけどね。」
「は~、かっこいい~。」
「はは、地道な作業だよ…、卒業後の生活考えたら…、かなり厳しい現実が待ってるだろう。」
「そっか、経済活動とは無縁なことですよね。」
「うん、でも研究者と名乗れる状況を目指そうとは思っている、皆が種の多様性を知るきっかけとなると思うし。」
「先輩かっこ良すぎです。」
「えっ、俺はださいと言われたことは有っても…。」
「はは、外見は確かにぱっとしないかな。」
「麻美、はっきり言い過ぎよ、先輩をコーディネイトしてさしあげたら?」
「でも、外見なんてさ…。」


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架空サークル-29 [動植物園再生-03]

大川達が園内を回っていた頃、バラ園近くの空き店舗では中山を中心に打ち合わせが行われていた。

「ここの改修作業も来場者の方々に見て頂こうと思うんだ。」
「えっ、中山先輩どういうことなんですか?」
「あっ、俺は企画書見ました。」
「工事と言えば、特にここみたいな公園だったら、極力人に見せない形になると思わないか。」
「そうですね、安全面のことも有るかもしれませんが…。」
「ここでサービス系じゃない人が働いてる姿ってさ、何か微妙じゃない、あ~仕事のこと思い出してしまうって人と、人が働いてる時に遊べる幸せって思う人とかさ。」
「はは、たしかに微妙かも、でも、俺たちはプロでもないし研究の一環だったり実習の一環だったりする訳だからさ、実際にきちんと企画を練って作業を進めているんですって所を、来場者の方々に知っていただくことは大切なことだと思うんだ。」
「そうね、確かに中山君の言う通りね…、ならブログとかの形でも…、記録とか残すべきかも。」
「だけどブログって結構続けるの大変じゃない?」
「新人の中にでも、ライター志望の奴っていないのかな?」
「私たち結構公的な活動だから、私的な物とは価値が違って…、やりたいって人が出て来てもおかしくないと思うわ。」
「文学部系とかに情報流したらどうかしら…、私がやっても良いけどちょっと自信がない…。」
「やっぱウエブ上に格好よく残したいよな、俺たちが考えてること。」
「うん、まずは私たちがここで何をしようとしてるかをパネルにして、来場者の方々に見ていただく。
それと並行してウエブ上にもってことね。」
「俺等の公式サイトはどうなってるのかな?」
「基本的な作業は情報処理系が進めてるみたいだけど、全体の企画の進捗によってデザインの問題とかあるらしい。」
「より閲覧しやすい状態にと考えると、色々難しいでしょうね。」
「ただ卒業制作のつもりで取り組む奴も居るみたいなんだよ。」
「あっ、まともなのプロに頼んだら結構な費用がかかりそう。」
「そこを実習に置き換えられる所が俺たちの強みかもな。」
「そういうことね、ここの改修作業実習はどんな感じになってるの、中山くん。」
「案はほぼ出来上がっている、後は日程調整くらいなんだけど、えっと~、この件は今までサブで動いていてくれた富田に引き継いでもらうつもりなんだ、ちょっと佐々木からあってね。」
「うん。」
「この場に係わる人が多くなりそうなんで、俺はここでの活動のチーフ的立場になろうと思うんだけどどうだろう?」
「自分は聞いてました、組織固めですよね、中山先輩がチーフということに賛成です。」
「そっか、まとめ役は必要ね、反対の人いる?」
「中山くんなら佐々木さんとも近いからいいと思う、自分がやりたいとか反対って人がいなかったら、お願いしたいな。」
「じゃあ、賛成できない人、手を上げてでいいのかな。」
反対の者はいなかった。
「おっけいということで中山くん頼むね。」
「おう、がんばるよ、じゃここの改修作業の流れを説明させてもらうよ、富田は確認してくれな、次回からはこんなことも任せるからさ。」
「了解しました、中山チーフ。」
「はは。」

中山は少し照れた様に笑った。


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架空サークル-30 [動植物園再生-03]

説明を始める中山。

「売店部分の改装に関しては図面も出来上がってるし、外観をイメージできるパースもゴーサインが出たらすぐ公開できる。
外観に関しては始め方向性が掴めなくてちょいと迷走しそうだったけど、例の桐山学長からアドバイスを頂いて、すぐ決まった。」
「はは…、例のね、すごい理解者、うちの先生方も見習って欲しいものだわ。」
「だな、で、材料の手配もすぐ済む状態になってる。
ここまでの活動をすぐにでもパネルやサイトで紹介できる準備もしてある。
後は具体的な日程と、作業に参加する人の調整ってとこかな。」
「結構順調なんですね。」
「ああ、建築デザインの連中は他の施設の改修もイメージして、作品を残せないかって考えているぐらいだからね。」
「実際の作業って大変なんですか?」
「簡単だと思うな、今回は予算のことも有るから小規模改修にしたし、内外装中心の工事になるから、そんなに力仕事もないし。」
「先輩、隣の休憩所はあのままなんですか?」
「あっちは高所作業とかが伴うから簡単じゃないんだ。
デザイン面での案は幾つか出てるけど、学生主体で作業をするのは無理みたい。」
「そうですよね足場とか必要になりそうだし。」
「ま、いずれ綺麗にするという方向性はあるよ。」
「そうすると店のオープンは六月くらいですか?」
「そうだね、夏休みはしっかりとした形で動きたいから何とか六月中にはね…。」
「遅れるようだったら休憩所を利用して模擬店ってどうです?」
「模擬店はちょっとハードルが高いかもしれないが検討をお願いはしてる。」
「難しいんですか?」
「ま、お役所は色々制約が有るから微妙かな。」
「そうなのよ、学園祭っぽくやりたいんだけどね。」
「はは、さよりの色気で通したら。」
「ふふ、市長さん、お・ね・が・い。」
「市長に直でお願いするのか~?」
「やってみようかしら。」
「ちょっと待て、俺たちは真面目なサークルなんだぞ!」
「ふふ、お固いのね…。」
「あのな…。」
「中山、さよりは最終秘密兵器ということでいけるぞ。」
「い、いや…、そういう問題じゃないと思うんだが…。」


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