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猫田小夜-30 [化け猫亭-03]

「ねえ、小夜ちゃん、この前、早山課長や小森と来た時にさ、君のひいお爺さんが唯物主義の人だとか言ってたよね。」
「ええ。」
「お墓も無いの?」
「いえ、先祖代々の墓地が有ります、曽祖父は無くす事も考えたそうですが、墓地、埋葬等に関する法律や遺骨遺棄罪、刑法190条なども考慮したそうです。」
「じゃあ普通にお墓参りはしているんだね。」
「お墓参りと言う感覚では有りませんが、年に一度親族が集まって野外パーティーを開いています。」
「えっ、そんなに広いお墓なの?」
「曽祖父が所有していた土地にお墓を移し、小さなメモリアルパークとして花好きの伯母が管理しています、親族全員が唯物主義者という訳では無いのですよ。
子どもの頃はそこにテントを張って泊まったりもしていました。
先祖に対する感謝の気持ちは、そんな時に育まれたと思っています。」
「そうなんだ、でも、お墓の敷地でキャンプなんて怖く無かったの?」
「怖い? 幽霊とかの話ですか? 毎回会える事を楽しみにしていたのですが、結局、幽霊には会えませんでした。
平田さんは幽霊に会った事、有ります?」
「い、いや、でもそんなとこで…、暗かったら怖いじゃないか。」
「ですよね、油断してると躓いたりして危険です。」
「そういう問題か…。」
「それで、お墓について何か有ったのですか?」
「ああ、年老いた祖母が俺達に迷惑を掛けたくないから墓仕舞いをと言い始めてね、死後は樹木葬が良いとも。」
「素敵なお婆様ですね。」
「でも、それで良いのか良く分からなくてさ。」
「平田さんには信仰心なんて一欠片も無いのでしょ?」
「そ、それは言い過ぎだよ、欠片ぐらいは有る。」
「大体人間ほど無駄に扱われている死体はないですよね。」
「えっ?」
「豚や牛の死体は平田さんの贅肉になるし、自然界で亡くなった生物は全て自然の摂理に従って、次の命の為に、餌となったりバクテリアに分解されて養分となったり、でも人間の死体は無駄に燃料を使って灰に、全然役に立ってないですよね。」
「う~ん、そう言われてしまうと…。」
「お墓なんて考え方一つですよ、エジプトのピラミッドだって古墳だって、どんなに立派なものを作っても、そこに埋葬されてる人は、自分がそこに埋葬されている事を確認出来る訳では無いのです。
権力の象徴として次世代に利用されただけではないですか。
そうですね、猫田家が選択したのは、平田さんのお婆様が考えておられる、樹木葬と言えるのかも知れません。」
「そうか…。」
「お墓でなくとも、一枚の写真でも、そこから生と死を考え先祖を偲ぶ事が出来れば良いのでは有りませんか、今は形に拘らない人が増えています。
平田さんが、お婆様との想い出を忘れる事がない様な形を考えれば良いのですよ。」
「そうだな…、有難う、考え直してみるよ、やっぱ相談事は小夜ちゃんだな。」
「こらこら、三十過ぎのおっさんが二十歳の女の子に頼ってちゃだめでしょ。」
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