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胎動-1 [権じいの村-10]

「…、ということは地震復興に関して、緊急度の高いことを市の職員が、急を要しないことを学生さんたちボランティアにお任せするということですね、高柳さん。」
「はい、もちろん要請があればもっとお手伝いさせていただける様にしますが。
いかがでしょうか、現在の状況なら大丈夫だと思うのですが。」
「はい、我々も給料をもらってますからね。」
「花井さん、後、職員の方々の通常業務も、問題のない部分は学生たちの市職員体験の形でフォローしていけたらと思っているのですがどうでしょうか?」
「えっ? 体験ですか?」
「はい、最初は職員の方のお力をお借りすることになってしまうのですが、後はその業務を覚えた学生が次の体験実習の学生に教える形にして、極力職員の方の負担にならない形にしたいと思っています。
まぁ、業務内容にもよりますが。」
「確かに色々な業務が有りますから、手伝っていただけると助かります。
でも…、バイト料とかは…、予算の問題も有りますし。」
「学生たちは、バイトとかではなく、研究と体験を目的として実習に入ります。
例えば地方行政について大学で研究していても、実際の現場なんて全然知らない学生も少なくないんです。
とにかく役所で働くことによって、行政の問題点を考えることが一つの目的です。
役所の職員の生の声を学生たちに話していただけたら幸いです。
そんな話しを元にこの市の行政を見直していくことになります。
もちろん、震災復興で手薄になりかねない部分のフォローが目的でもありますが。」
「分かりました、双方にとってプラスになることなんですね。」
「はい、但し個人情報とかに接することはいけませんから配慮をお願いします。」
「もちろんです…、え~っと職種はどんな感じにしたら良いのでしょう。」
「ごみの回収とかの業務でも構いませんよ、でも、そんな作業に着いた学生には役所内の見学の時間を作ってあげて欲しいです。
それぞれの学生たちは長期間という訳では有りませんから、覚えるのに時間のかかる業務には向かないでしょうね。
後、手続きとかで来た人の待ち時間を利用して面接調査を考えてる学生もいまして。」
「それはいいかもしれません、待ち時間に若い人たちと接することになれば待つイライラも解消されるでしょうし。」
「では、その方向でお願いします、役所側で決定したらプロジェクトの担当職員と打ち合わせをお願いします。
もちろん、問題とかありましたら私の方へお願いします。」
「了解しました…、でもプロジェクトの担当職員というと給料とかはどんな形になってるんです?」
「そうですね、うちの資金源は色々でして…、でも、すべてウエブサイトで公開してますから…、ちょっと実験的な試みでもあるのですけどね。
役所実習担当者の給料は、まず権じいの店から出してもらうことになってます。」
「えっ、うちとはあまり関係がないのでは…。」
「はい、でも権じいの店は大学での野菜販売などボランテアが支えてくれている店です。
そのボランテアたちが私たちの取り組みの成功を期待していることも事実です。
大きな声では言えませんが、権じいの店は結構儲かってましてね。
それなのに店に関わる人たちは私利私欲とは無縁の人たちばかりなんです。
だから、その利益をボランテアセンターの運営資金にという話しをしてたんですけどね。」
「そうですよね、結構な規模で動いているから資金もかなりな額に…。」
「それがですね、寄付を沢山いただいてしまいましてね。」
「そうなんですか。」
「匿名希望の方も多いのですが、それ以外の方はお名前も公表させていただいています。
寄付していただいたお金を何に使ったかもすべて公表しています。
今回、権じいプロジェクトが中心になってボランテイアセンターを運営してますから、その線引きを曖昧にしたくない、特に金銭面では、というのが白川先生のお考えで、もちろん私もそう思っています。」
「うん、公務員レベルなんですね…、っていうか…、それ以上かな…。」
「そうですね、慶次さんや私の収入だって普通に公開してますし、吉田や権じいの店店長の西川さんの収入とかだってコメント付きで紹介してますよ。」
「個人情報でしょ?」
「はい、でも知って欲しいってことなんです、とかく不便と思われている山村で暮らすのに一月いくら必要か、吉田なんてこっちへ来て初めて貯金らしいものが出来たって喜んでましたよ。」
「そっか…、でも吉田の奴にはおごってばかりな気がするな…。」
「はは、そうなんですか、吉田の貯金は花井さんのお陰なのかな。」
「まあ、あいつには色々助けてもらってるから…。」
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胎動-2 [権じいの村-10]

「復興計画もずいぶん出揃った感じですね。」
「ああ、やれることはどんどん実行に移しているけどな。」
「高柳さん、計画でも先を見越したものが結構出ましたね。」
「うん、ボランティアが集まりやすい今、やっておけることはやっておこうという考えに学生たちも乗ってくれたんだよ。」
「そうですね、さっきも学生に聞いたんですけどね、学生たちの休み期間になったらすごいことになりそうですよ。」
「うん、この市の人口が一気に増えそうだな、吉田くんも色々頼むよ。」
「はい、宿泊の調整とか大変そうですけどね。」
「そうだな、でも、そのことだけでもこの地が潤うことに繋がるからね。
遠方の大学からも来てくれるみたいなんだよ。」
「それにしても、俺、今時の学生ってこんなにも真面目だとは思ってもいませんでしたよ。」
「はは、昔に比べれば真面目な学生の率は減ってるかもな、でも、とにかく参加大学が多いからね。
震災前まで慶次さんが各地の大学で講演してきた結果だよ。
何千人かいる一つの大学から十人だけの参加でも、十の大学からの参加となれば百人になる訳だろ。」
「そっか。」
「それとね、やはり私達がやってることは夢プロジェクトなんだよ、ここの復興だけが目的じゃないからね。
社会の景気が悪い今…、そうそう就職内定取り消された学生からも参加の希望が来てるよ。」
「俺がここに来た頃はまだ景気がそれほど悪くもなかったけど…、今はひどいですからね。
移住希望者も増えてきてますよ。」

「とにかくこれからが私たちの正念場だな。」
「ですね。」
「力いっぱいやって、十年二十年先でも、地方再生の成功例と言ってもらえるようにしたいよな。」
「うん、俺もがんばります。」
「じゃあ会議に行くか。」
「はい。」
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胎動-3 [権じいの村-10]

「こんにちは、今日はどういったご用件ですか?」
「健康保険と年金の…。」
「でしたら、こちらへどうぞ。
小栗さん、お願いします。」
「はい、年金の関係ですか…、」

「…、じゃあ頼むわ。」

「待ってる間に、ちょっとお話ししてていいですか?」
「ええよ。」
「私は権じいの村プロジェクトの関係で、今、ここで実習をさせていただいております、井上千恵と申します。」
「そうか、あんたも権じいなんたらの関係か。」
「はい、地震大変でしたよね。」
「ああ、まいったわ、家を直すのに金がかかるしな。」
「被害を受けられたのですか?」
「まぁ、うちは大したことなかった方かもしれんけど…。
何かよくわからんけど若い人たちが、地震のすぐ後から色々働いてくれたな。」
「充分お役に立てたでしょうか?」
「ああ、隣んちのばあさんなんか、後片付けを手伝ってもらったって喜んでいたよ。
そりゃそうだ、生きてるか見に行った時はえらい有様だったのが、次の日にはすっかり片付いていたからな。」
「よかった…。」
「どうした?」
「私たちの活動って…、そうですね、私たちはこの土地ではよそ者でしかありません。」
「ふむ。」
「でも、私も、私の仲間たちも、ここを第二の故郷と思って、この市を良くしたい、活気あふれる土地にしたいと思っています。」
「そんなことテレビでも言ってたな…。」
「いかがです、今は特に困ってることとかありませんか?」
「う~ん、わしは大丈夫じゃが…、知り合いに、怪我をして働けなくなった奴がおってな。」
「それは大変ですね…。
もうボランティアセンターの方で動いているかもしれませんけど、住所か連絡先を教えていただけないでしょうか?」
「そうか、今から電話してみるわ。」
「はい、お願いします。」

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「えっと~、井上さんだったかな。」
「はい、どうでした?」
「なんかしばらくは大丈夫みたいだ、何とかセンターが色々面倒見てくれてるそうだよ。」
「よかった、もれてなかった…。」
「お前さん方は、問題のある人を、もれなく面倒みるつもりなのかい?」
「できれば、そうしたいです。」
「でも、ここは面積も広いし、人もそれなりの人数だけどな。」
「それでも、大地震があって、心細い思いをしてみえる方のことを考えたら…。
ここに来ている学生たちの思いは皆同じです。
それぞれ、滞在期間もやっていることも違いますけど。」
「ずいぶんな人数ってこと?」
「ええ、とにかく宿泊関係が大変で、ふふ、ここの会議室とかも使わせてもらってます。」
「寝心地悪かろうに…。」
「確かに寝心地は悪いでしょうね、でも毎晩、議論で盛り上がっているんですよ。
私はこの近所の方の所に泊めていただいているのですが、夜は会議室組とよく議論してるんです。」
「昼は仕事で夜は勉強ってことか?」
「ふふ、まあそんなとこです。
あっ、手続きの方、済んだみたいですよ。」
「うん、ありがとな…、それと、がんばってな。」
「はい、有難うございます。」

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胎動-4 [権じいの村-10]

「武田、あんまし無理すんなよ、あせらず復興して行こうぜ。」
「はは、大丈夫だよ。」
「でも、どうして、そんなにがんばるんだ?」
「うん、子どもの頃にな、阪神・淡路大震災ってあったじゃないか。」
「ああ、うちも揺れたかな…、でも自分たちが暮らしてたとこでは被害がなかったから…。」
「俺は、親戚がな…、まあ遠い親戚ってことだったらしいけど…。」
「ごめん知らなかったよ。」
「いや、それより聞いて欲しいかも、俺も全然覚えてないその人は地震後の生活中に亡くなったんだ。
親父はちょっとショックだったらしい、まあ遠縁ということもあって特別な援助を考えてもいなかったそうなんだ。
それだけにそのことを悔いていてね。」
「だから…。」
「震災で寂しい思いをする人が少しでも減らせれたら、親父からはどうせ不況なんだから留年したって構わない、出来ることを力いっぱいやってこいって言葉をもらってきてるよ。」
「そうか、武田んちは結構余裕があるんだな…、うちはボランテアやってる余裕なんてないぐらいだけど…。」
「いっそ、ここで働いたらどう?」
「えっ?」
「もともとプロジェクト関連で人手が欲しかったとこへ、今回の地震という感じでここでの求人は少なくないんだぞ。」
「考えてもいなかった。」
「俺はここで就職するかもしれない、小さい会社だけどもう三社から誘いを受けてるよ。」
「そうなんだ…、武田みたいに真面目に働く男なら雇いたいだろうしな。」
「いやいや、居酒屋で知り合った社長たちに誘われてるのさ。」
「えっ…。」
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胎動-5 [権じいの村-10]

「市長、体調の方はどうなんです?」
「はは、慶次、まあ年寄りじゃからあちこち悪いがいたって元気じゃよ。
すまんかったな、お前さん方も忙しいとは解っているんじゃが、呼びつけてしまってな。」
「そんなお気遣いは無用ですよ。」
「ちょっとな、タイミングということを考えておってな。」
「はい。」
「今、震災復興の形ができたとこだろ。」
「はい、復興の大きな道筋は出来てます、まあ細かいところではまだまだ色々動いていますけどね。」
「うん、でな、わしの引退のタイミングなんじゃが、慶次、今っていうのはどうじゃ?」
「う~ん、どうなんでしょう…、市長はもう少し現職にと考えて自分は動いてきたのですけど…。」
「わしが動けんくなってから高柳くんにというよりは、まだ動ける今、震災からの復興で高柳くんの知名度が上がっている今、まあ、わしが震災復興から表向き手を引くことになるから、ちょっと批判を受けるかもしれないが、でもタイミングとしては悪くないと思うんじゃ。」
「でも、まだお元気なのに。」
「高柳くん、前にも話したけど、市長になったら面倒なことも色々出てくるぞ、わしの目の黒い内ならそんなことも手助けできる、わしの後援会から反対する声は一つもなかったぞ。
これは、お前たちの力だ、皆…、はは、わしも含めてな、お前さんたちを担ぎ上げたいって思っているるんじゃよ。」
「う~ん、高柳さん、動きますか?」
「そうですね、震災復興ボランテアセンターの方は、特に、問題もありませんから…、慶次さんのゴーサインで行けますよ。」
「よし、市長、お願いします、俺たち、この地のために精一杯がんばりますから。」
「はは、この地のためにがんばるのは高柳くんだけでいいぞ、慶次はわしらの夢プロジェクトの成功に向けて動いてもらわんとな。」
「はい。」
「よし、そうとなったら隣の部屋に酒とか用意してあるから乾杯といくか。」

「わしらの夢に乾杯。」
「乾杯。」
「乾杯。」

「なあ、桃園の誓いって知ってるか?」
「三国志ですね。」
「あの時の三人の気持ちってこんな感じだったのかな。」
「そうかもしれませんね、自分は末弟ですから張飛ってとこですか。」
「でも年齢は高柳さんの方が上ですから…。」
「次兄はわしだな。」
「えっ? そんな…、市長…。」
「長兄はやはり慶次だよ、年齢は関係なく慶次の夢に乗ったのはわしたちだから、そして…、残り少ないかもしれんがわしの残りの人生で出来る限りのことを…、そうだな、この歳になってお前さんたち若者から夢をもらえるなんて思ってもいなかった。」
「ありがとうございます…。」
「慶次たちと義兄弟の契りが結べたら嬉しいんじゃが。」
「はい、自分も嬉しいです、でも長兄というのは…。」
「はは、弟にこの市の元市長を持つことは、これからの慶次さんの活動にプラスになると思いますよ、私もがんばって次期市長にとなれば色々プラスになると思います。」
「高柳の言う通りじゃ、慶次腹を括れ。」
「はい…。」
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胎動-6 [権じいの村-10]

「真一、市長が決断を下された、来週にも引退を表明される。」
「ということはお体の方が…?」
「いや、そうではない高柳さんのバックアップを元気な内にしっかりやりたいということなんだ。」
「そうですか、早まるのですか…。」
「何か問題があるのか?」
「う~ん、すでに僕たちの動きは…、震災復興の方はどうなんでしょう?」
「高柳さんが言うには、吉田くんに任せても大丈夫って。」
「何にしても選挙対策のプロジェクトを立ち上げないといけませんよね。」
「まあな、でも…、強力な対立候補は出てくるだろうか。」
「確かにそうですけど、やはりよそ者の弱みってないですかね。」
「高柳さんのことをそう見る人はもうずいぶん減っていると思うけどな。」
「そうでしょうけど、市長が決断を下されたのに高柳さんが落選なんてことになったら、絶対嫌ですから。」
「確かにその通りだ…、市長の正式表明までは表立った言動は控えなくてはいけないけど、裏では信頼できる人間中心に会議を開いて行こう。
ちょうど俺も地震の後から大学での講演を中断している所だから、選挙に向けて力一杯動ける。
絶対高柳さんを当選させようぜ。」
「このことは今どれぐらいの人が知っているのですか?」
「まだ、少ないけど…、よし名簿を作って…、真帆、久美ちゃん、吉田くんとかと準備会議を開くか?」
「学生からも何人か呼びますか…、そうだ、タイミング的には選挙の頃は丁度学生たちの春休みになりませんか?」
「そうだな…、でも初動で動けて選挙当日までってメンバーを中心にしたいけど。
初動は我々にとって大きいんだ、対立候補が出た時にさ、準備期間でずいぶん差をつけられるだろ。」
「そうですね…学園の先生にも声をかけてみましょうか、早めに今までの学校を退職されて開校に向けての作業をのんびりやっておられる方もみえましてね。」
「そういった人選を、今夜やろう、まずは主要メンバーだけでさ。
小春ばあちゃんちでいいよな。」
「解りました、久美と吉田さんには僕が伝えておきます。」
「うん、高柳さんと真帆には俺から連絡を入れておくよ。
そうだ、真一も今持ってる仕事、他へ任せられたら任せていく方向にできないかな、どうしても自分でやりたいこと以外はさ。」
「心得ていますよ、僕も久美もメインの仕事は慶次さんの秘書って感覚でいますから。」
「すまないな。」
「今更、何を言ってるんです、俺たちの慶次さん。」
「はは、あんましプレッシャーをかけるなよ。」
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胎動-7 [権じいの村-10]

「市長も、ついに決断されたな…、加藤はどう思ってるんだ?」
「まあ、今期も、出ないつもりだったところを無理に出てもらったから任期途中でも全然問題ないと思うけどな。」
「だよな、あそこで市長が出馬してくれなかったら、怪しげな奴が無投票当選ってことになりかねなかった。」
「しかも今回は後継者をきちんと指名しての引退だから。」
「おい、まだ正式発表前だからあんまし大きな声で話すなよ。」
「ああ山田、そうだったな、なあ、お前はあの高柳という人物どう思う?」
「うん…、直接会った回数は少ないから何とも言えないけど…、俺は一票入れるつもりだ。」
「そうか…、なかなかの人物らしいけど、ここの出身ということでもないから…。」
「でもな、あの権じいの村プロジェクトの関連でこの市内を本当にくまなく回ってたそうなんだ。
だから地震の時でも迅速的確な判断が下せたし、そんな人だからセンターのリーダーを任せられたってことだぞ。」
「自分の名声を上げたいとかじゃなかったのか?」
「まさか、彼の下で活動していた学生たちと話しをしていても、よく、尊敬という言葉が出てきたぞ。」
「そうか…、う~ん、だったら俺たちも担ぐか?」
「うん。」
「対立候補はどうなんだろう?」
「大した奴は出ない気もするけどな。」
「確かにそうだ、でもさ、どうせなら市民運動みたいな感じで応援したくないか。」
「何だ、お前結構その気だったのかよ。」
「そうだな、選挙だけじゃなくてさ、市長が、自分たちの町を自分たちの手でって言ってたろ。」
「ああ。」
「なのにさ、ここんところ大学生たちが中心になって熱心にこの市のことを考えてくれているじゃないか。」
「その通りだな…、今の市長を初めて当選させた時みたいに…、俺たちも動くか?」
「うん、正式発表の前だってやっておけることは色々あると思うぞ。」
「だな。」
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胎動-8 [権じいの村-10]

「時間になりましたので会議を始めます。
私は現市長後援会の加藤と申します、今日は市長から命を受けまして座長をさせていただきます。
よろしくお願いします。
まず、今日集まって下さった方々は、昨日辞任表明をされた現市長の後継に高柳氏を推すという方ばかりと考えてよろしいでしょうか…。」
ぱちぱちぱち…。
「有難うございます、ではまず、我らが候補、高柳さんから一言お願いします。」

「はい、皆さん今日はお忙しい中有難うございます、高柳裕也です。
現市長はじめ色々な方の後押しが有りまして市長選への出馬を決断しました、よろしくお願いします。」
ぱちぱちぱち…。
「ですが、私自身に政治の経験は有りません。
まず、はっきりお話ししておきたいことは、私一人では市政を正しい形で発展させていくことはできないということです。
皆さんのお力が必要だということです。

例えば、昔は道が悪くなれば村人たちが自分たちの手で直していました。
今は行政のシステムが変わり、税金によって直されています。
しかし市の財政には限りが有ります。
この市の財政状況を大学の先生方と見直したところ、余裕は全くありませんでした。
道はものの例えですが、実際この地をもっと活気あるものにしていこうと考えると、皆さんのお力をお借りするしかないのです。
もちろん、学生達もここを第二の故郷として今後も継続的に支援してくれると思っています。
ただ、次のステップに向けて、震災復興に目処が立ったら学生達は…、そうですね第三の故郷を求めて、まぁ活動の場を広げていくという方向性にあります。
都市からの移住者、この地で就職を決めた学生たちと人口は増えていくでしょうが、やはり、この地で生まれ育った方々の力なくしてはこの地の活性化は有り得ません。
もっとも、そんなことはここに集まって下さってる方々には今更な話しかもしれませんが。

私が立候補を決意できたのは、権じいの村プロジェクトの存在です。
この市で何か問題が起きたら、色々な大学の関係者が力を貸してくれます。
大学の力で過疎の村を再生できるかという取り組みがどんどん発展して、今、この市をもっと良くしようという動きになってきています。
すでに色々な実験的取り組みを行っていますが、これは今後も続きます。
ただし…、この地での選挙権がある人はわずかですけどね。」
「ははは。」

「私は地震からの復興活動を通して、様々な方達とお話しをさせていただきました。
その中で私たちの活動に対する励ましの言葉も沢山いただきました。
今日来て下さっている団体の方々とも共に働いてきました。
そして現市長からの後押しの言葉をいただきまして…。
私はここの出身ではありません、ですがこの地がとても好きです。
自分が市長となって、この市のために働けたら、いや働きたいと思ったのです。
皆さん、私をこの市の市長にして下さい、お願いします。」
ぱちぱちぱち…。
「公約など、詳しくは書面で、簡単な物と詳しい物と二種類用意しましたので一読願えれば幸いです。
私たちのスローガンは、手を差し伸べる、にしたいと思っています。
今の私は権じい村プロジェクトから手を差し伸べられ、助けられてあります。
また、震災復興を通してボランティアたちが手を差し伸べる姿には感動さえおぼえました。
力のある者、余裕のある者が弱者に手を差し伸べるそんな社会にしたいと思うのです。
自分さえ良ければいいという考えからの脱却です、よろしくお願いします。」
ぱちぱちぱち…。

「高柳さん有難うございました、では続いてここに集まっている団体の紹介を…。
選挙に向けての動きを計画済みの団体の代表はそれも話して下さい。
まあ時間の関係もありますから簡略にお願いします。
ではまず、秋桜の会からお願いします。」
「はい、私たちは…。」
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胎動-9 [権じいの村-10]

「無所属で立候補じゃないんですか?」
「まあ、強力な対立候補が立つなら、その方が無難なんだけど。」
「高柳さん、なんか余裕ですね。」
「はは、結構どきどきしてるよ、だけどここで我らが新政治団体、宇宙のことが宣伝できたら、それに越したことはないだろ、真一くん。」
「所属と言っても、所謂政党ではないんですよね。」
「うん、政党としての条件を満たしていないからな、まあ、肩書きには権じいの村村民とかも付けるつもりだけどね。」
「現時点での立候補予定者には勝てると思ってるから、肩書きなんてどうでもいいんだけどね。」
「強気ですね。」
「ニュース番組の影響力は大きいと思うんだ、現時点で私たち以外の動きが報じられることはないからね。」
「市内の主だった団体は我々についてくれたから…、でもあまり簡単すぎるのも拍子抜けしそうで…、次のことを考えるともっと盛り上げたいところですけど。」
「そっちの方は学生たちが企画してる祭りで充分じゃないのかな。」
「地震復興の一区切りと高柳さんの当選祝い。」
「そんな企画、落選したらと思うと胃が痛くなるけどな。」
「はは、確かにそうですよね…、そうそう明日は奥さんも?」
「ああ、あいつの方がびびってるよ、市長候補の妻なんて自分でいいのかって。」
「そうなんですか、でも良かったですね、経済的な理由で離れて暮らしてみえたのが…、奥さん、田舎暮らしは大丈夫なんですか?」
「田舎と言っても市長となれば下で暮らすことになるし…、あいつ権現村のこと気に入ってたんだけどね。」
「ちょっと安心しました、それなら明日の告示を待つだけですね。」
「そうだな、でも本当に大変なのはこれからだから…。」
「大丈夫ですって、みんなで支えますから。」
「頼むよ…、そうそう慶次さんから聞いたけど、真一くんと久美ちゃんはプロジェクトから離れるんだって?」
「今までやってたことは全部色々な人に引き継いでもらって、今後は慶次さんの秘書に専念することになります、ですからから全くプロジェクトから離れる訳ではありません。
あっ、高柳さんの秘書は?」
「う~ん、そうだな、必要になるのかどうか…、市長になれたら市の職員と相談かな?」
「さすがに極秘情報も多くなるでしょうから、学生の体験とはいかないでしょうからね。」
「はは、でも極力、公開できない情報の少ない市政をして行きたいと思っているけど。」
「そうか、そうしてれば不正もできないか…。」
「だろ、今は真面目に真剣に市政を考えていても…、今までの人たちのことを考えたら。」
「高柳さんなら大丈夫だと思っていますけど。」
「はは、当たり前だよ、でね真一くん、ちょっと儲かる話しがあってね、ここだけの話し。」
「ははは。」
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胎動-10 [権じいの村-10]

「おう雄介じゃないか、どこへ行くんだ?」
「おっ、恭二、久しぶりだな、今から投票にいくとこさ。」
「あっ、市長選か、でもさ、もう決まったようなんじゃないのか?」
「高柳氏にだろ、でもな、それでも俺は応援するって意思を現したいんだ。
投票率低くて当選するのとは違うとは思わないか?」
「う~ん、そういう考えもあったか…。」
「俺はな高柳氏の政治団体、宇宙にも入ったんだ、いや高柳氏のというのは正確じゃないけどな。」
「何なんだ、それ。」
「俺的には政治をあきらめるなってことかな。」
「えっ?」
「俺さ、今の政治にうんざりしてたんだ、っていうかあきらめていた。」
「うん。」
「国会議員、大臣? 何やってんだ、て感じでさ、でも俺には何もできないじゃないか。」
「そうだよな、ここで批判してたって何も動かない変わらない…。」
「でも、本当に変えられないのかって問いかけがあった、白川先生からね。」
「白川先生って…、あっ、権じいの村プロジェクトのリーダーか?」
「ああ、先生がね、かなりの裏技を使いましたが過疎の村をずいぶん賑やかにすることができました。
そして、高柳さんを中心としてこの市もより魅力あふれる市となって行くでしょう、なんて話をされてね。」
「うん。」
「でね、白川先生はこの国を変えるつもりなんだ、俺はそのお考えに乗ることにした。」
「国を変える? そんなこと無理だろ。」
「無理かもしれない、けど…、白川先生は、このままではこの国は老いた国になってしまう、でも俺たち挑戦者の姿が国民の励ましにならないだろうか、失敗するかもしれない、でも我々の気持ちを国民に伝えたいってさ。」
「う~ん…、ちょっと怪しげな気もするけどな…。」
「はは、白川先生のバックにどれだけの大学関係者がいるか知らないのか?」
「結構いるのか?」
「権じいの村プロジェクトなんて簡単にできることじゃないんだぞ…。
確かにお前の言う通り怪しげかもしれないけど、プロジェクト関係者と話してると、皆から、白川先生や高柳さんに対して尊敬という言葉が出てくるからな。
昨日出会ったおじさんからもね。」
「でも夢のような話しだな。」
「ああ、だから夢プロジェクトさ。」
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